世界で最も美しい海岸
イタリアのアマルフィ海岸は、海岸線に沿っていくつも小さな町が海まで迫る山の斜面にへばりつくように散在している。ここは世界で一番美しい海岸とも言われている。
アマルフィ海岸はナポリのすぐ南のソレント半島の南側に連なる海岸線である。海岸線の長さは30キロほど。その中の断崖に隠れるように小さな町がいくつもある。中世にはこれらの都市が海洋国家アマルフィ共和国を結成していた。限られた土地の急斜面や断崖上に建物を築いて都市を形成した。現在は人気のリゾートとなっている。
迷路のような町に神々の道
まるで隠れ家のような奥まった湾にあるビーチは、海からしかアクセスできなかったために、かつては罪人を閉じ込めるのにも使われたという。現在はプライベートビーチである。
中心都市のアマルフィは起伏に合わせて建物がビッシリと並び、町の中はまるで迷路のようである。現在の大通りはかつての川に蓋をして作ったものだという。迷路のような階段を使って住民は生活している。ここにある大聖堂はイスラム風のタイル装飾がなされており、その内部は非常に豪華である。
この地はかつては嵐を避けて山の中に集落が作られた。段々畑や牧畜で人々は暮らしていた。これらの村々を行き来するための断崖上の道が神々の道と呼ばれ、今では人気のトレッキングコースとなっている(崖にへばりつくような道で高所恐怖症の私には悪夢だが)。神話の英雄オデッセウスが危機に陥った時、神々がこの道を通って救援に来たことから神々の道なのだという。山間の段々畑ではレモンが栽培され、この地の名産のリキュールが生産されている。
造船や製紙技術で繁栄した古代のリゾート地
アマルフィの山奥には製鉄所跡の廃墟が存在する。渓流沿いにある製鉄所では水車でふいごを動かして炉を高温にして、大型の釘などを生産していたという。この渓流が海に注ぐ位置がアマルフィである。町中にはかつての巨大な造船所の跡も残る。ここで高度な造船技術で巨大なガレー船を製造していたという。
また交易の中、アラブから紙造り技術がもたらされた。水車で繊維をつぶして手漉きの紙を作った。これはバチカンの文書にも使用されたという。かつては16もの製紙工場が存在したという。
アマルフィ海岸は古代ローマ時代からリゾート地だった。ポジターノの教会の地下からローマ時代の別荘の跡が見つかり、カラフルな壁画がそのまま発見された。ミノーリでも古代ローマ時代の別荘の跡が残っている。ローマの貴族のものであったという。そして今もこの地は世界中の人々を魅了している。
忙しい方のための今回の要点
・イタリアのアマルフィ海岸は海岸沿いに都市が点在する世界で最も美しい海岸と言われている。
・これらの都市は斜面にへばりつくように建物が建てられており、都市の内部は迷路のようになっている。かつてはこれらの都市が海洋国家アマルフィ共和国を結成していた。
・この地の最初の集落は嵐を避けて山の奥に作られており、これらの村々をつないだ断崖の道は神々の道と呼ばれ、今ではトレッキングコースとして人気を博している。
・また山奥では製鉄所が作られ、造船所では巨大なガレー船が製造されていた。さらに多くの製紙工場も存在したという。
・この地は古代ローマ時代からリゾート地であり、当時の別荘の跡も発見されている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・それにしても美しい町ですね。いかにも異国情緒満載で。もっとも気になったのは、大規模な火災でも起こったら一発ではないかということですが、建物が石造りだから日本のような大火にはならないのかな。
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