教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

11/25 NHK 歴史秘話ヒストリア「日本誕生 知られざる物語 日本書紀1300年」

日本書紀の神話を検証する

 飛鳥時代から奈良時代にかけて国家プロジェクトとして編纂された歴史書である日本書紀。日本の成り立ちを記した書であるが、神話満載のトンデモ本でもある。しかし最近になってこの日本書紀が注目されているという。

 まず日本神話のスターの一人スサノオだが、出雲の須佐神社にはヤマタノオロチの骨とされるものが伝わっている。またスサノオは木の神であり、体毛から木々を作り出したと日本書紀に記されているという。

 

出雲大社の大発見で国譲り神話が現実味を帯びてきた

 そしてスサノオの国づくりを引き継いだのが出雲大社に祀られているオオクニヌシである。そしてオオクニヌシは豊かな国を作り上げる。出雲の国を見た高天原のアマテラスは出雲を譲るように使者を送る。オオクニヌシはそれを受け入れる。これが国譲りの伝説である。その国譲りの話し合いがなされたとされる場所は、今でも出雲に残っているという。

 国を譲ったオオクニヌシはその代わりに高層建築の神殿を建築してもらったと日本書紀にはある。しかしこの建物は非現実的だと考えられていた。しかし2000年の発掘で出雲大社から巨大な柱跡が発見される。高さ48メートルの神殿から長さ100メートルの階段が伸びる巨大な神殿がここにあった可能性が高まってきた。

 また出雲からは大陸渡来とされる物品が出土しているが、海流に乗ると朝鮮半島から出雲にたどり着くのは容易で、しかも当時の出雲周辺には巨大な内海が広がっていたことから出雲は交易都市であったと考えられるという。また古墳の形態が3世紀ごろに出雲形式から大和形式の前方後円墳に代わっていることが分かっており、国譲りとは出雲政権が大和政権に制圧されたことを意味すると考えられる。

 

中央主権国家に不可欠だった歴史書編纂

 かつての日本は諸豪族が割拠する不安定な国家だったが、大化の改新後に唐を参考にして天皇を中心とした中央集権国家を築こうとする。当時の中央集権国家に不可欠だったのが政権の正統性を示す歴史書なのだが、それは日本にはなかった。藤原不比等は渡来人に教育を受けたエリートであり、大宝律令を制定する。さらに長安をモデルに平城京を完成する。そして残りの人生を歴史書制作にかけることにする。

 しかし中国語で歴史書を編纂できる人材がいないという問題が発生する。かつては中国人が行っていたが、彼が引退してしまうと人材がいなくなったのだという。やむなく不比等は日本人に編纂をさせたようだが、中国語としてみると間違いがかなり多いという。そして日本書紀を編纂して間もなく不比等はこの世を去る。


 何やら番組では「日本書紀の記載の真実性を示す証拠が続々と」というようなニュアンスで紹介していたが、番組を見ているとそれは出雲神社の大発見ぐらいだったような気が・・・。もっとも一応正式な歴史書である日本書紀の方の記載はまだましな方で、これが古事記となったら神話や伝説盛りだくさんのトンデモ本だから・・・。歴史の記録の古さについては日本は紀元前から歴史書を製作していた中国とは勝負にもならず、いかにも付焼刃的な印象を受けずにはいられない。

 

忙しい方のための今回の要点

・日本書紀に記載されているオオクニヌシの国譲りの神話は、出雲が大和政権の支配下にはいったことを意味すると考えられる。
・国譲りを行ったオオクニヌシは代わりに高層神殿を建ててもらったと日本書紀にあるのだが、出雲大社から2000年に巨大な柱跡が発掘されたことから、実際にそこに高層神殿があった可能性が高いことが分かってきた。
・日本書紀は日本が天皇中心の中央集権国家を築く過程で、藤原不比等が唐を参考にして中央集権国家に不可欠なものとして法、都、歴史書をそろえるために編纂させたものである。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ神話もある程度は事実を反映していると思いますよ。私はスサノオのヤマタノオロチ退治は、この地に勢力を張っていた地方豪族の討伐だろうと思ってます。魔物の討伐の類は大抵は中央権力による地方勢力の征服と解釈していたら間違いない。

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