教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/7 NHKスペシャル 2030 未来への分岐点3「プラスチック汚染の脅威」

地球を危機に陥れるプラスチック

 近年になって急激に地球環境への脅威として持ち上がってきているのが増大するプラスチックゴミである。実際にこれを誤食することで命を落とす海鳥なども増加していると言う。

 世界中に広がるプラスチックゴミでマレーシアでは大変な事態が発生した。先進国から送られた来たプラスチックゴミがリサイクル工場で火災を起こし、周囲に有毒ガスを撒き散らした。この地区ではこのような火災が2年間で20件も発生する異常事態となっている。しかし実はこれは事業者による放火であり、処理コストを低減するためにわざと火を付けたと見られている。地元の医師によると、これらの火災の影響で地元住民では肺の病気や気管支炎やせきを訴える患者が15%も増加しているという。地元では抗議運動も盛り上がっており、火災は収まったが、今度は人目に付かない山林などへの不法投棄が急増したという。マレーシアは世界中のプラスチックゴミに覆われようとしているという。この中には日本からのものも大量に含まれる。不法投棄や放火を防ぐために今年の1月に相手国の同意のないプラスチックゴミの輸出は禁止されたが、それでも規制をくぐり抜ける業者は後を絶たないと見られている。

 加工が容易で丈夫なプラスチック製品は1950年に登場してから、急激に消費を伸ばしてきた。現在世界で83億トンが製造され、さらに増加を続けている。これらの用途は36%が容器・包装、16%が建築資材、14%が繊維である。しかしリサイクルされているのは全体のわずか9%に過ぎず、焼却されているのが12%、しかしこれは大量の二酸化炭素を出すので無闇矢鱈に増やすわけにも行かない。そして残りの8割は埋め立てなどで放置されているのだという。そして野ざらしになったプラスチックゴミの一部が海に流れ出す。その量は年間3000万トンと推定されている。これらは海流に乗って地球全体に流れ出す。日本の海岸にも中国などからのプラスチックゴミが流れ着いてきている。

 

環境を破壊するマイクロプラスチックの恐怖

 これらのプラスチックゴミは壊れてマイクロプラスチックと呼ばれる数ミリの小さなかけらになるが、これらは魚に誤飲される例が増加している。これらが魚介類の成長に悪影響を与える濃度は1000mg/m3だと推測されている。現在のところ、日本近海などに既にその濃度に達していると推測されるエリアが存在するという。しかし今のペースでプラスチックが増加すると、2050年にはその領域は3.2倍に拡大するという。しかもその領域はことごとく、現在優良な漁場となっている海域である。つまりは海の生態系が壊滅的打撃を受ける可能性があるのである。これはひいては地球全体の生態系の破壊につながる。

 さらにマイクロプラスチックが直接人体に影響を与えると警告している研究者もいる。東京農工大学の高田秀重教授が警告するのはプラスチックが含む添加物。これが体内に溶け出して人体に悪影響を与えるというのである。プラスチックには劣化を防ぐ紫外線吸収剤、さらに難燃剤などの性能向上のための添加物が含まれている。しかしこれらの中には人体に吸収されると有害なものがある。高田教授は「マイクロプラスチックはトロイの木馬だ」と語っている。添加剤は食物連鎖で濃縮されていくという。アミに添加剤の入った微細なマイクロプラスチックを与え、これをカジカに与えるとその身や臓器から紫外線吸収剤や難燃剤が検出された。これを直接に海水からマイクロプラスチックを取り込んだカジカと比べると10倍の量になったという。臭素系難燃剤は脳神経の発育に悪影響を与えるとして、2010年から段階的に使用が禁止されている。紫外線吸収剤についても規制が議論されている。

 

更なる脅威のナノプラスチック

 また新たな脅威として、マイクロプラスチックよりもさらに小さいナノプラスチックの存在も明らかとなってきた。これらのプラスチック片は1000ナノメートル以下というサイズであり、このサイズになると細菌レベルになるので、直接に人体に吸収される可能性があるという。小腸などから血液の中に入り込み、体内に蓄積することが懸念されている。最新の研究では50ナノメートルのプラスチックを使用した実験の結果、ナノプラスチックが胎盤の外側の層に蓄積するということが確認されたという。これが実際に発生すると胎児に栄養が十分に届かなくなる可能性がある。

 しかもナノプラスチックは大気中にも漂っているという。高山の樹氷を調べたところ、大量のマイクロプラスチックが含まれていることが分かったという。大気を通してプラスチックを体内に取り込んでしまう可能性も存在するのだという。

 

プラスチックゴミ削減の取り組み

 このような事態を防ぐために立ち上がった者もいる。バリ島では十代の若者が立ち上がり、使い捨てプラスチックを禁止する法律が制定される原動力となった。活動の中心となったのは12才のメラティ・ワイゼンと妹で10才のイザベル・ワイゼン。彼女たちはもっとも影響力のある10代に選ばれたという。最初は絵本などを配って身近な人たちの意識改革から始めたという。そしてマイバックの使用を訴えるなど大人達にも働きかけ、知事にも訴えたという。徐々に活動の輪は広がり、ゴミ拾いは325回、のべ45000人が参加したという。こうした取り組みがインドネシア全体の意識変化につながったという。3人に1人が水筒を持ち歩き、4人に1人がマイスプーンやフォークを持参しるようになったという。

 世界の人々の意識も徐々に変わりつつある。11カ国6000人を対象にした調査では、環境に配慮した商品を5年前よりも買うようになったという人は72%にのぼるという。ファッション業界でも漁網や絨毯などのナイロンを再生して繊維として使用するなどの動きが始まっている。

 プラスチックでもっとも多い容器・包装の分野でも、日本で花王とライオンというライバル企業が容器を共同で回収してそれを再生するという取り組みを開始した。

 

ゴミそのものをなくす取り組み

 さらに世界では容器そのものを見直してゴミをなくすという挑戦も始まっている。若手起業家のトム・ザッキー氏は今までのリサイクルからさらに踏み込んで、ゴミという概念自体をなくすという取り組みを行っている。そのシステムがLOOPという使い捨て容器を一切使わないシステム。既に200を越えるブランドが参加している。製品はステンレスの容器に入れて専用のバックで配送され、これらの容器はバックで回収して洗浄し再利用されるのである。アメリカでは35000世帯が既に利用している。日本でも25社が参加して3月からサービスを開始すると言う。なおこの話は以前に「ガイアの夜明け」でも取り上げており、今回番組に写ったキシリトールのボトルの開発のことが放送されていた。

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 20年後を試算した時、現状維持だとゴミは増え続ける。可能な限りリサイクルをしてもその減少は45%に留まる。しかしプラスチックゴミを8割減らせる可能性があるという。それはマイバックなどで使い捨て容器を減らすこと、世界中で適切なゴミ処理を徹底して流出を減らすこと、さらに循環型の社会システムを作ることなどで未来を変えられるという。

 

 日本でも昔は一升瓶などリサイクル瓶が主流であったし、野菜や魚なども新聞紙で包んで販売していた。それがいつ頃からか効率や経済性重視でプラスチックのトレイやペットボトルに変わっていったのである。全ては金儲け優先の資本主義と、目の前の利便性だけに目を奪われる消費者の行動にあったと言える。

 しかしもう既にそれが地球の限界に行き当たっていると言うことである。よく言われることであるが、既に地球は人類にとっては小さすぎるものになってしまったということである。かつては人間が少々無茶をしても、それを受け止めてくれるだけの大きさと懐の深さが地球にあったのだが、拡大し続ける人類の活動は既に地球の規模の限界に行き当たって、これ以上地球に甘えることは許されなくなったということである。だから今は資本主義の「大量生産大量消費」という概念を見直すべき時期に来ていると考えている。なお同時に私は「成長し続ける経済」という資本主義の原則そのものが既に幻想と言うしかないと感じている。

 循環型社会とか、持続可能な社会などということが叫ばれているのだが、私はここで「ゼロ成長で成立できる経済システムの確立」というのも重要だと考えている。いくらゴミを減らしたところで、やはり経済システムが成長を前提としている限り、どこかの分野でやはり環境に負荷をかけてしまう現象が発生すると考えているからである。現在の「成長し続ける資本主義」を捨てて、ポスト資本主義が登場しない限り問題は根本的には解決しない気がする。

 

忙しい方のための今回の要点

・プラスチックゴミが世界的問題となっている。
・マレーシアでは先進国から送られたプラスチックのゴミが放火で不法に焼却されたり、不法に投棄されるということが相次いでいる。
・また世界で生産されるプラスチックの8割は埋め立てなどで投棄されており、これらの一部が海中に流れ出している。その量は年間3000万トンと推定されている。
・海中で粉砕されたプラスチックはマイクロプラスチックとなり、魚などに誤食され、それが魚の成長に悪影響を与えて生態系を破壊する事態が警戒されている。
・またマイクロプラスチックに含まれる添加剤などの成分が人体に取り込まれることも懸念されている。実際にこれらの成分は食物連鎖の中で生体濃縮されることも分かっている。
・さらに大きさがナノメートルサイズのナノプラスチックの発生も懸念されている。細菌レベルのサイズのため、これらは直接に人体に吸収される可能性がある。実験によって胎盤に蓄積する可能性が指摘された。またこれらは水中のみならず、大気中にも拡散して人体に吸収されることになる。
・バリでは使い捨てプラスチックを禁止する法律が制定されたが、これに大きく貢献したのは10代の姉妹だった。
・またファッション業界で再生ナイロンが使用されるようになったり、日本でもライオンと花王が共同で容器を回収してリサイクルするシステムを推進している。
・アメリカではLOOPというステンレスの耐久性のある容器を再利用するシステムが始まっており、これは日本にも上陸する。ゴミそのものをなくそうとしている。


忙しくない方のためのどうでも良い点

・とにかく「経済性第一」の社会をまず変革する必要がある。そのためには資本主義の見直しが必要だが、その過程でもう一つ必要になるのが現在の歪な富の偏在の解消。地球を犠牲にして私腹を肥やした最たる連中が今の富裕層であるので、そこのところに根本的にメスを入れる必要がある。だからこそ富裕層だけを優遇しようとする政権などは問題外である。

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