教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/13 サイエンスZERO「誕生!若きAI社長 全国高専ディープラーニングコンテスト」

高専生の起業アイディアコンテストの第2回

 昨年に実施した高専生がAI技術などを利用した新規事業を提案し、それをベンチャー投資家に評価してもらい「いくらのビジネスになるか」を競うという企画の第2回である。内容的に単に技術力ではなく、いかにビジネスとなるかをアピール出来るかがポイントとなる。

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 最初に登場するのは香川高専(詫間)のミニトマトを選果するというシステム。選果作業は農家が一番手間がかかるところなので省力化につながるとか。現在も選果用の装置はあるが、安いものは精度が低く、精度が高いものは高くて農家には手が出ないということで、その隙間を狙ったビジネス。

 福井工業高専はコンクリートなどの老朽化を調べる打音検査で、ハンマーに取り付けるタイプの機器でデータを集め、打音だけでコンクリートに異常がある可能性を判別するという機器。コンクリートを扱う会社などにも協力してもらったという力の入った企画。

 鳥羽商船高専は地元の海苔養殖などのために、天候などのデータから潮位を予測するシステム。潮位は場所によって異なったりするから、それを正確に予測するというのはニーズがあるらしい。プレゼンには地元漁師の「実用化されたら導入したいです」という声まで入っているアピールぶり。

 沖縄高専は車椅子に地元のダンスの機能をつけたり、沖縄方言でも動くようにするという老人が喜ぶ企画・・・なんだが、どうも対象がはっきりしないと思っていたら、残念ながら投資家の面々も投資したいと札を上げる方が0という悲しい結果に。司会のヒャダイン氏なんかは「そのやさしい心が好き」というようなことを言っていたが、ビジネスはシビアである。

 

昨年の1位はこの春に起業した模様

 で、途中で報告が入るのだが、前回に1位になった東京工業高専の、文書を撮影すると展示に変換するというシステムがついに今年の4月に起業に至ったそうだ。さすがに起業となるとリスクなども考えたそうだが、メンターの方の「賞金の100万円で起業して、そこから追加投資なんかをしなかったら借金はできないからノーリスク」というアドバイスで決断したとか。彼らのビジネスが軌道に乗るかは未知数だが、起業経験は若い彼らには間違いなくプラスにはなるだろう。代表の方が出演していたが、その話しぶりは高専生ではなくてもう既に立派な起業家になっていた。

 後半はその他をザッと並べてになっている。

 沼津高専は水やりのタイミングを教えてくれるプログラム。石川高専はスマートスピーカーをぬいぐるみに仕込んだコミュニケーションツール。長岡高専は錦鯉の稚魚の模様を見て、将来高くなりそうな鯉を選別するシステム。北九州高専は歩行を補助する装置にカメラを入れて、点字ブロックから視覚障害者が離れないためのシステム。一関高専は運転中に居眠りしたら足の裏に振動を与えて目覚ましするシステム。旭川高専はゴーグルでトマトの糖度などが一発で分かるシステム。

 以上の中から投資家達が企業価値を判断。結果は3位は北九州高専の視覚障害者を誘導するシステム。視覚障害者以外への活用なども期待とのこと。2位は鳥羽商船高専の水位予測システム。ノリだけでなく牡蠣やタイの養殖でアジアを目指すというビジョンが評価されたという。そして1位は福井高専の打音システム。企業評価額は6億円と昨年の1位の5億を超えた。ハンマーを選ばずに対応範囲が広いのが評価されたという。


 以上、高専生の起業アピールだが、技術的なところはともかく、ビジネスとしてのビジョンがすごいなというのが毎回感じさせられるところ。1位の打音検査なんて、これからのインフラの老朽化時代には絶対に需要のあるところだからニーズはある。ハンマーが学習してくれることで、経験による職人芸が不要になれば、新人でも直ちに戦力になるわけだから現場としては大きいだろう。またこのシステムをロボットなどと組み合わせて、自動打音検査システムなんかを作れないかなんて考えるところである。

 

忙しい方のための今回の要点

・高専生が新技術を使ったビジネスモデルを提案し、それをベンチャー投資家が評価するDCONの第2回が開催された。なお第1回で優勝した写真から点字を作り出すシステムは企業化されたらしい。
・今回の3位は視覚障害者が点字ブロックから外れないようするシステム。2位は海苔養殖などのために水位を予測するシステム。1位はハンマーに取り付けることで打音検査のと気にコンクリートの不良の可能性を判別するシステムだった。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあとにかく「起業が非常に少ない」と言われる日本ですから、高専生にこういうスピリットを教育するのは有効だと思います。とにかく新事業が出てこないと、旧来の事業が急速に失墜している現在の日本は、将来的に仕事がなくなる恐れもありますので。

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