教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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11/7 サイエンスZERO「暮らしの未来を守る! ミュオグラフィ&培養肉」

 今回は培養肉とミュオグラフィの2本立て。それぞれの話題には関連性は皆無なので、1本で30分にするに足りない小ネタを組み合わせたというところ。

 

 

牛の筋肉細胞を培養してステーキ肉を作る

 まず最初は培養肉。これは家畜の飼育は地球環境的に負荷が大きいということで、持続可能な社会のために望まれている技術である。肉の問題については、現在は植物を使用した代用肉の開発も進んでいるが、培養肉は動物の細胞を培養することによって肉だけを作ろうという話である。

 東京大学の竹内昌治教授の研究室では、培養肉でステーキを作れるようにしようと研究をしている。しかし筋肉のブロックを作る場合、筋繊維の方向を揃えることが難しいのだという。そこで仕切りのある容器を用い、細胞とコラーゲンを流し込んで中央部分が空洞になったシートを制作し、それを重ねて培養したところ筋繊維の向きを揃えることに成功したという。

 こうして塊の肉の培養に成功したのであるが、まだその大きさは1センチ角。これをステーキにしようとすると100グラムぐらいの塊は作る必要があるのであるが、その時に問題になるのは塊の内部の細胞にいかに栄養を届けるかだという。やはりそのためには血管を作る必要があるのだという。そこで血管を模したパイプを入れて栄養を組織全体に行き渡させることが可能であることを確認しており、2025年まで100グラムの培養ステーキ肉の製造を目指しているという。

 

 

宇宙からの素粒子で地中を観測するミュオグラフィ

 後半はミュオグラフィの話。突然の道路の陥没などが事件となっているが、これは水道管や下水道管から水が漏れることで起こっている。しかし道路の下の空洞を検出する良い方法がなかなかないのだという。そこで利用されたのがミューオンという宇宙から飛んでくる微粒子。これらが物質を貫通するのを検出するのだという。例えば地中にミューオンの検出器を設置し、その時にある方向からのミューオンの強度が強ければ、その方向に空洞があるということになる。

 そして検出器を動かしてデータを取っていけば、検出器の上の地中の空洞が検出できるということらしい。実験では直径1メートルの下水道管も検出できているので、それだけのサイズの空洞があれば事前に察知できるということになる。

 このミュオグラフィは地中に設置する必要があるのだが、これを組み込んだパイプのようなものを使用して断層を調査するという研究もなされているという。断層の部分では地層の密度が下がるのでミュオグラフィで検出出来るのだという。この観測データを地震予知などに使用しようということである。

 

 

 以上、培養肉とミュオグラフィについて。培養肉についてはやはり最終的にはコストが問題となるでしょう。現在はまだ研究段階なので、ほとんど手工業のような手法で製造されているが、これを工場生産できるようになるかである。最終的には天然の肉と同じぐらいのコストに持ってこないとやはり置き換えは困難である。

 ミュオグラフィの方については、確か以前にこれで遺跡の中を透視するという話を聞いた記憶がある。その技術を断層調査に活用するというのだから興味深くはある。とにかく災害関係の予知には情報は多いに越したことがない。いちいち地層を掘り起こして調査するわけにはいかないから期待できる技術ではある。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・培養肉とミュオグラフィの小ネタ集。
・培養肉は動物の筋肉細胞を培養して肉を作るものだが、筋繊維の方向を揃えることが困難だったという。しかしそれを新技術で解決した。
・しかしまだ1グラム程度の塊しか出来ておらず、ステーキなどを作るには血管などを作って栄養を全体に行き渡らせるシステムを作る必要があると言う。
・ミュオグラフィとは宇宙から来る微粒子であるミューオンを測定することで、地中の空洞などを検出できる技術である。これで地中の1メートルぐらいの空洞が検知できる。
・さらにミュオグラフィを使用して断層を調査する研究もなされている。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・培養肉が実用化されても、やはり肉食は良くないということで代用肉の方も重要があるでしょうね。培養肉の方は実際に肉なのだから、一般にはこっちの方が受け入れられやすいような気はするが。
・培養肉の研究は臓器を作る医療にもつながるという話が出ていたが、確かにその通りなんだな。この技術を拡張したら、人工肝臓とか作れそうである。
・なお先週は「575で科学」とかいう中身の全くない話だったので割愛してます。そもそも私はあの先生の俳句をおもしろいと感じたことがないし。

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