教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

10/3 サイエンスZERO「火山島"西之島"大噴火は何を語る!?」

活発な火山活動を続ける西之島の近況報告

 今回はこの番組で継続的に状況を追っている西之島について。西之島は昨年大噴火を起こし、島の形状が大きく変化したという。この西之島から何が分かるか。この島を継続して観測している火山学者の田村芳彦氏に話を聞いている。

 まず田村氏によると、リアルタイムで火山の成長というのを観測できる機会は滅多にないので、ワクワクして興味津々なのだという。

 2015年に2キロ程度になった西之島だが、昨年に大噴火が発生して島の形状が大きく変化、現在は最初の面積の20倍に成長したという。田村氏によると成長期に入ったという。

 

 

西之島が示す大陸の生い立ち

 西之島を見ると、地球上にどうやって大陸が産まれたかが分かるという。46億年前の誕生したばかりの地球は、地表はすべてマグマで覆われたマグマオーシャンだったという。45億年前に大気中の水蒸気が雨となって何万年も降り注ぎ、地球全体が深海となったという。この地球で海底火山が大陸誕生に働くのだが、どのような岩石を出すかがポイントだという。陸地は比重の軽い安山岩で出来る必要があり、比重の高い玄武岩は海底になるという。だが今までの海底火山の調査では玄武岩しか発見できなかったという。

 しかし2015年に西之島の岩石を無人ヘリで採取したところ、安山岩が出ていることが確認されたという。伊豆大島は玄武岩なのに、西之島で安山岩が産出したのは、西之島の地下は地殻の厚さが薄いためにマグマが比較的浅い位置で出来たので、温度や圧力が低いので安山岩となったと推測されるという。やがてこの安山岩がプレートで運ばれて大陸の一部になるという。

 

 

今後の西之島

 2019年12月~2020年8月にかけて西之島では最大級の噴火が発生したが、昨年の冬に調査したところ、島の表面は一面火山灰で覆われ、山容も一変していた。山の体積が6倍にもなったという。さらに海底を調査したところ、火山から飛び散った岩石として玄武岩と軽石である流紋岩が発見されたという。さらに海底に玄武岩と軽石の交互の層が発見されたという。この地層の誕生のメカニズムとして田村氏が推測するのは、安山岩のマグマ溜まりの奥に玄武岩のマグマ溜まりが発生し、これが安山岩を絞り出しながら自身も吹き出し、その時に高温で周囲を溶かして軽石が生成、そしてそれを巻き込んで縞模様の地層となったのではという。

 さらにこのような地層は海底カルデラの周囲で発見されやすいことから、西之島が巨大なカルデラ噴火をする可能性があると田村氏は見ている。日本には83個もカルデラがあり、実はカルデラ噴火は日本周辺ではそう珍しいわけではないという。なお西之島でカルデラ噴火が発生したら、津波は父島に届き、火山灰は日本にまで達するかもとのこと。

 

 

 何にせよ火山学者には興味は尽きないところだろうが、全くの門外漢としては「西之島がカルデラ噴火でぶっ飛んで海に沈んだら、日本の領土が少し減るな。」というのが一番に頭に浮かびます。逆にカルデラで巨大な島になったら領土が増えますが、当分は誰も近づけない無人島でしょう。恐らく噴火が安定したら、火山学者だけでなくて、生物学者なんかの出番もあるような気がします。

忙しい方のための今回の要点

・火山活動を続ける西之島の近況について報告。
・西之島では2019年12月に最大の噴火を起こし、それによって島の様子が一変したという。
・西之島の溶岩は安山岩の溶岩であったのだが、今回の噴火では玄武岩や軽石も発見されたという。
・このことから、地下で安山岩のマグマ溜まりの下に、玄武岩のマグマ溜まりが発生してこれが安山岩を押し出しながら自身も吹き出したと火山学者の田村氏は推測している。
・さらに田村氏の推測では、西之島が今後に巨大なカルデラ噴火を起こす可能性があるという。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあ火山などの活動の歴史は人間のタイムスパンと桁が違うので、私が生きている間に結論が出ることはないでしょう。実際に地形図に影響が出るのは、少なくともン万年後ぐらいの話でしょう。

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