教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

5/30 TBS系 世界遺産「地中海マルタ島 難攻不落の城塞都市」

鉄壁の城塞都市

 今回の世界遺産は地中海のマルタ島の北東にある城塞都市・ヴァレッタである。高さ30メートルの城壁と深い堀によって守られた難攻不落の都市である。


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 屋久島の半分ほどの面積のマルタ島の北東、二つの湾に挟まれた半島にヴァレッタはある。ヴァレッタは16世紀に半島を丸ごと要塞化して作られた都市である。東京ディズニーランドよりも少し広めの土地に石造りの町が並び、先端から1.6キロ先にあるお壕は空堀であり、幅800メートルの半島を貫いている。深さは50メートルもあり、石灰岩の岩盤を人力で掘り上げてその上に石を積み上げた。この石材は建材にも使用されている。そして周囲は高さ30メートルの城壁で取り囲んでいる。

 半島の先端には要塞があり、四方に睨みを効かせている。また湾の対岸にも砦を設置し、見張り台が置かれている。威圧感が抜群である。

 

カトリック教徒がイスラム教勢力に備えて建造した要塞

 この城塞都市を造ったのはカトリック教徒であり、建築を指揮したのはヴァレット。都市名は彼の名にちなんだ。イスラム勢力の侵攻に備えるために、キリスト教領域の最前線としての要塞である。

 内部には1万人ほどが暮らせる町が計画的に作られている。碁盤の目のような都市は40度を越えることもあるというこの地で、風通しをよくするためである。建物は切り出した黄色い大理石で作られている。

 また17キロ先から水を運ぶための水道橋も残っている。雨水が染み込みやすい石灰岩のマルタ島では川や湖がほとんどないので、常に水の確保が課題であったという。そのため町中では地下に水路を作って先端の砦まで水を運んだ。さらに町の中央に巨大な地下水槽も発見された。籠城戦に備えたものである。また一般家庭でも地下に雨水を貯蔵するための水槽を設置することが義務づけられていたという。

 

古代文明の遺跡とマルタ騎士団の栄光

 5000年前の古代遺跡でも岩を掘った貯水槽が見つかっている。海沿いの断崖には巨石を積み上げた世界遺産のイムナイドラ神殿が存在する。かつては野ざらしだったが、今は風化を防ぐためのテントが張られている。ここは石灰岩の巨岩を積み上げた遺跡で、紀元前3500年頃とエジプトよりも古い。太陽の光が差し込むことで暦としても使用されていたと考えられるという。

 ヴァレッタの中央にはマルタ騎士団によって建造された壮麗な聖ヨハネ大聖堂が存在する。マルタ騎士団はエルサレムへの巡礼者を守るための騎士団だったが、16世紀にここに本拠地を移してマルタ騎士団と呼ばれるようになった。騎士団は貴族の出身であり、その墓は美しい石で飾られている。彼らは命を懸けてイスラム勢力と戦ったのである。貴族出身であることから、その甲冑は装飾を施された華麗なものもあったという。1565年にはマルタ騎士団はオスマン勢力を撃破してキリスト教世界を守っている。

 

忙しい方のための今回の要点

・マルタ島のヴァレッタは深さ50メートルのお壕と30メートルの城壁で囲まれた難攻不落の城塞都市である。
・ここは16世紀にカトリック教徒によって作られた。イスラム勢力に対抗するための最前線の砦となっている。
・町の先端には砦が築かれて四方に睨みを効かせている。また対岸にも要塞が建造されている。
・水は17キロ先の水源から水道橋で運ばれて地下水路で輸送している。しかし町内には籠城戦のための地下水槽があり、各住宅も雨水を溜めるための水槽の設置が義務づけられていた。
・マルタ島には古代の巨石文明の遺跡であるイムナイドラ神殿も残っている。またその頃に岩を掘った貯水槽も発見されている。
・待ちにはマルタ騎士団が作った大聖堂が存在する。貴族の子弟からなるマルタ騎士団は、ここでイスラム教勢力と命を懸けて戦った。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・いかにもヨーロッパ的な城塞都市です。16世紀の兵器のレベルを考えると、ここを力尽くで落とすのはかなり困難でしょう。落とすとすると、水源を断った上での完全包囲での持久戦ぐらいでしょうか。

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