教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

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12/1 テレ東系 ガイアの夜明け「"木造"が大変貌!~地震・火事に強く安い家とは?~」

燃えない木の開発

 木造建築が今見直されつつある。木造と言えば泣き所は地震に弱い、火事に弱いだったのだが、そのような常識を覆す新技術が登場しつつある。

 まずは「燃えない木材」。ニッコーの塩田政利社長が開発したのは燃えない木材。家の模型を二つ用意して、片方には燃えない処理をして両方にガソリンをかけて火を付けたところ、どちらの家も黒焦げに。しかし処理をした方は間もなく火が消えたのに対し、処理をしていない方は燃え続けてついには焼け落ちてしまった。しかも黒焦げに見えた木も、表面をやすりで磨いてみたら中からは無傷の木肌が出てくる。焦げたのではなくてすすがついただけなのである。

 塩田氏は長年コンクリートを研究していたのだが、70を越えてから木材の研究に転じたのだという。燃えない秘密は水ガラス。木材を80度の湯に4時間漬けてから、水ガラスに4時間つけ込むのだという。お湯の中で空気や水を抜いてからから、そこにガラス成分を漬け込むのだという。こうすると木の手触り、通気性や匂いなどは変わらないまま、燃えにくくて腐りにくい材に変化するのだという。

 塩田氏は今また新たな研究を行っている。それは既に建っている家に塗るだけで燃えにくくする塗料の開発だという。塩田氏によると日本の2/3は山林であり、その木を生かせばコンクリートはほとんど使わなくて良くなるという。木は人類に合う素材だという。

 

間伐材を有効活用するCLT

 岡山県真庭市に業界の常識を変える木材を製造している会社がある。それが銘建工業。ここが製造しているのは間伐材から切り出した細い板を90度方向に重ね合わせて貼り合わせることで強度を上げるCLT(直交集成板)と呼ばれる板である。コンクリートの1/4の重さで耐震性が高い特徴がある。2016年に実用化されたという。

 画期的な材料で、各地で使用されているのだが、残念ながら巨大な工場の稼働率はまだ1/3に過ぎないという。間伐材を有効活用することによって日本の荒廃する森林を救う鍵になるかも知れない技術なのだが、ネックとなっているのはコスト。

 ライフデザイン・カバヤと銘建工業がタッグを組んでCLT住宅の市場開拓を狙っている。しかし会議ではどうしてもコストのことが課題として浮かび上がる。CLTの坪単価は約80万円で、普通の木造の50万円、鉄骨の60万円、コンクリートの70万円よりも高い。これが普及を阻んでいる。

 岡山に本社のあるライフデザイン・カバヤは実はお菓子のカバヤと同じグループ会社。2014年にCLTに目をつけて耐震試験などの大がかりな試験に投資してきたという。そして満を持してCLT住宅に乗り込んできたのである。金物と組み合わせた強固なつくりで、従来の木造建築にはなかった大きな開口部なども作ることが出来る。設計士なども単価が下がれば使いたいとの声はあるのだが。

 

コスト低減のための挑戦

 そこで板の厚さを3センチ薄くしてコストを下げることを考える。しかしあるテストを通過する必要がある。それは上から50トンの荷重をかけて800度で焼いて60分持ちこたえる必要がある。しかし残念ながら56分で限界が来てテストは中止。目標をクリアすることは出来なかった。カバヤでは対策を協議、材質を変えるとか塗料を塗るなどのアイディアが次々と出てくる(塩田氏が開発した塗料を塗れば一発解決の気がするのだが・・・)。

 国内では大手建設会社が木材で巨大ビルを建てる計画を立てている。これらはCLTを使用することが前提となっている。

 カバヤでは接続の金具をコストダウンすることを考えていた。そのために現在の金具の耐久試験を実施するが、1つの金物で16トンまで支えることが分かった。住宅の重量は20トンほどでこれを50個使用するので性能は十分。コストダウンの余地がありそうである。

 カバヤではCLTのフランチャイズを増やすべく説明会を開催したのだが、残念ながらコロナの影響でドタキャンが相次ぎ、やって来たの千葉の工務店の一人だけという低調さ。しかし彼はCLTに興味津々で前向きに考えたいとのこと。国が木造にシフトしているのでCLTに取り組みたいとのことである。

 そして11月にCLTのモデルハウスが完成。評判は上々。日本の森を守るために頑張っている。


 日本の山林の荒廃ぶりは私も散々目の当たりにしているので、この事業は是非とも軌道に乗ってもらいたいと考えるところ。上手く行けば、日本の荒廃する山林を救うと共に、熱帯雨林の大量伐採も防ぐことが出来るので両得である。とにかく戦後に目の前のコスト優先で突っ走った結果、日本中をとんでもない状態にしてしまったのだから、それはそろそろ根本的に見直すべき時が来ている。

 

忙しい方のための今回の要点

・最近になって新技術の登場で木造が見直されつつある。
・木造と言えば、地震に弱い、火事に弱いというのが弱点であったが、ニッコーの塩田政利社長は水ガラスを含浸させることで燃えない木材を開発した。現在は塗るだけで不燃化する塗料を研究中とのこと。
・また間伐材などの細い板を90度に重ねて貼り合わせることによるCLTという材が注目されている。CLTを製造する銘建工業ではライフデザイン・カバヤと提携して、CLTの市場開拓を狙っている。
・ライフデザイン・カバヤは2014年からCLTに注目して耐震テストなどに投資してきたが、今回満を持してCLT住宅に乗り出すこととなった。ただしCLTは坪単価が高いことがネックであり、どうやってコスト低減するかが鍵となっている。
・コスト低減のために板を薄くすることを試みたが、残念ながら耐火テストをパスできず、取り付け金具のコスト低減を試みることとなった。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・間伐材の有効活用、国内の山林の活性化というのは今や全国的課題です。放置された人工林は細い木が林立して保水力がないために、少し雨が降ると各地で土砂崩れを起こしています。私も実際に日本の各地を回ってそういう山林を目の当たりにしてきているので、この問題の切実さは身に染みています。是非ともこの事業は軌道に乗ってもらいたいものです。とにかく今の日本に必要なのは、農林水産業を産業として成立させること。国内林業は既に壊滅しているし、農業もビジネスとしては成立せずに高齢者の半分趣味のような状態で細々と続けられている状態では日本自体の未来がありません。これらの業界を若者が職業として普通に選択できる状態にする必要があるというのが、以前からの私の考えです。これこそが私が考える日本再生論。

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