教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/2 サイエンスZERO「進化研究の新境地 "超遺伝子"スーパージーン」

特殊な遺伝子スーパージーンとは

 生物の進化の過程において、特殊な遺伝子群であるスーパージーンというものが大きな影響を与えているのではないかということが、最新の遺伝子研究の結果分かってきたのだという。

 そもそもスーパージーンの存在が明らかとなったのは、同一の種の中で一部の形態の異なる個体が存在したことからであると言う。シロオビアゲハという蝶の中にはメスの一部に模様が通常と異なり、有毒のベニモンアゲハと似た模様になる擬態形の個体が存在するという。

 この擬態する部分の遺伝子がひとかたまりの遺伝子となっていて、この遺伝子の塊は子孫にもそのまま受け継がれるという。このようなひとかたまりの遺伝子のことをスーパージーンと言うのだという。

 

スーパージーンが子孫に受け継がれるメカニズム

 スーパージーンを調査したところ、その部分のDNA配列が通常のものと反転していることが判明したという。DNA配列が反転していることで、卵や精子を作る際には染色体が2倍に分裂してから組み替えすることによってバリエーションを増やすのだが、その時に組み替えが起こりにくくなっているのだという。そのことによってスーパージーンはそのまま子孫に受け継がれることになるのだという。有用な突然変異が発生した時に、それを後世に残すためのメカニズムと考えられるという。もっとも突然変異には不利なものもあり、そういうものは淘汰されることになる。なおシロオビアゲハのスーパージーンは生存にかなり有利に思えるが、その代わりに寿命が短くなること、オスにモテなくなることなどの不利な条件もあるのだという。

 

スーパージーンが種の生存に影響する

 またヒアリでは女王アリが一匹のコロニーとスーパージーンを持つ女王アリが多数いるコロニーの二つが存在するという。女王アリが一匹のコロニーは、女王アリが遠くに飛んでいって繁殖するので生息域を広げるのに有利、多数いるコロニーはその地域でコロニーを拡大させて他のアリを制圧するのに有利とメリットが異なるのだという。

 さらにスーパージーンによる進化の途上にあると考えられるのがエリマキシギという鳥。この鳥は従来の縄張りの主張が強いオスの他に、シロエリ形と呼ばれる縄張り型よりも争いに弱いタイプ、さらにはニセメス型と呼ばれるメスに似たタイプが存在するという。シロエリ形は縄張り型に戦いを挑むと必ず負けるわけだが、その争いがメスを引き寄せるので、縄張り型のスキを狙ってちゃっかりと寄ってきたメスと交尾するのだとか。なおニセメス型も同様に忍び寄ることになる。

 これらのタイプは400万年前にニセメス型が分岐し、58万年前にニセメス型からシロエリ形が分岐したことが判明したという。現在ニセメス型は非常に少数であり、いずれは絶滅するとみられているが、そこから分岐したシロエリ形は10%ほど存在しており、生き残るとされている。そもそも縄張り型は繁殖に非常にエネルギーを消耗するので、こういう省エネ型が生まれたのではとのこと。

 

 進化の新たなメカニズムということで興味深い。突然変異で現れた新機能を後世に確実に伝える手法として注目されるところである。ただ分からないのは、そのような新機能は様々あるだろうに、どういう基準でスーパージーンになるかというところである。恐らくその辺りは今後の研究課題だろう。

 ただ今回の話でDNA配列の反転という下りが今ひとつ理解しにくかった。ATGCがどういう意味で反転しているのかをもう少しハッキリと説明してくれた方が分かりやすかった。またDNAが反転していることで染色体が対のものと引っ付きにくいので組み替えが起こりにくいとの説明だったが、これについてもそもそも配列が互いに異なる染色体同士が交差するのに、なぜ反転していると組み替えが起こらないのかの説明は納得できていない。とにかく複雑な話であるのだから、もう少し明快で分かりやすい説明が欲しい。時々コジルリなども「?」となったまま適当に流していることがあるのが見てて分かるが、今回は私もところどころ「?」である。少なくとも私は一般人よりは科学の素養はあるはずなので、その私が「?」ってことは、視聴者の大半も「?」なのではないか。

 

忙しい方のための今回の要点

・遺伝子には特定の機能がひとかたまりとなったスーパージーンと呼ばれる部位が存在することが分かった。
・この部位はそのままの形で子孫に引き継がれるので突然変異による優位な遺伝がこれで引き継がれると考えられる。
・発見の発端は同じ種でも一部の個体だけ形態が異なるものが存在する事例から。シロオビアゲハのメスの一部に有毒なベニモンアゲハに擬態するものが存在し、それらは擬態のための遺伝子の塊を有していた。
・スーバージーンはDNA配列が反転していることから、性染色体が分化する時に組み替えが起こらず、そのままの機能が子孫に引き継がれる。
・このスーパージーンは新たな進化のメカニズムとして注目されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

正直なところ分かったような分からないようなです。この番組は時折こういう「説明が分かりにくい回」があります。正直なところ、作っている方も完全に納得して作ってるんだろうかという疑問があったりします。私なんかもこの原稿を書いていて困ることが。

前回のサイエンスZERO

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