教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/17 NHK 歴史秘話ヒストリア「最終回スペシャル」

ヒストリアの歴史を振り返る

 いかにも唐突な印象を受けるが、この番組もとうとう最終回だとか。2009年から始まり、放送回数は400回以上、初代案内人は渡邊あゆみアナ。2016年からは二代目の「カメラガン見」の井上あさひアナ。2019年からが現在の渡邊佐和子アナが担当。で、今回は最終回スペシャルとして、これまでの内容を大発見、ブーム、新説に括って紹介するとか。

 最初の大発見は、2011年の元寇の蒙古の船が発見されたニュース、2015年は葛飾北斎の肉筆画の発見などがあったが、番組では2009年の邪馬台国の謎に迫る発見を紹介。

 内容は纒向遺跡について。この遺跡は邪馬台国の論争に決着をつけるのではと注目されている遺跡である。かなり大規模建造物の跡が発見されたのと、年代的に邪馬台国と一致することが有力視されている最大の理由。さらには大量の桃の種が発見されており、これらは儀式に使用されたのではとのこと。また幻覚作用のある麻の種も見つかっており、いよいよもって祭祀のためのものではと考えられている。さらには日本全土の土器が発見されており、纒向遺跡の影響は日本全土に及んでいたとも考えられている。もっとも現在に至っても、まだ邪馬台国論争の決着はついていない。

 

歴史に纏わるブーム

 次のブームは、2016年の応仁の乱の書物のヒット2019年の百舌鳥古市古墳群の世界遺産登録に纏わる古墳ブームなどがあったが、番組では城ブームに注目。中から姫路城を紹介している。

 で、いきなり登場するのが修理直後の白すぎ城なのだが、この白さの理由は漆喰。その材料は海藻を乾燥させたもので、これを煮て石灰と混ぜ合わせるのだという。さらに全体があんなに真っ白になったのは瓦の継ぎ目も漆喰を塗ったため。姫路城は関ヶ原の合戦の翌年に、西国を抑えるために家康によって建造された。そのために姫路城には各所に防御のための仕掛けもあり、漆喰の壁も防火のためである。

 姫路城が今日の姿を保てたのは地元民の保存のための運動があった。その姫路城が危機に見舞われたのがあの愚かな戦争。全国で7つの城が焼けた中で姫路城は空襲からも生き延びたのである。これには地元の人々が必死で黒い網を被せたりなどを行っていたことも効いたのではとしている・・・んだが、この番組では言っていなかったが、実は天守閣の中から不発弾が発見されたということがあったと私は聞いている。つまりは本来は焼けるはずのものが、あり得ないほどの幸運で生き延びたらしい。

 次のブームが歴女。で、これに付随しての日本刀ブームが紹介されている(そう言えばあったな・・・)。この時には刀剣乱舞とのコラボ企画などが大盛況となった。

 

信長に纏わる新説

 最後の新説は今年に明智光秀が本能寺にはいなかったという説が浮上したそうな(この説自体はこの番組ではまだ取り上げていない)。根拠は江戸時代の資料である乙夜之書物というもので、光秀は鳥羽にひかえたとの記述があるという。

 さらに織田信長については実は真面目人間だったという話が浮上しており、これを紹介。信長は革新的なイメージだけが持たれているが、実は違うというのが最近の説。この時の内容はこのブログでも以前に紹介している。

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 この時に登場したのは天下布武という言葉が指しているのは機内周辺だけであり、さらには将軍義昭を傀儡にしたとされているが、そうではなく信長は義昭を支えて将軍を中心とした安定した世を目指していたという話。また延暦寺焼き討ちもいきなり問答無用で皆殺しにしたのではなく、事前の交渉を永らく行っていたということを紹介している。なお信長は実は厨二で帰蝶にコントロールされていたというのが、昨年の大河。

 

次から「歴史探偵」とのことだが・・・

 で、この番組の後番組がやっぱり私の以前からの予想通り「歴史探偵」。何のために新番組にするのか意味不明・・・。ハッキリ言ってリニューアルの意味はほとんどない。まあ言えるとしたら、番組内容がより「軽薄になった」というぐらいで、いかにも今のNHK的ではあるが。

 最初の宣伝から見れば、今までよりもより新説の類いに力点を置くという姿勢の模様だが、元々はヒストリアも「歴史の影に隠れた物語に光を当てる」という主旨で「歴史秘話」と名乗っていたのだから、実は全く内容的には差がない。またいくら新視点なんていっても、そんなもの早晩似ネタが尽きるだろうから、いずれはまた「どこかで見たような」というネタにならざるを得ないのがこの手の番組の宿命。そうなってきた時に、BS-TBSの「にっぽん!歴史鑑定」なんかと差別化を図れるのか? まああっちの番組は遠からず消滅する可能性もあるが。

 私が歴史番組として視点が面白いと感じていたのは「歴史科学捜査班」で、実はその路線はBS11以前に実はNHK自身がテスト的に数回行っていて、それはそれで見応えがあった。だからそういうテイストを出すというのなら、それ自体は私は賛成ではある。ただし「歴史科学捜査班」を見ていると、やはり製作が従来の歴史物よりもさらにしんどいとみられ、ネタも大変であることなどから最後の辺りはネタがグダグダになって半年しか続かなかった。オリンピックと政権擁護に全集中で、他の番組についてはあからさまに「手抜き」している今のNHKだったらキツいだろう。

 さて「歴史探偵」で行くとなったら一番の問題はメインになる佐藤二朗のアクの強さだろう。正直なところ私があの番組を低評価なのは、歴史的な内容云々よりも、とにかく「なんで佐藤二朗があんなに不快なんだ」ってことに尽きるので。私はそもそも彼がどういう俳優か知らないので特に事前に悪いイメージを持っていないのだが、番組を見ている時間内だけでも、とにかく滑舌の悪い喋り、そもそも存在の意義が不明なのにどことなく上から喋っている態度(彼のキャラなのか演出なのかは知らんが)などが全編を見通すのが困難になるほどのストレスを発生させた。これをどうにか出来なかったら、私としても初めて「歴史番組から内容以外の事情で脱落する」というケースになりかねないと懸念している。

 歴史探偵の第1回が放送された時に私は、『今までのファンからは「大幅劣化改変」と言われ、新規ファンは付かないのに従来ファンは逃げるという「新美の巨人たち」と同じ状態に陥るだろうと断言する』と言ったんですが、工夫なしに臨んだら間違いなくそうなるでしょう。なおあれで完全にジリ貧になった「新美の巨人たち」は、結局はネタを国内限定にした昔に近い作り(タレントをあまり前面に出さずに観光色も薄めた)に戻ってきたようですが、予算が縮小されて海外ロケが出来なくなったんだろうなという悲しさが滲むショボい番組になってしまってます。実は私は最近何回かの放送には目を通してるんですが、内容が今ひとつ薄いので、まだこのブログで扱う気にはなれてません(一時は録画さえやめてました)。

 

忙しい方のための今回の要点

・ヒストリア最終回と言うことで、今までのネタから新発見、ブーム、新説という観点で紹介。
・新発見として上げたのは邪馬台国論争に決着をつけるのではと言われた纒向遺跡の発掘。様々な点で邪馬台国の可能性が言われているが、実のところはまだ決着には至っていない。
・ブームとしては城ブームを上げ、姫路城の内容を紹介。なお歴女による刀剣ブームなども紹介。
・新説は「真面目な織田信長」。実は信長は将軍を中心とした安定な世を目指していたという解釈。
・というわけで、次回からは今まで何回かパイロットを実施した「歴史探偵」が始まる模様・・・。


忙しくない方のためのどうでもよい点

正直なところ前途不安しかないんですよね。民放から見るべき番組がほぼ消滅してから久しいですが、最近はNHKの方でもその傾向が進んでいて。もう既に私が見ている番組ってBSで細々とマニアックに放送しているような番組ばかりで、地上波の番組はほぼ皆無になってきてますから。その挙げ句にNHKはBSのチャンネルを減らすようなことも言い始めているし。
・民放でまでゴールデンタイムにドキュメンタリーや科学番組が放送されていたような時代が懐かしいです。今はすべてどうでもいいバラエティになってしまい、しかも番組タイトルを見ないと区別が付かないぐらい個性がない内容の。ハッキリ言って日本人の知的劣化って、こういうテレビの状況も大きく影響していると私は感じてます。

前回のヒストリア

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