教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/12 NHK ガッテン「モンゴル人は知っていた!ニラの魅力MAXワザ祭り」

原産地モンゴルに学ぶニラの食べ方

 今回の主役はバイプレイヤーであるニラ。まずはニラの原産地はどこかであるが、遠くモンゴルだという。この草原に夏になると生えるフムルがニラの原種とのこと。モンゴル人にとっては貴重な野菜類と言うこと。身体を温める効果があるので、夏に大量に収穫すると塩漬けにして保存、冬に食べるのだという。

 また食べ方にもポイントがある。フムルを料理に使う時はとにかく細かく刻む。5ミリ以下にみじん切りするのだという。こうすることによって細胞が破壊され、アリシン(香り成分)が342倍にも増えるという。すると身体を温める効果も風味も大幅に増すことになる。

 

産地に教わるニラの真実

 さらには産地に教わるニラの知恵。産地の人から見ると何も知らない人はかなり勿体ない使い方をしているとか。まずは大量のニラが登場、ゲストにその中から選んでもらっているが、それを見たガッテンボーイの宮森君が「1番」とか「6番」などと分類している。この番号にポイントがあるという話。

 ニラの集荷場に行くとニラを持参した農家の方が自分のニラを「1番」とか「2番」とか言っている。さてこの内容の意味だが、実はニラには1番~9番まであり、これはニラの生態と関係あると言う。ここで登場する実験は、小松菜、白菜、ニラを植えて40日後、水攻めに・・・なんて実験をしているのだが、この実験は空振りに終わる(何やってるの?)。

 結局は何を言いたかったは近くの農家に説明してもらっているが、小松菜などは種を蒔いて40日で収穫できるが、ニラは1年かかり、根っこを育てるのに力が入っているのだという。実際にニラの根を掘ってみたところ、ニラの根はかなり広がると言うことが分かった。と言うわけであの実験はニラは根が広がるので、他の野菜と違って水攻めしても崩れないということをやろうとしたのだが、40日ではそこまで十分に根が育たなかったというお粗末。「カットしたら良かったんじゃ」というツッコミがゲストから出てたが同感。あえてこの実験に意義を見出すとしたら、ニラの根の成長速度自体は特別早くないということが分かったってところ。だけど番組ではそこに全く触れてないので、それだったら結果としてはカットするべきだった(結局は単なる時間稼ぎになってしまっている)。

 で、先ほどの1番~9番というのは、ニラは根がすごいので9回も収穫できるので、それが何回目のものかということらしい。収穫は3週間に及ぶという。ちなみに9回で終わりでなく、根が有る限り放っておくいくらでも出るとのことだが、9番までと言うことは品質が落ちるんだろう。

 

バイプレイヤーが主役になる食べ方

 なおニラは出荷の際は番号関係なく販売されており、入り交じっているのだとか。しかし実は番号で味が違うのだという。1番ニラは太くて糖分が非常に多いのだとか(2番以下の倍でイチゴなみ)。だから1番ニラは主役としてしゃぶしゃぶで食べて欲しいと言うのが農家のお話。これがニラ農家の常識とのことなんだが、ならなぜ一緒くたで販売してるの?

 では1番ニラをどうやって選べばということだが、茎を見て一番太いものが1センチを越えていたら1番ニラの可能性が高いとのこと。番組が販売店に通い詰めて調べたところ、4日1日ぐらいの割で1番ニラがあったという。なお産地ごとに出荷時期がまちまちなので、ほぼ1年中出回っているという。ここで志の輔氏が「産地の方に1番ニラだけ表示をして頂いて・・・」と言っていたのだが、これは全く同感。

 なおこれだと2番以降のニラが売れなくなると困るので、そこはフォロー。2番以下は水分が少ない分、味にパンチがあるので餃子など薬味としての効果が高いということで、従来のニラの使い方だと2番以下の方が良いということになる。なお1番ニラに魅入られて料理に使用している料理人によると、1番ニラは火を通しすぎない方が良いとのこと。

 

 以上、1番ニラという今まで注目されていなかったものを紹介したことには意義はあるが、番組の作りとしては途中の実験などは「せっかくしたものだから流しとこう」という印象で、番組の作りにポリシーが見られずこれは私も首をかしげる。本来なら実験失敗になった時は、それはカットして別のものを入れるというのが上策なのだが、それをしなかったのはそれだけの時間的余裕がなかったのか、あからさまな手抜きか、そこに疑問を感じないほどにスタッフのレベルが低いか。なおこうなった時に「実験結果を捏造する」という「あるある」レベルの超下策も存在するが、これは問題外。

 この番組、最近はネタ切れが顕著であるのもあるが、あの実験映像のように疑問を感じる展開がかなり多い。スタッフのレベルが落ちてるのか、人員や予算を削減されて余裕が全くないのか(多チャンネル化の上にオリンピックなどでスタッフが引き抜かれている可能性がある)。正直なところこの番組の前途にかなり暗澹たる気配しか感じないのだが。実際に大分前に行われたリニューアルも、実質的には劣化リニューアルだったし(「ためしてガッテン」から「ガッテン」に変わってから番組レベルが落ちたのは感じている)。

 

忙しい方のための今回の要点

・ニラの原産地モンゴルではニラの原種であるフムルを夏に収穫して塩漬け保存して冬に食べる。それは身体を温める効果があるからとか。
・モンゴルでの食べ方は5ミリ以下にみじん切りする。こうすることで細胞が壊れて香り成分のアリシンが増えることで、風味も身体を温める効果も大幅に増加する。
・ニラは根が育つのに1年かかり、そこから生えてきたニラは収穫するとまた新たに生える。最初に収穫したものを1番ニラといい、これは2番以下よりは糖度が倍あるので、しゃぶしゃぶなどにして食べるのを進めている。一方薬味として使用するには2番以下の方が良い。
・産地では1番ニラを特に分けて出荷していない。見分け方は一番太い茎が1センチ以上あるものが1番ニラの可能性が高いという。産地ごとに出荷時期はまちまちなので、1番ニラは年中存在するとのこと。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ここまで1番ニラが違うというのなら、なぜ産地は一緒くたで出荷しているのかの方がむしろ疑問ですね。今回この番組で宣伝することで、1番ニラをブランド化しようという考えでも産地にあるのかな? もしそうなら、近日中にスーパーで「ガッテンで話題になった1番ニラ」というコーナーが出来そうな気がする。
・この番組、こういう産地連携的なものが多いから(一つ間違うと癒着が生じる危険がありますが)、上のような話は多分出ると思う。と言うか、実際にブランド化を考えた産地から「これを番組にしてくれ」と持ち込まれたネタって可能性も。ちなみにこの際にスタッフが謝礼などをもらっていたら(業界ではよくある話)スキャンダルになります。

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