教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/9 テレ東系 ガイアの夜明け「ニッポンの山は"宝の山"!?」

山に新たな価値を見出した不動産会社

 昔は「山を持っている」と言えば田舎の金持ちの象徴のようなものだったのだが、最近は山の利用価値が落ちてくると共に負動産扱いされて困る人まで出てくるようになった。そんな中でその山林に価値を見出す者がいる。

 山専門の不動産情報を扱うベンチャー企業の「山いちば」。3年前にこの会社を作ったのは比賀真吾氏。山専門の不動産会社なんて儲かるのかと疑問を感じるところだが、3年前に比べると契約数は3.5倍、問い合わせは5倍以上になっていると言う。社員は2人で狭いオフィス1つだけの会社だが、今まで30万坪以上の山を売却しているという。

 ポイントになるのは山林。比賀氏は木が投資の対象になると考えている。比賀氏は衛星写真で山にどんな木が生えているのかのチェックを欠かさない。木の値段によって同じ山でも値段は5倍ぐらい変わるという。山に生えている木は年月が経つと太くなり、そうなると価格が上がる。だから投資の対象に出来るのだという。

 

国内木材が建材として注目されている

 比賀氏はそもそもは不動産会社で高額物件を扱っていた。なぜ単価の低い山林売買に乗り出したのか。実は彼は京都で70年続く木材会社の三代目という顔も併せ持つ。かつては安い輸入木材に押されて著しい価格低下をした木の価格が、ここ数年で急騰しているのだという。これは大手建設会社が木造のビルを計画するなど、木の建材としての需要が増してきたからだという(熱帯雨林の大量伐採に規制がかかったのもあると思う)。国産木材の需要は増える一方なのだという。

 比賀氏は売却依頼を受けるとその山を訪れて実際に木を確認する。杉などは切り出す前の価格が市場に出る頃には3倍以上になるという。そして彼がこの山で最も価値があると判断したのはケヤキ。取引価格は杉やヒノキの比でなく、5倍、10倍とするという。比賀氏がこの日視察した山は土地は40万円ほどに対し、木の価格は200万円ほどと鑑定した。木の価格は時間が経つとさらに上がっていく。この山は林業をしたいという50代の男性に売却された。

 

山で儲ける人々

 では実際に山を買った人はどのように利用しているのか。山を所有している菅原亮氏にインタビューをしているが、彼は原木シイタケ栽培を行っており、さらに使用済みの原木を使用してクワガタの養殖も行っているという。サラリーマン時代に比べると収入は減ったが、身体の負担が少なく家族5人が生活できるだけの収入は十分に得られているという。

 また全国各地に山を所有している山王と呼ばれる人物がプロ雀士で不動産投資家その上に様々な資格を有する資格コレクターでもある永野彰一氏。シャネルの限定販売の1000万円はするという腕時計(の割には見た目は安っぽいんだが)をしている怪しい人物だが、彼は山林投資で儲けているという。彼が案内してくれた山の一つは東電の高圧電線が通っている山。電線の地代で年に10万円入るという。この山は44000円で購入したので、金の成る山だという。これ以外にもタケノコ取りで金を取ったりで様々な儲け方をしているらしい。将来は全市町村に山を持つのが目標だとか。

 

難アリ物件を手がける不動産会社

 一方で全く売れない山もある。そういう物件を扱っているのが横浜の小さな不動産会社リライト。取材中も築50年で15年あまり空き家になっていたという物件が1円での商談が成立していた。家は荒れ果ててはいるが100平方の土地付きの物件である。しかし持ち主の女性は、住んでいないのに草刈りなど管理が大変だし、固定資産税は取られるしで、金を払ってでも引き取ってもらいたかったとのこと。0円でなく1円にしているのは0円だと贈与と取られるので、あくまで売買であるとするためとのこと(税金上の問題だと思われる)。田中裕治社長によると、このような1円売買は多いと言う。リライトはこのような難アリ物件を抱える人の駆け込み寺になっている。田中氏はかつて不動産会社に勤務していたが、ノルマ至上主義に疑問を感じて開業したらしい。なお1円物件売買ではリライトとしては全く商売にならないが、これをきっかけにして高額物件の商談に結びつく例が意外に多いのだという。

 難アリ物件を抱えていて困っている人の助けになりたいという田中社長。その彼の元に転がり込んだのは千葉県で祖父から相続したという山林を処分したいという男性。祖父から田畑や山林などを相続したのだが、固定資産税が20万円かかるのに使い途がない状態であり、子供たちに迷惑をかけないために今のうちに処分したいのだという。

 早速男性の元を訪れた田中氏は、必ず売ると約束をする。そして現地視察。しかし山は荒れ放題でどうやって売るかが難しい状態。倒木などもありそれを処分するだけでも素人ではお手上げである。田中氏はこれをどう売却するか頭を悩ませる。

 その結果、一つのアイディアがチェーンソーメーカーの練習場としての売却の商談を進める。切り放題の木がゴロゴロ生えている山林は、チェーンソーメーカーの顧客に操作法を指導するには最適だとか。

 結局、最終的には山林と畑は茨城の葡萄農家に売却が決まったとのことで目出度し目出度しの結論になっている・・・んだが、チェーンソーメーカーはどうなった?

 

 日本では山林が財産から負動産になって久しいです。おかげで各地で手が入らずに荒れ果てた山林がゴロゴロしており、私は全国視察の際にそういう光景を嫌と言うほど見ています。そういう点では、国内木材が見直されて価値が出て来ているのならそれは朗報です。もっともどんな木でも売れるわけでなく、中には間伐をしていないせいで細い杉が密集しているような山もあり、そんな山はやはりしんどいでしょう。国内木材の見直しを契機として、国内林業にも復活を願いたいところです。原生林などと違って里山は適度に人の手が入ってこそ生きますので。

 

忙しい方のための今回の要点

・山専門の不動産会社である「山いちば」は山の売買を手がけている。最近は確実に売買の契約が増えているという。
・社長の比賀真吾氏によると、大手建設メーカーが木造のビルの建設計画を立てるなど木材の需要は増しており、ここ数年国内木材の相場は急騰しているという。だから山林が投資の価値があるとのこと。
・実際に山林投資で儲けているという山王と呼ばれる人物に番組は取材している。彼は電線の地代やタケノコ掘りの費用徴収など様々な方法で山林で収益を上げている。
・しかしその一方で処分に困る山林なども存在する。横浜の不動産会社リライトではそのような難アリ物件の売買を手がけている。今回も祖父から相続したが処分に困ったという田畑と山林の売買を成功させた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・山が価値がなくなると言うことこそがまさに里山の荒廃と直結しているわけです。そういう意味では里山の再生は価値のある山を作るということでもあります。
・日本ではかつては不動産を所有していたら安泰と言われていたのですが、現状は人口減少や地方経済の崩壊などで都心の一部地域の不動産は高騰しているのに、地方の不動産は負動産と言われるような状況になってます。これは経済の歪さの反映でもあります。

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