教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

1/24 NHKスペシャル「わたしたちの"目"が危ない」

超近視時代に子供達に増加する眼軸異常

 コロナでの在宅学習なども増えている昨今であるが、その中で急激に危機を迎えているのが私たちの目だという。国が調査した視力0.1未満の子供の割合は急激に増加を続けており、小学生で1/3、中学生になると1/2以上が該当するという。

 その中で視力検査では分からない目の異常が進行しているという。それは眼球の奥行きである眼軸が伸びる(極端な言い方をすると、ボール型の眼球が卵形になる)ことによる近視が増えているのだという。最近の研究によるとこの眼軸異常が緑内障や白内障、さらには鬱や認知症など様々な病気の原因になることが分かってきたという。そのような現状を報告。

 現在は超近視時代と言え、世界の近視人口の推定は2010年で約20億人だったのが、2050年には約50億人に達すると考えられているという。

 

眼軸異常を招く生活習慣

 そのような近視を発症する原因は日頃の生活習慣にある。最近は子供の視力が急激に落ちてくる事例が実に多いという。このような近視には大抵眼軸異常が潜んでいるという。ある小学生の少年場合、コロナの影響による休校以来、今までにないほど急激に視力の低下が起こっていたという。このような視力低下は30センチ以内の距離を見る近業と言われる作業が影響しているという。実際に彼が実際にどんな距離を見ているかを特別な装置で調べたところ、学校で授業を受けている時は黒板を見たりノートを見たりで視点は変化していたが、帰宅後はゲームをしたり、宿題をしたり、漫画を読んだりなどで近業の時間が圧倒的に多い。自宅で起きている時間の内の実に4割以上が近業の時間だったという。1日の近業の時間を足し合わせると4時間以上にもなったという。

 このような近業が続くと眼軸が伸びる現象が起こる。網膜上に焦点を合わせる時、近業の時は焦点が網膜よりもさらに奥になってしまうため、水晶体だけでは合わせきれず、それを補うために眼球が奥へと伸びるのだという。これがそのまま固定されてしまうと遠くのものに焦点が合わなくなるこれが眼軸近視だという。

 実際に学校で調査したところ、1年生で23.5%、6年生になると78.3%もが眼軸近視になっていたのだという。なおこの眼軸近視は通常の視力検査では見落とされることも分かったという。視力検査の時に目を細めることで水晶体が一時的に眼軸の伸びをカバーしてしまうのだという。調査した小学校でも、一般的な視力検査による近視の割合は23%だったのに対し、眼軸近視の割合は55%もあったという。

 

合わない眼鏡が招く眼軸異常とそれから発症する眼病

 眼軸近視は子供だけでなくて大人も発症するが、その原因となるのは合っていない眼鏡だという。眼鏡を遠距離に合わせすぎると近くを見る時に目に負担がかかり、これが眼軸近視を発症する原因になるのだという。

 また眼軸近視が緑内障などにつながる例があるという。眼圧が正常でも眼球が変形することで神経に負担がかかり、そのことが緑内障を招くのだという。さらに視力の低下が認知症につながるという研究結果も報告されている。認知症の疑いの割合が視力が良好な場合と比較して矯正視力が0.7未満の場合は2.6倍もあったのだという。脳の情報の8割を占める視力の情報が失われていくことで認知機能に影響を与えるのだと考えられるという。また鬱との関連も指摘されている

 眼軸近視によるリスクとしては白内障が5.5倍、緑内障が3.3倍、網膜剥離が21.5倍になるという。強度近視の簡易チェックとしては、裸眼で指紋が見える距離が12センチ以下なら要注意だという(私の場合は12センチまで近づくと逆にピントが合わない)。

 

眼軸近視を予防する方法

 では対策をどうするかであるが、まず眼鏡の選び方が重要だという。眼鏡が疲れるという場合は要注意である。累進屈折力レンズという境目のない遠近両用のレンズで非常に楽になったという例が多いという(私の場合は近くの作業用の眼鏡と遠くを見るための眼鏡の2種類を作っている)。

 また近視を抑制するために麻酔薬の一種であるアトロピンを希釈して使用するという方法も現在臨床試験中であるとのこと。

 さらに近視を減らすポイントとして台湾が取り組んでいるのは「屋外で光を浴びる」というもの。屋外の1000ルクス以上の光を浴びることでドーパミンが分泌されて眼球の伸びを防ぐことが分かってきたのだという。1000ルクスの光を2時間以上浴びることを目標にしており、2011年と比較して2020年には視力0.8未満の小学生の割合が5%以上減少したという。

 また近業を減らす工夫が必要だという。たとえばゲームや動画はPCやテレビなどの大きな画面に映して距離をとる。また勉強の時には「3つの20」を意識するのだという。これは20分作業したら20秒間20フィート(約6メートル)離れた場所を見るとのこと・・・なんだが、私の部屋の奥行きは6メートルもないぞ。最初に登場した小学生がこれを実践、その結果、近業の継続時間が最大27分から19分に低下、さらに1日の近業の時間が4時間から2時間53分に低下して目出度し目出度しとしている。

 

 近業は30センチ以内の距離を見る作業とのことですが、この30センチというのは意外と近いです。だから私の場合はこの距離をとるのはスマホの画面を見る時ぐらいですね。そもそもこの距離は私の目ではまともにピントが合わない距離なので、道理でスマホをしばらく見ていると目が異常に疲れると感じたはずである。だから私は調べ物の類いでスマホを使うことはほとんどなく、大抵はPCを使用してます。PCを使用すると画面との距離はザッと80センチぐらいで、私の日常使いの眼鏡はそのぐらいの距離で焦点が合うようにしてあり、さらにブルーライトカット機能を付けてます。もっともそれでも長時間のPC作業(とにかく職場でも家庭でもなので1日のうちでPCに向かっている時間は10時間を越えます)では目が疲れて焦点が全く合わなくなったりしますが。

 

忙しい方のための今回の要点

・最近、子供達に急激に進む近視が増加しているが、それは眼軸(眼球の奥行き)が伸びることによる眼軸近視が多い。
・眼軸近視を発症する原因は30センチ以内のものを見る近業による。この時、水晶体だけではピントを合わせられなくなるために眼軸を伸ばすことで焦点を合わすが、それが固定化してしまうのだという。
・眼軸近視は通常の視力検査では見落とす場合が多く、小学校の調査では通常の視力検査結果の倍の眼軸近視の子供が見つかった。
・眼軸近視は大人でも発症するが、それは眼鏡が合っていなくて目に負担をかけている場合が多いという。遠くを見ることに眼鏡を合わせすぎると近くを見る時に目に負担がかかるので、生活スタイルに合わせてそのバランスをとるのが重要。最近は遠近両用の累進屈折力レンズを使用することで大幅に負担が軽減できることがある。
・眼軸近視は視神経や網膜などに負担をかけることで、緑内障などの目の病気を発症しやすくしてしまうと言う。また視力の低下が認知症につながるとの研究報告もある。
・1000ルクス以上の光を浴びることで眼軸の伸びが防げるという報告がある。台湾では子供達に1000ルクス以上の光を2時間以上当てるようにしたところ、近視の割合が5%も減少したという。
・また作業においては、たとえば勉強などの時は20分ごとに20フィート(約6メートル)先のものを20秒見るという「3つ20」を実践することで近視を予防できるという。


忙しくない方のためのどうでも良い点

・私も近視ですが、初めて意識したのは高校の時です。高校の教室がやけに薄暗くて、そうこうしているうちに急激に黒板が見えなくなってしまったという記憶があります。で、視力の低下は40年経過した今でも続いてます。ただこの番組で言っていた強度近視とは少し違うようですが。まあ単なる酷使のしすぎでしょうね。PC作業が原因なのは想像ついてます。最近はPC作業を長時間やっては目の焦点が全く合わなくなっていることに気づくの繰り返しですから。