教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/24 TBS系 世界遺産「大西洋の火山島!500年前に消えた謎の文化」

先住民の洞窟住居

 スペイン領カナリア諸島のグラン・カナリア島は青い凝灰岩で出来た火山岩の島である。ここには500年前まで先住民が暮らしており、現在も残る段々畑は先住民のものだという。また溶岩の平らなアクサ大地は先住民の畑であり、ここには先住民の円形の墓が点在する。これらは古いものは1300年前のものだという。


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 また断崖絶壁に多くの洞窟住居が残っている。垂直に切り立ったベンタイガ岩は聖なる山として崇められていたが、この近くの凝灰岩の岩には多くの穴が開けられており、これは先住民の住居だった。1世紀頃からこの島に住み始めた住民が断崖を登って穴を掘って住居とした。彼らは鉄を持たなかったので、これらの穴は石器で作られたと考えられ、かなりの手間がかかっている。また食料は盗まれないようによりさらい高いところに貯蔵された。島には2万~4万の人が暮らした時があり、各地に住居を作った。彼らがこのような断崖に住居を作ったのは、食料を求めての争いがあったので防禦のために断崖に住んだのだという。中でも標高1800メートルのヌブロ岩は聖なる山と崇められていた。

 

 

島の貴重な水源である滝雲

 島は降水量が少なく日本の平均の1/6しかない。この地の農業を支えた水分は、貿易風にのってやって来る雲から得たものだという。季節によって稜線から内陸に落ちてくる滝雲があるが、これが雨が少ない土地の水源となった。

 また洞窟の中からは1500年前のミイラが見つかった。身分の高い人物のものと思われる。彼らは1世紀にアフリカから渡ってきたが、15世紀にスペインの支配によって消滅する。洞窟に籠もって抵抗したものの征服されてしまったのだという(大航海時代のスペインとは実に野蛮な国である)。今でも洞窟住居に手を加えて人が住む地域もあり、中には貸別荘になっているものもあるという。洞窟の中は常に20度前後で過ごしやすいという。

 日頃は封鎖されている神聖なものを崇拝する洞窟には逆三角形の模様がある。これは女性の生殖器を現し、子孫繁栄と豊穣の象徴であるという。さらに上の開口部から入る光が逆三角形に当たることで暦ともなっている季節の把握は農耕民族にとっては重要だったのである。また聖なる山、ベンタイガ岩にも神殿があり、ここにも日時計の仕掛けがあるという。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・スペイン領カナリア諸島のグラン・カナリア島は、500年前までここで居住していた先住民による洞窟住居が多数残っている。
・島での食料を巡る争いからの防禦のために、彼らは垂直な断崖を登って石器で凝灰岩の岩肌を掘って住居を作ったのだという。
・この島は降水量が少ないので、貴重な水分は貿易風に乗ってやって来る雲から得ている。稜線から流れ落ちる滝雲はこの地に水分を与える貴重なものだという。
・ここには1世紀にアフリカから渡ってきた人々が独自の文化を築いたが、15世紀にスペインの侵略によってそれは消滅したという。
・また聖なる洞窟には子孫繁栄と豊穣を象徴する女性器をかたどった逆三角形の印がある。これはここに上の穴から入ってきた光が差すことで、暦の役割も果たしており、農耕民族にとって重要な季節を判別したのだという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・大航海時代のスペイン人というのは、世界中でどれだけ殺戮し、どれだけの文化を滅ぼしたかは分かりません。まあ歴史的に見てもトップクラスの野蛮人でしょう。これはこの時代の歴史の影の部分。この辺りの歴史を調べていたら、ヨーロッパ人の研究者なんかは鬱になりそうになるなどと言います。日本は巻き込まれる前に上手く逃げましたが。
・それしてもいくら軟らかい凝灰岩であっても、石器であれだけの穴を掘るのはとんでもない労力がかかっていると思われます。恐らく何世代もかけて拡張してきた住居なんかもあるんでしょうね。ところで石器にするような硬い石はどうやって入手したんだろう。凝灰岩以外の石も産出するのか?

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