教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/13 サイエンスZERO「"害獣"イノシシ研究最前線 科学の力で共生の道を」

近年急増しているイノシシの生態について

 近年被害が増加しているのが野生のイノシシ。都会にまで出没して騒動を起こしたり、怪我人を出すこともある。特に深刻なのは農家の被害で年間50億円にも昇るという。しかしイノシシの生態にはまだ不明なところも多く、なかなか有効な対策が打てないでいる状態だという。そのようなイノシシ研究の最前線を紹介。

 イノシシと言えばとにかく足が速いのイメージがあるが、それだけでなくて実は小回りが利いてジャンプ力もあり、海も泳げるなど運動能力が高い。しかも知能も結構高いのだという。

 森の中で暮らすイノシシはぬた場と呼ばれる場所で泥を浴びて寄生虫を落とすという。そこで番組ではカメラを設置して定点観測。イノシシがようやく現れたのは1ヶ月後、イノシシは臆病な動物なのでカメラを警戒していたらしい。竹林にセットしたカメラにはイノシシが匂いで地中のタケノコを見つけて掘り出す姿が映っていた。また子だくさんのイノシシは1度に5頭も子供を産むという。ただし生まれてすぐに半数ぐらいは死ぬという(捕食されやすい)。近年、イノシシは急速に数を増やしているという。イノシシの子供の生存率が上がっているのが原因だと考えられるという。

 

巨大化しているイノシシ

 カメラをセットしての定点観測による生息数調査の結果、通常なら1平方キロに10頭もいれば高密度なのだが、兵庫県の南部には30頭も棲息する地域があることが分かったとか。また高栄養な食料を食べ続けたことで巨大化した若いイノシシなども増えているという。親だと思って捕まえたイノシシが子供だったため、繁殖数の抑制になっていないのだという。実に捕獲数の7割が子供だったという。そのために歯をチェックして年齢を判別するということを勧めている。

 また都会で餌付けする者もいたりするのも問題だという。イノシシにとってカロリーの高すぎる餌を与えているし、イノシシが動かなくなるのでイノシシ自体の健康にも良くないのだという。

 

イノシシの生態に基づいた対策

 イノシシの生態を考えた対策を打っている人たちもいる。まずは電気柵。ここでポイントは高さだという。イノシシの鼻を電線が直撃するようにすれば、有効に電気が流れるのでイノシシ除けに効果を上げるという。また周辺の草を刈るのも有効とのこと。これは警戒心の強いイノシシは草むらに隠れて畑に接近するからだという。このような対策で農作物の被害を防いでいる。

 森の中でのイノシシの役割だが、イノシシが作るぬた場は他の生き物にとっても水場やえさ場になっているのだという。イノシシがいないとこういう場は出来ないので森の生態に影響が生じることが懸念されるという。

 

 

 イノシシの食害が問題になっているというのは耳にはしてましたが、農家にとってはかなり深刻なようです。また食害はイノシシだけでなく鹿も問題になっているとか。そもそも里山が荒れて山の動物たちが人間の生息域に降りてくるようになったことや、猟師が職業として成立しないので狩る人間が減ったということも原因に挙げられています。

 というわけで、私は以前から「日本人よもっと鹿やイノシシを食え!」ということを言い続けています。害獣として駆除されて捨てられるだけだと彼らも成仏できないし、そもそも肉が商品として流通するようになれば仕事として猟をする人が増えることも期待できます。

     
何とAmazonでもイノシシ肉の販売はあります

 どうもこういうジビエ系をゲテモノと同レベルで考えている人もいるようですが、鹿肉は低脂肪高タンパクで実にヘルシーですし、イノシシは定番のぼたん鍋を始めとして様々な料理に結構使えます。というわけで野生動物を食って個体数をコントロールしましょうというのが私の提案。


 ジビエの専門店なんかもあるようで

 

忙しい方のための今回の要点

・近年、イノシシが急増して農家などの被害が増えているが、イノシシの生態にはまだ不明な点も多い。
・イノシシは1度に子供を5頭も産むなど繁殖力が高いが、野生ではすぐに半分は死んでいたのが、最近は死ななくなってきているのが急増の原因だという。
・定点観測による生息数調査では、1平方キロ内に30頭以上が棲息する超過密地域も見つかった。
・また高カロリーの餌を取ることに夜イノシシの巨大化が起こっており、親のイノシシを捕まえたつもりで子供を捕まえてしまっているために生息数を抑制できないなどの現象も起こっているという。
・対策を行っている地域では、イノシシの鼻が当たる高さに電磁柵を設置すると共に、畑の周りの草を刈って隠れ場所をなくすなどの手で被害を防いでいる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ぼたん鍋は丹波篠山に行けば普通に食べられますが、実に美味です。本来イノシシはかなり食用に適した動物です(そもそもイノシシを家畜化したのが豚である)だからこそイノシシはもっと有効活用するべきであると私は考えています。猟師が増えるとイノシシの数を減らせるし、さらにはイノシシが「人間は恐ろしいもの」と学習することによって人里に降りてくることを防ぐことも期待できます。「食って環境を守ろう」である。

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