教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/22 テレ東系 ガイアの夜明け「全国から"絶品"が続々誕生!新時代のグランプリ」

にっぽんの宝物グランプリの続報

 今回は以前にも紹介していた「にっぽんの宝物グランプリ」の話。農家などの生産者が異業種とコラボして新商品を開発する場を与えるという企画である。

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高知の地場名産がスウィーツとコラボ

 これで賞を受賞すると一躍ヒット商品となる可能性が高い。例えば高知の田野屋塩二郎こと佐藤京二郎は塩の製造を行っている人物。丹念に手作りで仕上げたこの塩を使って、同じく高知県の製菓メーカーがシューラスクを製造したところ大評判になった。去年1年で3億円を売り上げ、塩二郎の名が知れ渡ることとなり、塩を使いたいという引き合いなども来ているという。

ふるさと納税の返礼品などにもなっている模様

 

 番組ではさらに昨年スウィーツ部門でグランプリを受賞した西山金時スウィートポテトロールを紹介しているが、これは高知の西山金時というサツマイモを用いたロールケーキで、スポンジと思える部分が実は芋なんだとか。ちなみにこのケーキも上のシューラスクも共に高知県の製菓会社スウィーツの商品のようなので、番組はこの会社に取材したな。

同社の西山金時スウィーツはこういうのもあるようだ

 

 

ネギ農家がコラボに挑む

 で、今回番組が取材したのが深谷ネギを栽培している農家の持田直光氏。彼は同じシーズンに各農家が一斉にネギを栽培したのでは価格が暴落すると言うことから、新しい作物に目をつけた。それが地中海沿岸が原産地の西洋ネギ・リーキ。非常に太いネギで熱を加えると甘くなるのが特徴だという。2年前から仲間の農家を誘って徐々に生産を増やしているが、リーキの知名度をもっと上げたいと考えているという。

北海道で結構栽培されているようで、楽天市場にも出てますね

 

 コロナの影響で開催が遅れていた地方大会のセミナーが行われた。参加者はここでコラボ相手を見つけるのだが、今年は1都4県の他会場とリモートで接続するという試みを行った。圏央道で結ばれた地域がコラボするという主旨だという。埼玉では早速持田氏がリーキを紹介する。すると多摩会場から果物農家の川島幹雄氏が名乗りを上げ、さらに千葉会場のレストラン経営者の山友浩司氏が興味を示して3者でのコラボが決定した。

 11月、持田氏は手塩にかけたリーキを持って山友氏のレストランを訪れる。実は山友氏は全国で飲食店15店を経営する経営者で、コロナで売り上げ減の中での目玉食材を探していたのだという。早速厨房でシェフを交えて作戦会議。シェフの「メインで使用したい」との意向でまずは炭火焼きにしてみる。リーチの甘さが引き立って美味とのこと。これ以外にも持田氏が想像もしなかったようなリーキ料理が次々と出てきて、持田氏は「蝶よ花よと育てたリーキが皇室に嫁ぐような感じ」との感想で、かなりテンションが上がっている。

 大会まで1週間の11月27日、この日はいよいよ大会のメニューが決まる日。ここにはもう一人のコラボ相手、東京の果物の農家の川島氏がボイセンベリーを持参していた。ビタミン豊富なキイチゴだという。決定した料理は焼いたリーキに豚肉を巻いて焼き、そこにボイセンベリーのソースを加えたもの。これでいよいよ大会に臨む。

ボイセンベリーはやっぱり珍しいのか、楽天市場でも販売されているのは苗です

 

 大会当日は全16チームが参加してプレゼンを行う。持田氏のチームは「リアル竜宮体験」という名でエントリー。見事準グランプリを獲得し、全国大会参加となる。なおチーム名が竜宮体験の理由は山友氏のレストランが巨大な水槽でウミガメと泳げるダイビング体験を出来ることを売りにしていることから、竜宮体験なのだという。竜宮体験の後にリーキの料理を頂くという趣向。お客の評判も上々である。現在は来年3月の全国大会に向けて、さらにメニューをブラッシュアップする予定。

 

熊本の酪農家が危機から立ち上がろうとしていた

 一方、前回にも紹介されていた熊本県の絶品ヨーグルトを製造している酪農家の大藪裕介氏が危機に陥っていた。大藪氏のミルコロエイジングヨーグルトは2年前にグランプリを獲得して大評判となって絶好調、工場まで増設したという。しかしコロナの影響で思いもかけない危機が訪れた。売り上げはむしろ巣ごもり需要で絶好調だったのだが、通販会社がコロナの影響で倒産してしまって、売掛金が回収不能となり2000万円の損害を蒙って資金繰りが危機的状況になったのだという。この危機に奥さんがSNSで助けを求め、何とか切り抜けたのだという。

これもやっぱりふるさと納税の返礼品になってます。

 

 大藪氏はさらに新たな商品開発にとり組んでいる。出来上がった試作品を全国の同志(グランプリの受賞者達)に試してもらって意見を聞いたりといったことを行っていた。その反応を踏まえて大藪氏は新たな挑戦、その結果ホワイトチョコを用いてヨーグルトガナッシュを試作。低カロリーなのも売りだという。これを今度はシェフやバイヤーを集めての試食会。その結果、料理に使ってみたいとか商品として扱ってみたいとの反響があって販売に乗り出すこととなった。

 

 以前にも紹介していた「にっぽんの宝物グランプリ」の続編であるが、地方を発信地として新たな商品を生み出すというこの企画は、地域振興という意味でも貴重であると感じる。

 なお番組序盤は高知のスウィーツ社の商品ばかりだったが、ここの商品はふるさと納税の返礼品にも用いられているなど地元密着のようなので、多分番組は最初は地元食材を使用して地元を盛り上げる会社として取材を行ったのだと推測する。ただ他のネタとの絡みから(この番組は大抵ネタを2~3本ぶち込む)、今回のような型式になったんだろう。

 ちなみに今回登場した農家さんとかはいずれも40前後だったが、やはりある程度農家として実績を積み、その上でこのような新企画に取り組もうという意欲がある年代と言えばそのぐらいになるんだろう。さすがに60才を過ぎた高齢農家とかにはキツいだろう。高齢農家が絶滅してしまう前に次代を担う若手農家が農業を再生してくれたら、それこそが日本全体を考えた時に大きな益になる。私が考える日本再生プランである日本中核都市構想は、地方ブロックの中核都市を中心とした自給自足圏が基本となるので、農林水産業の再生は不可欠なのである。

 

忙しい方のための今回の要点

・今まで多くの新たなヒット商品を生み出した「にっぽんの宝物グランプリ」に挑む農家がまた一人。
・今回は深谷でリーキ(西洋ネギ)を栽培する農家と東京の果実農家、千葉のレストランがコラボしてリーキを使った新料理をアピール、地方大会の準グランプリを獲得して全国大会進出となった。
・一方、熊本でヨーグルトを作っていた大藪氏は、コロナで通販会社が倒産して売掛金が回収できなくなる危機に。SNSで支援を呼びかけて危機は脱したが、さらに新商品の開発に挑戦していた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・この企画については私も注目しているので、今後も順調に地方の産品に光を当てていって欲しいものです。実際に日本の地方にはまだまだ宝は埋もれていると思います。それらが廃れてしまわないうちに何とかしないと。

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