教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/16 NHK ガッテン「最新科学で迫る!不思議☆発見"おまじない"の世界」

医療の世界で用いられる「おまじない」

 何やらいろいろと怪しげなおまじないをする人もいるが、このおまじないが医学の世界でも使用されているという・・・と言ってもいわゆる「プラセボ」の話。しかし実際に医学の世界ではよく使用されており、例えば痛み止めの薬などは一度服用すると時間を置く必要がある。しかし患者が途中で苦痛を訴えることがあるので、そんな時に「痛み止めです」とただの乳糖の粉末を渡したら、それだけで患者の痛みかが和らいだのだという。実際に看護師352人に聞いたところ、86%がプラセボを使用したことがあるという。

 中にはもっと劇的なアンビリバボーな効果のあった例まであるという。アメリカではパーキンソン病の動けなかった患者の症状が和らいで歩けるようになったとか、脊椎を骨折した女性に「脊椎にセメントを注入する手術をした」と言って実は何もしなかったのに、それまで激痛で動けなかった彼女が、ゴルフまでできるようになったとか、およそ信じがたいような例まで存在するらしい。もっともあくまで効果は一時的なもので、病気自体が治るわけではないので彼らはその後に適切な医療を受けたとのことだが。

 

効果にはまだまだ分からない部分も多い

 通常はプラセボは患者本人は薬だと信じている場合であるが、中に患者本人が偽薬であるということを分かっていても効果がある場合があると言う。交通事故による脊椎損傷で全身の強い痛みや吐き気に苦しめられていた女性。長年6種もの薬を飲んでいたが、薬の副作用などで大変だったという。しかし事故から6年、インターネットで見つけた偽薬(薬のように見えるがただのデンプンのタブレット)を購入して試してみたところ、薬を飲んだように効果があったのだという。結局は医師と相談して6種類の薬を1種類に減らすことになったという。

 なおプラセボが効くかどうかは人によるし、場合によってはプラセボにもかかわらず副作用が出たなんて例もあるとか。なおこのプラセボ効果を悪用してインチキ薬やグッズを販売する例があるので要注意である。この手はダマされた者が宣伝に荷担してしまうこともあるのでタチが悪い。

 

トシ伝説を使用しての実験

 プラセボ効果のメカニズムには謎も多いのだが、番組では面白い実験をやっている。それは現在SNSでタカアンドトシのトシの写真を見ると生理痛が和らぐという「伝説」があるらしい。実際に彼の写真をお守りとしてスマホに入れている女性もいるとか。

 ではこの時に脳で何が起こっているかをファンクショナルMRIで調べたところ、側坐核が反応していることが判明したという。ここが活性化することで、痛みに関連する脳が活性化してオピオイドと呼ばれる強い鎮痛物質(別名脳内モルヒネ)が分泌されるという。なおアメリカの専門家に話を聞いたところ「期待感を持ったことで起こる効果」なのだという。実際に例の伝説を全く知らない女性の場合、側坐核は全く反応しなかったという。

 信じる者は救われるというところか。もっとも信じる者はダマされるとも言うので要注意。ちなみに私はトシの顔を見ても何も起きませんが、菅の顔を見ると頭痛が起きます。

 最後はNASAでプロジェクトの成功を祈る時にはみんなでピーナッツを食べるとうおまじないと、歯ぎしりで困る人が寝る前に「唇は閉じて歯は話す」と20回唱えると歯ぎしりが減るというおまじないを紹介。最後は「よく寝てたね」という類いの言葉をかけると、相手の集中度が上がるというおまじない。寝起きが悪いというお嬢さん(なかなか可愛い子です)がこの言葉で目が覚めるそうな。

 

 以上、今回はおまじないについて。要は信じることによって脳内で何かが起こるのだろうが、その詳細はまだ不明な部分が多いということである。どうも教祖の類いが起こす「奇跡」なるものも、こういうのが影響している可能性がある(もっとも実際はサクラを使ったやらせが大半のようだが)。

 また逆に何かが気になり出すとそればかりが頭を占めてしまうということもあるのが人間。どうにも難しいものである。すべては未だ解明されていない脳内のメカニズムに関わっているのだろう。今後の研究の発展に期待。

 

忙しい方のための今回の要点

・医療の世界でもプラセボと言って、効果のないはずの偽薬を使って患者の痛みを和らげるなどといったことがなされている。
・プラセボの効果は人によるのだが、中には病気で歩けなかったはずの人が歩けるようになったなどといういささか信じがたい話も存在する。
・もっとも本当に病気を治すと言うよりは、苦痛を和らげるなどの効果であるので、病気を治すには本当の治療が必要である。
・プラセボは一般的に患者はそれが本物の薬と信じている場合が多いが、中にはプラセボであることが分かっていても効果のある例もあるという。
・プラセボの効果を解明するべく、タカアンドトシのトシの写真を見ると生理痛が和らぐという「伝説」を使って、その時の脳内の働きを調べたところ、側坐核が働いていることが判明したという。
・側坐核が働くことで脳内モルヒネとも呼ばれるオピオイドが分泌されているのではないかとしている。なおこのような効果は「効果があるはずだ」と期待することで生じているという。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ所詮は「おまじない」ですから、過剰に期待しすぎるのはやめた方が良いです。もっともこの手の効果は薬だけでなく、飲食店なども口コミ評価などで「美味しいはずだ」と思い込んでいたら、さして美味しくない料理を美味しいと感じることもあるようで。だから店の方も金を払ってでもやらせ高評価を得ようとするのだが。

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