教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/21 サイエンスZERO 3.11から10年「廃炉10年 現在地と未来への挑戦」

廃炉作業の現状

 東日本大震災では福島原発において最悪の事故が発生してしまった。現在廃炉のための作業が進行中であるが、次々と難問に直面して苦労している。その廃炉の現在の状況についての報告。

 廃炉作業の中身は、使用済み核燃料の取り出し、デブリの取り出し、汚染水の処理、瓦礫などの廃棄物の処理などがある。東電は2051年には廃炉作業を終了したいとしているが、既に10年経ってしまった。

 現在は水素爆発を起こした3号機では建屋の屋根に空いた穴の修復が昨年の夏に終了した。現在3号機では使用済み核燃料の取り出しが大詰めを迎えている。変形したりなど取り出しが難しい燃料棒を特殊なアームで取り出す作業が行われており、取材時点で残りはわずかになっていると言う。現在、3号機と4号機では全ての取り出し作業が終了したが、1号機2号機については取り出し開始までにまだ数年はかかるという。

 一方放射性廃棄物の処理は困難を抱えていた。使い捨ての作業服、施設建設の際に伐採した木材などもすべて放射性廃棄物である。これらは通常の焼却が出来ない。そこで新たな焼却施設が間もなく稼働することになっている。放射能を含む煙は4段階のフィルターで放射性物質を漉すのだという。

 

溜まる一方の汚染水

 また問題となっているのは汚染水。現在も1日140トンも増加しており、このままでは22年度の夏から秋にかけて敷地が一杯になるという。また汚染水の処理でセシウムを吸着させた吸着塔の処分も問題となっている。汚染水については海洋に放出することが検討されているが、反対が強くまだ進んでいない。

 廃炉のロードマップは当初の予定よりもかなり遅れているのが現実だという。しかし廃炉完了時期はそのままなので、そこに歪みも生じているという。

 

最難関が燃料デブリの処理

 そして一番問題があるとされているのがデブリの取り出しである。しかも想定外の場所から高線量が発見された例がある。それはシールドプラグと呼ばれる原子炉の上の蓋。ここに原子炉建屋内に残るセシウムの3割がここに付着しているという。これは全くの想定外で、デブリ取り出しに対する影響は必至である。

 放射能のために人間が立ち入れないカ所での作業が必要な廃炉の鍵になると見られているのがロボット技術である。作業のために各種のロボットの開発が進められている。中には入口の扉を開けるためのロボットも存在するという。

 また廃炉作業が長期に及ぶとなると、それに従事する高度な人材の育成や確保が重要である。現地の企業の中にもこの作業に取り組む企業もあり、地元の人々を中心に人材育成をしており、海外からも人材を集めているという。

 さらに福島高専の呼びかけで高専生による廃炉創造ロボコンなんかも開催されているという。原子炉内からのデブリ取り出しを想定した課題に高専生達が様々なアイディアで取り組んでおり、この中から実際に将来廃炉作業に取り組む人材が登場することが期待されている。

 

 10年後の厳しい現実の話でした。実際のところ、現時点でもザバザバ溜まる一方の汚染水をどうするのかなどは難しい課題である。いくら処理をしたと言っても、これを海洋に放出となると、地元が風評被害を警戒するのは至極当然である。その水が本当に安全だというのなら、原発の恩恵を一番蒙ってきた東京の上水道にでも使えと私は以前から言っているところである。少なくとも東電本社と自民党本部の水道水はこれにするべきだし、原発を推進し今でもさらに推進しようとしている安倍前総理などは、当然ながら率先してこの水を飲むべきだろう。

 結局分かったことは、原発は作ることよりも、それを廃棄することの方が困難であると言うことで、まさに「下水の詰まったトイレ」と言われる所以である。それらの先に必ずかかるはずの費用をあえて計算に入れずに「原発は経済的」などと言っていたのだから、嘘八百も良いところである。そのツケが今に来ているわけである。

 

忙しい方のための今回の要点

・福島原発の事故から10年経つが、廃炉作業はまだ様々な困難に直面している。
・使用済み核燃料の取り出しについては、3号機、4号機では終了したが、他はまだ取りかかるのに数年はかかる。
・また汚染水は今でも1にち辺り140トンずつ増加しており、22年度の夏~秋で敷地は一杯となる。また汚染水処理のための吸着塔の処理も困っている。
・一番問題となるのは燃料デブリの処理で、高度な放射能のために人間が近寄れないため、ロボットを使っての処理が検討されている。
・廃炉作業はこれからも長年かかることになるため、これに従事する高度な人材の育成と確保が重要となっている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・なんにせよ。もう原発は経済的観点からも採算が合わないと言うことがハッキリしてます。この後に及んでまだ原子力を推進しようとしているものは目的は利権しかないということもハッキリしてます。とにかく世界的に見ても既に原発はオワコン。

次回のサイエンスZERO

tv.ksagi.work

前回のサイエンスZERO

tv.ksagi.work