教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/22 テレ東系 ガイアの夜明け「再出発助けます!実は家も仕事もない…隠れホームレス急増」

仕事と住宅をなくした人に住み込み仕事を紹介する会社

 コロナ禍で経済が混乱する中、仕事と住む場所をなくして明日の生活にも困る人が増えているという。そんな中でそのような人たちに寮付きの住み込みで働ける仕事を紹介している会社がある。ここに駆け込む人は切羽詰まっているが、公的支援の存在さえ知らない人が多いという。またネカフェなどに住み着いている隠れホームレスはさらに実態が見えないという。

 この会社リライトを設立したのは28才の市川加奈氏。東京の辺境部の出身という彼女は、東京で住むところにさえ困る人がいる人を目の当たりにして衝撃を受けたという。また仕事がなくて困る人がいる一方で、人手が足りなくて廃業する企業もあることに矛盾を感じていた。そこで両者を結びつけることが出来ればと考えて、2年前に起業したという。

 同社は働くところと住むところを探している人に工場や介護などの寮付きの仕事を紹介し、紹介者がそのまま働き続けていれば1ヶ月後に企業から紹介料をもらうシステムにしているという。それはやはり仕事を紹介したものの、合わなくてやめてしまったり消えてしまったりしてしまう人もいるからだという。番組でももう今日の住むところもないと駆け込んできた男性を追跡していたが、本人の希望で介護の仕事を紹介したが、実際に体験してみるとやはり難しい部分があると体験の後に辞退してしまった。

 その一方で5ヶ月前に同じ施設に紹介した男性は、介護の仕事にやりがいを感じ、今は様々な資格を取るべく勉強しているという。市川氏によれば、やはり切羽詰まっていることで「何でも良い」という状況で職を選んでしまい、実際に始めると思ったのと違ってキツいので続かないということはあるとのこと。だから彼女は就職をした人のアフターフォローも欠かさない。

 その中には調理の現場で働いていたが、パワハラに耐えかねて飛び出してきたという男性もいた。一時は自殺も考えていたという男性だが、市川氏が紹介した会社で給食の調理に携わっている。その内に段々と「いつかは自分の食堂を持ちたい」という過去の夢を思い出してきたという。男性の表情が最初の頃と違ってかなりほぐれていることにホッとする市川氏。

 

 

主婦の独立開業を支援しているさくらや

 一方、シングルマザーなどに1日5時間週4日自宅で開業する仕事を紹介しているのが、制服リユースの「さくらや」。創業者の馬場加奈子氏は2011年に3人の子供を抱えるシングルマザーとしてさくらやを開業したという。それ以来家庭優先で1日5時間週4日の営業を実践しているという。そして6年前からは仲間を募集している。加盟料170万円で開業のノウハウ伝授と開業支援を実施、その後は月9500円の会費のみで独立採算制だという。現在全国に78店舗、売り上げ平均は年間400万円だという。コロナ禍で出店希望者は増加していると言う。

 制服は結構高いのに使う期間が限られていることから、安くあげたいという客が多い。しかし各校ごとに制服の仕様が微妙に違うことから、それらに対応するために馬場氏の直営店では多くの在庫を用意している。こういう細かい対応が必要なことから非常にニッチな市場であり、大手の参入がないことから短い営業時間でもそれに合わせて来客があるので、ビジネスとして成立するのだという。

 また地元の企業などに協力してもらって、制服回収ボックスを設置してもらっているという。店頭で仕入れた制服には代金を払っているが、回収ボックスで集めた制服の代金は、後でまとめて子供の貧困対策基金に寄付しているという。使わない制服を提供することで子供の貧困対策に貢献できるというわけである。

 番組では夫をガンで亡くした女性が、病気のために仕事が出来ない娘と共にさくらやに勝負をかけようとする姿に密着していた。何しろ今まで商売なんてしたことがないので、開店前には馬場氏が訪れて近所に対するビラ配りなどを指導、指導の甲斐あって彼女たちも積極的にビジネスを始め、地元企業に回収ボックスの設置に協力してもらうこともできた。馬場氏によると、むしろ主婦ということを前面に出した方が、主婦同士の共感などから話がしやすくなるという。実際にこの企業と交渉した時も、相手の担当者は主婦でさくらやのシステムに非常に共感してもらって交渉が成立している。こうして開業までこぎ着けた。また病気の娘もビジネスの将来性が見えることで積極性が出て病状も好転している・・・というようなことを言っていたところを見ると、多分メンタル系の病気なんだろうな。

 

 

 以上、ビジネスの観点から貧困者の支えになるという話ですが、中には貧困者をビジネスのダシにする悪質な貧困ビジネスも存在するので要注意(大抵は暴力団の資金源になっている)。一方で本気で貧困者のためになろうとすると、ビジネスとして成立が困難になるというのが現実。実際にリライトの市川氏などは半分はボランティアの雰囲気があり、同社が本当にビジネス的に成立しているんだろうかということが少々気になった。

 後半のさくらやについては、主婦でも取り組める在宅ビジネスというところだが、難しいのはあくまで個人事業主であるということだろう。やはり本気で商売人として取り組まないと、成功するも失敗するも開業者次第なので、やっぱり立地や本人の資質などでは失敗する例もあると思う。またこれからパートナーが増えていったら、商圏が被る可能性などもあり、そうなると余計難しくなる。その辺りを馬場氏がキチンと差配できるかである。

 もっとも制服なんて無駄な支出の最たるものなので、リユースは資源保護の観点からもドンドン進めて欲しい。私が通っていた中学校は生徒を雁字搦めの校則で抑圧することが目的化しているような異常な学校だったので、制服についても細かい仕様をいちいち定めて、親戚のお下がりなど少しでもどこかが違ったら教師が服装検査ではじいて新しい制服を買うように強制していた。つまりはやたらに無駄な支出を強いられるシステムになっていた。あまりにひどいので制服を納入している大丸と学校が癒着しているのではと調べたところ、大丸側にもやたらに無駄な仕様変更を押し付けるので実は大丸からも嫌がられていたという事実が判明、どうやらうちの学校が変態的だったということが明らかとなったということがあった。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・コロナ禍で仕事共に住む場所をなくした人に住み込みで働ける会社を紹介しているのが市川加奈氏が設立したリライト。
・同社には切羽詰まった人が駆け込んで来ることが多い。そういう人に住み込みの工場や介護などの仕事を紹介している。
・しかし仕事が合わなくてやめてしまう人などもいることからアフターフォローは欠かせないという。同社は紹介者が定着したら1ヶ月後に紹介料を企業から受け取ることになっている。
・また制服リユースを行っている「さくらや」は3児を抱えたシングルマザーだった馬場加奈子氏。彼女は家庭を優先して1日5時間週4日開業で成立するビジネスを考えたという。
・現在同社はパートナーを募集しており、加盟料170万円で開業のノウハウなどを伝授、後は月9500円の会費のみで独立採算制だという。
・同社のパートナーに応募してくるのは自宅で開業しようとしているシングルマザーなどが多く、コロナの影響で応募が増加しているという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・うーん、何にせよ、この無慈悲な国で生きていくのは簡単ではないと言うことに尽きる。結局はいざという時にどんな仕事が出来るかということで、正社員も安穏としていられない時代になってきた。しかしいざ考えてみると、普通の会社員って驚くほどにつぶしがきかない。実際に今の日本の企業社会の中で、真面目に働けば働くほど、その会社以外では通用しない人材になっていくというところがあるので。

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