教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/10 NHK ガッテン「メーカー極秘事項 健康食ゼリーが別次元のおいしさにSP」

衝撃のゼラチンゼリー

 今回のテーマはゼリー。ゼリーと言えばゼラチンか寒天というイメージがあるが、そのそれぞれ+αについて、今までのイメージを覆すおいしい新メニューを出すという話で、料理番組ガッテンらしい内容ではある。

 まずはゼラチンゼリーだが、ゼラチンの大手メーカーの商品開発課の課長の森美和氏からの「衝撃」の告白から始まる。彼は実際にゼリーを作る時には製品に記載されているレシピとは異なる方法でゼリーを作っているのだという。ちなみに社内で取材しても他の社員の方々も「レシピ通りには作らない」という話。

 では実際にどうやっているかだが、レシピ通りに作ったものを「会社ゼリー」、森氏の作り方のものを「森ゼリー」と名付けて比較しているが、異なるのは硬さ。会社ゼリーは結構しっかりしているのに対して、森ゼリーの方はもっと軟らかくてプルプルしている。そのために口溶けなども圧倒的に良いのだという。何が違うのかといえば、ゼラチンの濃度。会社ゼリーは2%なのに対して、森ゼリーは1.2%だという。

 

 

レシピに記載するのは「無難なやり方」にならざるを得ない

 ではなぜレシピにそれを記載しないのかと言えば、レシピに記載しているのは「誰が作ってもまず失敗しない方法」なのだという。ゼラチン1.2%となると、最初にゼラチンを溶かすところで十分に溶けきっていなかったり、溶かした後にしっかりと冷やしていなかったりしたら(冷蔵庫で3時間は冷やす必要がある)ゼリーが固まらないことが起こりやすいという。そうなると「レシピ通りに作ったのに上手く出来ない」とメーカーのお客様相談室に苦情が殺到することになりかねず、それが恐いために「誰が作ってもまず固まる」という条件を記載せざるを得ないとのこと。では注意点も記載した上で「より美味しくいただくためのレシピ」として記載すればという話もあるが、そこまで記載できるだけのスペースが商品にないという。

 というわけで番組では「リスクを承知の上で森ゼリーに挑戦してみてください」とのお話。当然ながらあくまで「自己責任」で。それで固まらなくても、メーカーはもちろんNHKにも文句は言わないように。ちなみに商品によってきっかり1.2%が正解とも限らないので、そこも自己責任で様々お試しくださいという話。

 なお最近流行のデザートに水ゼリーというのがあるとか。ジュースなどではなく水にゼラチンを加えてゼリーにするのだという。そうすれば超低カロリーのゼリーが出来るが、当然ながらそれだと味がないので、これにきな粉など好みのソースなどをつけて食べるということらしい。そうすれば低カロリーデザートとのことだが、個人的にはきな粉を使うのなら最初からわらび餅かくず餅の方が良い。

 

 

寒天ゼリーもレシピ通りでない方が良いとか

 次は寒天ゼリーだが、最初に登場するのは液体を氷にぶっかけるだけで固まるという魔法のゼリー。まあここでかなりベタな演出がスベるのだが、それはともかくとしてなかなか面白そうである。これを使用したらアイスクリームにかけた途端に固まるコーヒーゼリーなんてのも作れるという。

 このゼリーに使用しているのが寒天なんだが、ここで落とし穴は寒天ゼリーもレシピ通りに作ったらかなりガチガチの固いものになってしまうのだとか。レシピの寒天濃度は0.8%なんだが、これは実は寒天の用途で最も多い「みつ豆に入っている寒天」の作り方だという。だからあの寒天のようにガチガチのものになってしまうと言う。

 寒天はゼラチンと違ってみずみずしさを持つというのがメーカーの談。で、それを活かすためのガッテン流レシピは0.2%だという。なおこれも寒天によって変わるので実験するしかない。ちなみに最初に登場した魔法のゼリーはコーヒーに対して0.5%とのこと。牛乳を0.5%で作って、それを電子レンジで軽く温める(500Wで1分)ホットゼリーなんてのも提案している。これを応用してお茶漬けゼリーなんてのも提案しているが、これは好き好きがある模様。

 

 

ゼラチンや寒天以外の変わったゼリーも

 最後はゼラチンでも寒天でもない第3のゼリー。これは増粘多糖類を使用するというもので、これは使用する剤で様々な性質を出せるので、餅のように粘りがあって伸びるゼリー、お茶のカテキンと反応して固まって口の中でとろけるゼリー、さらには100℃の高温でも融けないゼリーなども作れるとのこと。もっともこれが商品として受け入れられるかは別の問題なので、目下のところは商品化されていないとか。

 

 

 以上、ゼリーの新メニューを提案という料理番組ガッテンな内容でした。番組としては「失敗も覚悟の上でいろいろ試して欲しい」という話だが、まあそれって実験の基本です。というわけで、今日の失敗を全く許容しない不寛容な社会に対して一石を投じた内容・・・なんてご大層なものではないですが、まあいろいろ楽しみながら試していれば新しいメニューが出てくるかもというお話です。

 まあいろいろ試してみればと言えば、今日の「ガッテン」になる前の「ためしてガッテン」の方がそのコンセプトに近いですね。ちなみにこの頃には実際にいろいろなものを試しており、今日のように料理と健康だけの番組ではなかったです。

 ところで以前から「ためして寒天」なる怪しい商品名の製品を見かけるのですが、今回の番組内容だったらもろにまんまじゃん。まさか宣伝料もらってるなんてことは・・・まあないでしょうけど。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ゼリーと言えばゼラチンか寒天だが、まずはゼラチンゼリーについては実はレシピ通りに作らない方が口溶けの良い美味しいものが作れるという話が登場。
・レシピは2%使用することになっているが、これを1.2%にしたら軟らかい口溶けの良いゼリーになるという。メーカーかそのことは知っているのだが、これを作るにはしっかり溶かしてしっかり冷やす必要があり、失敗することも良くあるので苦情が恐くてきさいレシピは「誰が作ってもまず失敗しない条件」にせざるを得ないとのこと。
・一方の寒天ゼリーはレシピ通りに作るとかなり固いものになるという。実はこれは寒天ゼリーでもっとも頻度の高い「みつ豆に入れる寒天」を作るためのものであり、ゼリーとして食べる寒天はレシピの0.8%でなく、もっと減らした方が良いとのこと。
・なおゼラチンでも寒天でもない増粘多糖類で固めるものもあり、こちらは剤を変更することで様々な特性を持つものも作れるという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ゼラチンを使った料理と言えば、以前にこの番組で提案した醤油をゼラチンで固めたものがありましたね。醤油の使用量を減らせると言うことで減塩の観点でも注目されたという。まあ何事も工夫次第と言うことで。

次回のガッテン

tv.ksagi.work

前回のガッテン

tv.ksagi.work