教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/8 BSプレミアム プロジェクトX 挑戦者たち(リストア版)「魔法のラーメン82億食の奇跡~カップめん・どん底からの逆転劇~」

連続テレビ小説の元ネタにもなった伝説のラーメン物語の後半戦

 今回は後に朝の連続テレビ小説「まんぷく」の元ネタになった安藤百福の日清食品の話である。ドラマでは前半のチキンラーメン開発までの経緯がかなり長かったが、この番組ではその後のカップヌードルの開発物語である。なお「まんぷく」が放送されていた時に、例によってヒストリアで連携企画として安藤百福の話が扱われており、そこではカップヌードル開発だけでなく、その後の百福と長男との衝突とかのエピソードまで紹介されている。

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 なおこの回については、放送当時の私のアーカイブが存在するので以下に掲載する。この番組もこの頃になってくると私の文章もかなり長文である。

 

プロジェクトX 挑戦者たち「魔法のラーメン82億食の奇跡~カップめん・どん底からの逆転劇~」(2001.10.16)

 昭和40年、食品業界では熾烈なラーメン戦争が繰り広げられていた。その中の一社、日清食品は危機に瀕していた。7年前にインスタントラーメンの商品化(多分チキンラーメンのことだろう)で業界に先鞭をつけたメーカーであったが、その後の競争の激化で業績はどんどん悪化し、製造ラインもたびたび停止する状態になっており、1100人の従業員も800人にまで減少していた。そんな中、新入社員の松本邦夫も、草むしりしか仕事がない日々を送っていた。

 一発当てようと焦った社長の安藤百福は、あの手この手の商品を繰り出したが、尽く空振りに終わっていた。彼は活路を求めてアメリカに飛ぶ。しかしスーパーのオーナー達は、ラーメンを見るなり「どうやって食べるのですか?」と聞いてきた。ラーメンを作ろうにも、アメリカにはどんぶり鉢がなかったのだった。

 昭和45年7月、突如松本は7人の若手社員の一人として社長に呼び出される。安藤が彼らに命じたのは容器に入ったラーメン、カップラーメンの開発であった。

 

 早速松本はめんの開発を始める。しかしここで大きな問題が起こる。普通のラーメンよりも厚みのあるカップめんは、乾燥のために揚げた時に、中まで火が通らないのだった。

 昭和45年、従業員は既に450人に減少していた。しかし松本のめんの開発はまだ難航していた。松本はテストのためのめんの試食を繰り返す日々を送っていた。毎日20食ものラーメンを試食する彼は、新婚の妻の手料理を食べる余裕さえなくなっていた。

 一方、プロジェクトの一人・大野一夫はラーメン開発に気が乗らない毎日を送っていた。大学で生物化学を学んだ彼は、ラーメン開発に興味はなかった。ある日、彼は社長に呼ばれ、ラーメンに入れる具の開発を命じられる。「具の開発なんて薬の開発に比べると子供だましだ」軽く考える彼であったが、いざ具探しを始めると適当な具はどこにもなかった。彼は必死で具の乾燥方法を調べ、フリーズドライの手法に行き着く。大野はいろいろな野菜を試した挙げ句、ピーマンの乾燥に成功する。しかしピーマンは好き嫌いが多いということで、没になる。その時に安藤が言う「日本人が喜ぶ具は海老だ。」大野の海老探しが始まる。しかし乾燥したらボロボロになったり、色が悪くなったりなど、大野の要求にかなうエビはなかなか見つからなかった。

 

 一方、麺の開発に行き詰まっていた松本だが、社長の安藤の「天ぷらのあげ方が参考にならないか」のアドバイスで、麺を一割減らすことで中まで揚げることに成功する。

 やっと試作品が出来上がり、売り込みのための問屋回りが始まる。しかしどこの問屋もほとんど相手にしてくれない。しかも持ち込んだある大手商社では「こんなものは絶対に売れない」とまで断言される。開発メンバーに失望が走る。(最初の頃のカップヌードルは、確かに異様な印象を受けたので、「これは食べ物か?」という問屋の感想は正直なところだろうと思う)

 その頃、大野はやっと要求にかなう海老を見つけることに成功していた。こうしてカップ麺の製造が開始される。

 販売ルートの開拓は、営業きってのセールスマン・秋山晃久に委ねられた。彼は飛び込みで営業を続ける。球場などで売り込みを行うもののうまくいかない。夜になってがっかりした秋山が気づいたのは、都会には夜にも働いている者がいることだった。秋山はカップ麺を消防署や工事現場、夜勤の看護婦などのところに持ち込む。彼らはカップ麺を受け入れた。
 ここで安藤は大勝負を賭ける。銀座で一日に二万食を売り切る空前の街頭販売作戦を仕掛けたのだ。この大博打は成功し、カップ麺は日本人の食生活を変える

 

 今や残業サラリーマンの定番であるところのカップラーメンの物語である。確かにこの食品は定着にはかなり苦労したということは私も聞いている(しかも初期のカップヌードルは、今よりも随分まずかった)。この番組では銀座の街頭販売が成功のきっかけであるという構成になっているが、実は私が聞いたカップヌードル定着の鍵は、この番組にも少しだけ出てきたが、浅間山荘を取り囲む警官隊がカップヌードルを食べていたことであるとのことである。あの時は日本中がテレビに釘付けになっていたので、かなりの宣伝効果になっただろうと思われる。

 ところでうちのアンケートでも浅間山荘はトップなのだが、いつになったらこの番組で扱うのだろうか? ただ今回、浅間山荘の話がチラッと出てきたところから見ると、NHKのパターンとしては、近日中に登場する可能性は高いのではないかと考えるのだが(近く扱うテーマを予告編的にチラッと登場させるパターンはNHKの番組には多い。例えば「その時、歴史が動いた」で、三国志のスペシャルの前に、白村江の戦いのところで三国志の映像をチラチラ出したり)。

 ところで最近コスプレづいている国井氏は、今回はなんとラーメン屋の親父で登場。しかし彼はなぜ漁師や建設作業員など肉体労働系の衣装がこんなに似合うのだろうか?(笑)。多分NHKで一番、ゴム長とはちまきの似合う親父である。

 

 以上、当時のアーカイブ。なおカップヌードルが一躍脚光を浴びたのは「浅間山荘」というのは有名な話で、私はこの時に「近日中に浅間山荘の話が登場するのでは」と予想しているのだが、実際にこの予想は当たり、翌年の1/8に浅間山荘のエピソードが登場している。なお上の文章中にある「うちのアンケート」というのは、当時の私のHPでは「これをプロジェクトXのネタにして欲しい」というアンケートを行っており、そこでは浅間山荘はぶっちぎりの一位だったことを指している。恐らく今回のリストア版でもいずれ登場するだろう。

 なおこの「浅間山荘」が実際にこの番組の一つのピークでもあり、その後のこの番組はさすがにネタ切れ感がかなり濃厚に漂うようになり、段々と長期低落の方向に向かい始める。その挙げ句に番組スタッフが取材先と癒着したとか、やらせとかの不祥事なども発生して、ついにはこの番組も終了を迎えることになる。

 次回は富士自動車の「てんとう虫」とのことであるが、今後リストア版で登場しそうなネタとしては、上記の「浅間山荘」はほぼ確実として(最終回に来るのではと思っている)、後は「伏見工業ラグビー部」辺りだろうか。それ以外では「クォーツ時計」「デジタルカメラ」「首里城」「電気炊飯器」「液晶」辺りが登場する可能性があるかもというのが私の予想。

 

次回のプロジェクトX

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前回のプロジェクトX

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