教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/31 TBS系 健康カプセル!ゲンキの時間「経験者から学ぶ!難病との向き合い方」

 医学の進歩がめざましいが、そんな中でも未だに治療の困難な難病は存在する。またそのような難病は事例数が少ないものが多いために、病名に気づくまでに時間がかかってしまうこともある。そこでそのような難病の患者の体験を紹介し、また難病に立ち向かう心構えのようなものまで聞こうという内容。

 

 

サッカー選手を襲った股関節の難病

 まず最初に登場するのは元Jリーガーの望月重良氏。彼はサッカー選手にとって命と言える足に難病を発症したのだという。最初は足の付け根の痛みだったという。しかしサッカー選手は何らかの故障はしょっちゅうなので毎度のことだと考えていたのだという。しかし最初は少し休むと痛みが取れていたのに、段々と痛みが取れにくくなり、ついには股関節の激痛で夜眠れなくなる事態にまで至ったという。

 そして検査で特発性大腿骨頭壊死症という難病であることが判明する。大腿骨頭の血流が悪くなることによって骨が壊死し、それが圧力でつぶれることなどによって痛みが発症するのだという。多くは原因不明だが、アルコールの飲み過ぎやステロイドの大量投与が関連することが多いという。しかし望月氏の場合は原因不明だったという。

 治療法としてはまず保存療法。骨がつぶれないように松葉杖を両方使って生活するなど骨に負担をかけないようにする。しかし壊死が進行していると骨切り術や人工関節置換術などの手術になる。望月氏はもう一度ピッチに立ちたいということで手術を選ばなかったという。そしてピッチに立つためにリハビリに打ち込み、2年後にJ2の試合に出たという。しかしこれで彼は引退し、その後も手術はせずにサッカーチームを立ち上げるなどの仕事を行っている。

 

 

免疫疾患の全身性エリテマトーデス

 次は19歳の時に身体のだるさに襲われたという女性。ストレスが原因かと思っていたのだが、顔に湿疹が出たので病院に行ったところ、全身性エリテマトーデス(SLE)だったのだという。これは免疫疾患の一つで、免疫細胞が自分の細胞を攻撃し始める病気で、あらゆる臓器で障害が起こるという。患者は全国で6万人とのこと。初期症状は身体の怠さや関節痛だが、顔に湿疹が出る蝶形紅斑という症状もあるという。患者は1:9で女性が多く、特に若い女性に多いという。完治は難しいので免疫を抑えるステロイドなどで症状を安定させるのが目的の治療が行われるという。さらには免疫抑制薬や抗マラリア薬、生物学的製剤なども組み合わせるという。16年経って彼女はまだ治療を続けているが、ここ5年ぐらいは症状も安定して仕事も出来ているという。

 彼女は病気を持っていることで「弱い」と見られることが嫌なので、回りには病気のことは言っていないという。病気になったからこそ強い気持ちで前に進むことが出来たと彼女は語っている。

 厚労省が指定している指定難病は333あり、これらは難病法に基づいて医療費助成制度の対象になっている。患者数は94万人とのこと。なお多い順にパーキンソン病が13万人、潰瘍性大腸炎が12万人、全身性エリテマトーデスが6万人となっている(意外と多いなという印象)。なおこの数は申請した診断基準を満たしているある一定の重症度に達している患者数なので、実際の患者数はこれよりもさらに多いだろうという。

 

 

心臓の難病に対する最先端治療法

 最後は心臓の難病に対する最新の治療法について紹介。心臓病の中でも特発性拡張型心筋症は指定難病になっている。これは何らかの原因で心臓の筋肉がダメになることで、収縮力が落ちて働きが悪くなるのだという。息切れや疲れやすさが出て、重症化すると安静時にまで苦しさが出るという。ダメになった心筋は再生しないので、治療法は薬物治療や補助人工心臓治療などがあるが、最終的には完治には心臓移植しかないという。

 この心臓移植の代わりとなる方法として、iPS細胞を使った心筋細胞移植が研究されている。iPS細胞から心筋細胞を作るのだが、今までは心筋細胞以外が混ざるのが難点だったのだが、それらを取り除く技術が開発されたのだという。心筋細胞を1000個ぐらいの心筋球という塊を作り、これを心臓に移植するのだという。するとこれが成長して心臓の機能が再生するのだとか。この秋に治験がスタートするという。

 

 

 以上、難病について。珍しい病気で治療法がないといわれると絶望的な気持ちになるが、それでも生きていくしかないのでなるべく前向きにという話である。また今は治療法がなくとも医学の進歩は急速なのでその内に画期的な治療法が登場する可能性もある。また完治できなくても病状をコントロールできて寛解に持ち込めれば、その状態を死ぬまで保てれば完治と実質的に同じことになるということもある。

 再生医療については今後一番期待したい分野である。今回は心筋細胞が出ていたが、これ以外にも角膜移植とかも行われているし、膵臓の機能を回復して糖尿病を治療するなんていうことも考えられている。最近、老化のせいか記憶力の低下に悩んでいる私の場合など、脳細胞を再生して認知症などを治療できないかなどと考えるが、実際はこれは一番最後まで難しいだろうな。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・難病について実際の患者の話を聞く
・元Jリーガーの望月重良氏が患ったのは特発性大腿骨頭壊死症。大腿骨頭の血流が悪くなることで骨が壊死し、それがつぶれることで痛みが出る病気である。
・治療法は保存療法以外は骨切り法や人工関節置換術だが、望月氏はもう一度ピッチに立つために保存療法を選択、2年後にJ2の試合に出場してから引退した。
・ある女性が19才で発症したのは全身性エリテマトーデス(SLE)。免疫疾患で免疫細胞が自身の細胞を攻撃することであらゆる臓器に障害が出る難病である。初期症状は身体のだるさや関節の痛み。
・完治は出来ないのでストロイドなどで症状を抑える治療がメインとなる。この女性も5年前から症状が安定して仕事が出来るようなったという。
・厚労省が指定する難病は333あり、患者が多いのはパーキンソン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス。
・心筋細胞が機能低下する病気の治療に、iPS細胞から心筋細胞を作って移植する治療法が、この秋に臨床試験が実施される。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・難病に関してはとにかく治療法の研究が重要なのですが、難病の中でも比較的患者の多い病気は研究がされるのですが、患者が数人というような超レアな病気は研究がされないという場合があり、それが結構問題となってます。

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