実は若者に多いリウマチ
実に長い夏休みを明けてようやくガッテンが復活です。最近はネタ切れやら制作費の削減とかもあるのかもしれないが、とにかく放送回数が減っています。数年前から夏休み取るのが多くなりましたが、それにしても今回はオリパラの影響もあって完全に2ヶ月近く放送休みですから、「あっ、まだやってたの」って雰囲気もあります。
さて今回のテーマですが、メジャーな間接病であるが、老人がなる病気というイメージのあるリウマチ。しかし実際には若者も発症する上に、しかもその確率はかなり高いという事実から始まります。実際に患者に「何歳の時に発症したか」を調査したところ、40代がピークで、50代、30代もかなり多く、20代が60代とほぼ同じぐらいという一般のイメージとかなり異なる結果が出ている。
番組でも20代、30代で発症した患者の証言が登場する。24才の男性はサッカーの好きなスポーツマンだったのだが、最初にひざの痛みが出始めて、次に足の小指などが痛くなりだして、ついには歩くのも苦労するような状態になってしまった。25才の女性は手の関節に痛みが出て、髪を自分でとかすことさえ出来なくなってしまったという。31才の男性は最初は足の指の関節の違和感だったのだが、3ヶ月後にレントゲンを撮ると足の関節の骨が溶けていた。その後、全身の関節に痛みが出始めて仕事や育児などに支障が出るようになり追い詰められたという。
さらに登場するのが23才のユーチューバーの女性。彼女は自分が関節リウマチを患っていることを発表したという。高校2年の時に発症して指の関節が歪んでしまっており、調子の悪い時は痛みの出ることもあるとか。若い人もリウマチの危険があるということをアピールしたいと発表に踏み切ったとのこと。
免疫系の暴走で関節が破壊される
関節リウマチが進行すると関節が破壊されてしまうので、患者は生活に苦労することになる。番組では14年前の放送に登場した女性の例が紹介されるが、29才で発症して当時45才の彼女は、手が上手く使えないので水道をひねるだけでも補助器具が必要だし、大根を切ったり洗濯物を干すだけでも一苦労とかなり家事が困難になっている。
関節リウマチがどのような病気であるかだが、これは自己免疫疾患の一種である。本来は外敵を攻撃するための免疫細胞が、体内で変異を起こしたタンパク質を異物と認識して攻撃することから始まるという。関節リウマチの患者はなぜかこの変異タンパク質が作られやすいために免疫反応が暴走、これが炎症を起こして痛みにつながり、さらに免疫細胞が合体して破骨細胞となることで骨の破壊まで始めるのだという。現在のところ、患者数は全国で70万人以上だという。そして女性が8割なのだが、原因はまだ不明である。
寛解に持ち込むための治療と、最大のポイントである早期発見
目下のところ、完治させる方法は見つかっていないが、寛解させる方法はあるという。寛解とは病状の進行が止まって生活に支障のないレベルにまで病状が抑えられる状態である。つまり、適切な治療を続行すれば日常生活に支障が無くなるので、完治ではないが病気が完全に征圧された状態ということである。この寛解の割合が2000年には8.4%に過ぎなかったのだが、2020年には61.2%にまで向上している。これはこの間に新しい薬が登場したのが大きいという。実際に最初に登場した3人も、現在は治療によって完全に普通の生活が送れるようになっている。なお寛解できるかどうかは早期発見にかかっているという。リウマチが見つかったのが遅れて関節の破壊が進んでしまうと寛解は難しくなる。リウマチの進行は人によって様々だが、中には数ヶ月で関節が破壊されてしまう例もあるので、早期発見の重要性が高いという。
ただこの初期症状が分かりにくいという。筋肉痛だと思ったという証言を先の患者も行っている。しかしリウマチ固有の症状としては、朝起きると関節がこわばるが、しばらくすると楽になる。さらに複数の関節が腫れ(左右対称に出やすいという)、触るとブヨブヨしている。これは滑膜の炎症のためだという。この二つの症状が出たら専門医にかかるべきだという。かつてはステロイドなどの痛みを抑える対象療法のみで病気の進行を抑えることが出来なかったが、1999年に免疫抑制剤、さらに2003年には生物学的製剤が登場したことで進行の抑制が出来るようになったという。ただしこの生物学的製剤は価格が高い(保険適用にもかかわらず3万円以上)という問題があるとのこと。
またこのような治療法の進歩は、全国に3000人いるという小児リウマチの患者にとっても朗報となっているという。番組には実際に5才で小児リウマチを患っての入院生活から治療によって普通に生活できるようになった男性の証言が出ている。
以上、早期発見が重要であるが、年寄りの病気というイメージがあるがゆえに若者が初期症状を見逃す危険があるということで、この機会にアピールしたという例によって実用的な内容。また病気の怖さを煽るだけだとよろしくないが、そこに寛解に持ち込める良い薬が登場しているという明るいニュースもあるということがポイントである。
さて夏休み明けで次回は「ぶどう」とのことなんだが、この番組も今や完全に病気と食品だけになってしまった。本来はもっと身近な現象について科学の目で見るという番組だったのだが、視聴者にアピールが強いのがこのジャンルだけなのか、さらに言えばスタッフが番組の作り方を思いつくのがこのジャンルだけなのか。しかしここまでジャンルが偏ってしまったら、ネタが無くなってだんだんと番組の放送数が減ってくると言うのも仕方ないような気がする。正直なところ私は、NHKのこの手の身近な科学もののシリーズでは、雨の日の濡れにくい歩き方とかを紹介していた時代が懐かしいのだが。「所さんの目がテン」が結構そういう視点を持っている番組だったのだが、今はあっちもダッシュ村・・・でなくて科学の里ばかりやってるし。
忙しい方のための今回の要点
・一般的に老人の病気と思われがちなリウマチであるが、実は発症者のピークは40代で、20代で発症する人もかなり多い。
・リウマチは自己免疫疾患で、免疫系の暴走による炎症が痛みを起こし、さらに暴走した免疫系が骨を破壊してしまうので関節が変形してしまう。
・現在は良い薬が出来ているので、病気の進行を抑えて日常生活に支障が出ないようにする寛解に持ち込める場合が多い。ただし重要なのは病気の早期発見で、治療が遅れて関節の変形が進んでしまうと寛解が困難となる。
・リウマチの初期症状は、朝に関節のこわばりが出るがしばらく経つと楽になる。複数の関節が腫れ(左右対称に出やすい)て、触ってみるとブヨブヨしている。これらの症状がある場合には専門医の診断を。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・リウマチと言えば、ルノワールが晩年に患ったことで有名。晩年の彼は指の関節が歪んでしまった腕に、絵筆を縛り付けて絵を描いたとか。
・とりあえず完治できなくても、治療を継続することで病気の進行と症状をなくせれば治ったのと同じというのが寛解の考え方です。現在、多くの病気がこの寛解に持ち込もうという研究が進んでます。かつては不治と言われた病気でも、今では寛解に持ち込めるものは増えてます。
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