教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/18 サイエンスZERO「びっくり!魚は頭がいい」

実は意外と知能が高かった魚類

 知性が低いと今まで考えられていた魚類であるが、最新の研究の結果から、実は結構知能が高いと言うことが判明してきたという。

 魚津水族館では魚に芸をさせている。飼育員によると芸を仕込むやり方はアザラシで同じで、アザラシと同じぐらいよく芸を覚えるらしい。

 魚の知能を研究しているのが大阪市立大学の幸田正典教授。その研究によると魚は互いを見分けるのだという。どうやら顔の模様などから判別していると推測されるという。実際に知っている魚の顔の写真を見知らぬ顔に変えると、警戒して見る時間が長くなったという。縄張りを持つ魚は顔を区別している可能性が高いという。

 また魚の脳を調べてみると人と同じ脳の部位が揃っており、今まで思われていたよりも高度な処理をしているらしいことも分かってきたという。

 

鏡を認識できる魚

 さらに魚が鏡像認知(鏡に映っている自分を識別する)できることも分かったという。これはチンパンジーやイルカなどの賢いと言われている動物のみが有しているとされている能力である。しかしホンソメワケベラという魚がこの能力を有していることが判明したという。ホンソメワケベラに鏡を見せると、最初は敵と思って攻撃するのだが、やがて観察するようになるという。そこで本当に鏡に映った自分を認識しているかを調べるためにホンソメワケベラの喉元に茶色い印をつける(寄生虫が付着していると感じる)と鏡を見て喉を砂にこすって落とそうとしたという。

 

嫁の目を気にする魚

 さらにもっと高度な思考をしている可能性も分かったという。コンビクトシクリッドという夫婦の絆の強い魚を使った実験では、つがいを隣接した二つの水槽に互いの姿が見えるようにして入れ、オスの水槽に2つの部屋を作り、赤い部屋に入った時には自分のところにだけ餌が出るしかけで、青い部屋に入った時には自分のところとメスのところに餌が出るようにした。すると仕組みを理解したコンビクトシクリッドはほぼ100%青い部屋に入るようになったという。自分の状況を理解している上に、つがいの相手を気遣っているという。なお隣の水槽に見知らぬオスを入れたところ赤い部屋に入ったとのこと。しかし隣の水槽に見知らぬメスを入れると青い部屋に入ったという。意外と浮気者である。そこでさらに笑えるのは、その時に別の水槽につがいのメスを入れてそれが見えるようにしたら、今度は赤い部屋に入ったという。しっかりと嫁の視線を意識しているようで、バレバレの浮気をするバカ男よりも知能が高そうである。

 

 アホだと思われていた魚が思っていたよりもはるかに知能が高そうだというお話。しかしこんなことが下手に伝わると、環境テロリストのシーシェパード辺りが「マグロは知的生命体だから食うな」とか言い出してややこしいことにならないかと心配する。もっとも魚はイエスも食っているので、キリスト教原理主義の彼らとしては困るところだろうが。

 にしても「魚も嫁の目を気にする」というのは爆笑ものだった。嫁のいないところでは他のメスに対してもろに媚びを売るのに対し、嫁の目があると素知らぬふりをするようだ。つまりは浮気性と嫁の嫉妬が怖いというのは、人間に進化するよりもはるか以前のかなり原始的感情だったわけか。なるほど、古今東西男の浮気と嫁の嫉妬の物語が多いのも当然か(ギリシア神話なんて、ほとんどがゼウスの浮気とそれに対するヘラの嫉妬の物語ばかりだ)。

 

忙しい方のための今回の要点

・魚は実はかなり知能が高いことが分かってきた。
・実際に魚津水族館では魚に芸を仕込むこともしており、アザラシと同じ方法で芸を仕込むことが出来るという。
・また機能が低いとされていた魚の脳も、実は人は同じような部位を持ち、かなり高度な処理をしている可能性が分かってきた。
・ホンソメワケベラという魚は、チンパンジーやイルカなど高度な動物しかないという鏡像認知(鏡に映っている自分を識別する)の能力を持つことが分かった。
・さらにコンビクトシクリッドという魚は、自分の置かれた状況を判断して、自分とつがいの相手の双方にもっとも有効な選択をするということまで見られている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・別のオスには餌をやらず、メスには餌をやる。しかし嫁の目があると知らない振りをするってのは爆笑しましたね。こりゃ高度っていうレベルでないぞ。もしかしたら魚も忖度とか媚びを売るなんて能力もあるかも(笑)。

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