教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/15 サイエンスZERO「探検!国立天文台#1 天体観測の最前線潜入SP」

 2週連続で国立天文台について紹介する。国立天文台は多くの望遠鏡等を有し、それらを運営するだけでなく製造まで行っているとのことで、このような施設は非常に珍しいという。

 

すばる望遠鏡での全天観測プロジェクト

 まず紹介するのはすばる望遠鏡。感度の高さと視野の広さが最大の特徴だが、現在はこれを使用して膨大な宇宙をパノラマ写真のように撮影しようというプロジェクトが実行中とのこと。ハワイの望遠鏡をここからリモート操作しており、番組ではコジルリが実際に写真を撮影するということまで行っている。

 撮影された写真には多数の銀河が写っているが、1枚の写真でも30万の銀河が写っているという。今までこの望遠鏡で5億個以上の銀河を見つけているとのこと。この中には重力レンズ銀河と言い、重力によって光が曲がることによって、背後に存在する銀河が見えているという例がある。しかもこれが3つ並んでいるのが写っていたとのこと。

 なおすばる望遠鏡の感度は130億光年ぐらいの銀河まで見えるとされており、宇宙の年齢が138億年とされているので、すばる望遠鏡は宇宙の歴史の大半そのものを捕らえることが出来ているのだという。なお国立天文台ではこうして撮影した銀河を分類する作業を民間人も交えて実施中とのこと(つまりは数が膨大なので人海戦術で行おうということである)。しかしこれって、AIを使えば結構簡単にできそうな気も・・・。

 なお現在、すばるを越える望遠鏡としてTMTの開発が始まっている。5カ国協力で建設する次世代超大型望遠鏡で鏡の直径は30メートルとのこと。492枚の鏡を組み合わせるという。この望遠鏡の部品作りが既に国立天文台の中で行われているという。このような作業も行われるのが国立天文台の特徴であり強みでもある。

 

太陽観測によってコロナの謎を解明する

 国立天文台では太陽観測にも力を入れており、太陽フレア望遠鏡では毎日太陽の観測を行っている。太陽からの光を様々な波長にわけて観測しているのだという。Hαという赤色のごく一部の波長を観測すると太陽表面のフレアの様子などが観測できるという。激しいフレアが発生すると通信衛星などに影響を及ぼすことがあるので、その観測を行っているという。

 太陽を観測するために打ち上げられた衛星がひので。この衛星を使うとフレアを鮮明に観測することが出来る。この映像にコジルリが大興奮しているが、正直なところ私も「こんなに見えるの!?」と驚く映像である。地上の望遠鏡で太陽全体を見て、そこから選んだスポットをひのでで観測するという形で観測されているらしい。また太陽コロナの謎を解くのに磁場の構造を測定する必要があるが、衛星では領域が狭すぎ、地上の望遠鏡ではオゾン層に吸収されて見えないことから、気球で観測装置を上げて観測をしようという試みが実行中とのこと。なおこの観測装置のための鏡の精度はナノメートルレベル(東京-京都の距離に対して10円玉1個分ぐらいとのこと)必要とのこと。2022年6月にこの気球を飛ばす予定らしい。


 天文台と言うから観測だけしているんだと思っていたが、装置の開発をしている部署まであったとは私も知らなかった。それにしても100億光年とかの想像の及ばない距離から、ナノメートルというこれまた想像が及ばない単位(大体原子1つが0.1ナノメートルのオーダーである)まで扱うのだからとんでもないところである。しかも日常の作業は非常に緻密かつ地味なもので、その中で大発見の芽を見逃したらいけないのだから大変な仕事でもある。何となく私なら漫然と日常作業を繰り返す中で絶対見落としそうな気が・・・。こういう血道なことを出来るのもやはり一種の才能であると思う。

 

忙しい方のための今回の要点

・国立天文台では各種望遠鏡による観測だけでなく、機器の制作も行っている。
・すばる望遠鏡では現在、宇宙全体のパノラマ写真を撮影するというプロジェクトを実行中。既に5億個以上の銀河を発見しており、これらの銀河を分類するために一般人も含めてのプロジェクト実行中とのこと。
・国立天文台では太陽観測に伝統的に力を入れており、現在でも地上の太陽フレア望遠鏡と、観測衛星のひのでを使って太陽表面のフレアについての観測を行っている。
・またコロナが超高温である謎を解くために磁場の観測を目指しているが、そのための気球に搭載する測定装置の開発も行っている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ研究の世界はどこでも「匠」の世界が存在するものですが、ここは特にももろにそういう存在がいそですね。鏡研磨の匠とか。

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