教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

7/7 NHK ガッテン「筋力☆血圧☆中性脂肪 日常の"逆"にひそむ驚き健康パワー」

90才の女性が歩けるようになった逆トレとは

 番組に登場するのは90才の女性。足腰が弱って椅子から立ち上がるのも一苦労で、立っていることがツラくなっていたという。しかし彼女があるトレーニングをしたところ、椅子からの立ち上がりを30秒で15回も出来るようになり、さっさと歩けるほどに足腰が強くなった。この彼女が行ったトレーニングは本人曰く「楽だった」とのことなんだが、このトレーニングこそがまさに逆トレーニングなのだという。

 ここで階段の上り下りではどちらが股の筋肉が強化されるかを調べた実験がある。その結果、階段の下りの方が圧倒的に筋肉の強化が大きいという結果が出た。しかもそれだけでなくも血圧低下効果や中性脂肪減少効果なども軒並み下りの時の方が大きかったのだという。しかし一般的には階段は上りの方がキツいという印象があるし、実際に息が上がるのは上る時である。これはどういうことかというのが今回のポイント。

 実は冒頭の彼女が行ったのも「椅子に座る」というトレーニングだった。果たして椅子に座るだけで筋力が鍛えられるのか? こう聞くと甚だ疑問を感じるところだろうが、実はここに大きな仕掛けがあるのである。

 

逆トレが効果を上げるポイント

 そのポイントは実際に筋肉の状態を見れば分かる。番組では筋肉が動いた時に発する音なる奇妙なものを使ってそれを明らかにしている。まずはダンベルを握った腕を曲げる時、この時には非常に低い激しい音が出て、筋肉が働いていることを示している。ではこの腕をスッと伸ばすと音は全くしない。つまり伸ばす時には筋肉は働いていない。この状態では全くトレーニングにならないのだが、ここで一工夫加えると筋肉がバリバリと曲げる時以上の激しい音を出す。それは「ゆっくり」行うと言うこと。先ほどの女性も5秒かけてゆっくり椅子に座るという運動を行ったのだという。

 この逆トレが効果を上げる理由であるが、例えばダンベルを上げようとした時は筋肉は縮む刺激で鍛えられるのであるが、ダンベルをおろす時は筋肉は縮もうとしつつ伸びるという形になるのでより強烈な負荷がかかるので筋肉が鍛えられるのだという。

 しかしこれだとよりしんどそうなのだが、そうでないところにポイントがある。ダンベルを上げる時には脳が「これは負荷が大きいから筋肉をフルに働かさないと」と多くの筋肉を動かすのに対し、下ろす時は「これは楽だから筋肉の一部で十分」と一部の筋肉しか動かさないのだという。そのために酸素消費量も減るし心拍数も上がらない。つまりは楽に出来るのだという。しかも少ない筋肉に負荷が集中するために筋肉を大きくする物質がより活性化されて筋肉増強効果が増すのだという。

 

ボディビルの世界でも取り入れられている逆トレ

 実はこのトレーニング法は既にエキセントリックトレーニングと名付けられ、筋肉のプロことボディビルダーなどの間でも既に使用されているという。このトレーニングの場合、ダンベルを上げるのではなく、ダンベルをゆっくりと下ろすのだという。そして再び上げる時は人に手伝ってもらい、そこからまたゆっくりと下ろすを繰り返す。

 家庭でこの運動をしようとする場合は、普通に椅子に座ろうとする時に、ゆっくりと5秒ぐらいかけて座ることを心がけるだけで良いという。目安は1日に20回ぐらいとのこと。なおひざが悪いとか腰が悪いとかの問題がある人は、する前に医師に相談というのは毎度のようにNHKらしいアリバイ作りです(笑)。

 さらに番組ではこれを若者4人が逆懸垂のトレーニングをすることで懸垂が出来るようになるかという実験を行っている。逆懸垂とは踏み台を使って鉄棒からぶら下がり、そこからゆっくりと身体を下ろすと、再び踏み台を使ってぶら下がってもう一回というのを繰り返すトレーニング。三週間のトレーニングの結果、男声陣は軒並み懸垂回数が増加。女性陣は懸垂はまだ出来なかったものの、最初の時よりは明らかに身体が上がるようになったという結果に。

 

リハビリにも使用出来る逆トレ

 最後は逆の動きがさらに広い影響を与えるという話。全身の筋肉の動きを見た時、ダンベルを下ろすという動作をした時、反対側の脇腹などの筋肉も動いているということが分かったとか。このことから逆トレが体幹運動になる可能性が指摘されているという。

 さらにはリハビリ効果もある。左腕をギブスで固定し、右腕で逆トレを行った場合、トレーニングをしていなかった左腕まで筋力増加がされることが判明したという。これは身体が動かなくなった時のリハビリなどにも使用出来るのではと注目されているという。

 

 今回は逆トレの紹介。ちなみにゲストの榊原郁恵氏が「山登りの時、下りの方が足が痛くなるので効果が強いのでは」という類いの事を言っていたが、これは本格的な山登りの経験がある人ならよく感じることです。私も山城巡りの時、明らかに下りの方がダメージが強かったのを覚えています。下りの方が筋肉にとってはキツいので、後で実は足腰に痛みが来やすいので、下りこそ要注意というのは鉄則です。

 内容的にはまずまず興味深かったところ。なお番組自体がどうも内容が散漫的というか、説明をしようとすると回りくどいところなどがありましたので、上記の私の内容紹介はいささか番組の放送とは内容が前後しているところがあります。内容を整理して理解しようとしたら、この順序の方が理解しやすかったと言うことです。

 

忙しい方のための今回の要点

・階段上りと下りを比べると、下りの方が楽に思えるのであるが、実は足の筋力増加効果が高いのは下りである。このような鍛える方向と逆の運動をすることを番組では逆トレと名付けている。
・逆トレのポイントは「ゆっくり」行うこと。ゆっくり伸ばすことで筋肉は縮みつつ伸びるという運動になるので負荷が大きくなり、筋肉増強効果が増すのだという。
・またこの時に脳は負荷が少ないと判断しているので、筋肉は一部しか動かないことから、余計に効果は強くなるので、酸素消費量などは少ないので身体としては楽なのだとか。
・この運動はエキセントリックトレーニングと言って、既にボディビルの世界などでも取り入れられているという。
・なおこの逆トレは、体幹の筋肉などにも作用することから体幹トレーニングに効くのではとされており、また片手を鍛えることで反対の手にまで影響が及ぶので、リハビリの効果も期待されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・今回の内容はまずまず良かったのですが、いざまとめようとするとなぜかそのままではまとめにくかったんですよね。こういうことで番組の表現が回りくどいことに気づくことが今まで数回ありました。変に気を持たせようという民放的な下品な作りになってきているような気がします。

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