教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/25 BSプレミアム ヒューマニエンス「"走る"そして、ヒトとなる」

走ることは脳を鍛える

 ヒトは走ることが出来る。しかし実はこのヒトの走りというのはかなり特殊であり、そこには独特の進化があるという。そしてその走ることがさらに進化を促したのだという。ではヒトはなぜ走るのか。

 最初に登場するのは、夫婦揃ってフルマラソン完走の記録を持つという89才の夫と85才の妻の夫婦。既に記録を5回更新しているという。次は来年2月の大阪マラソンに挑戦するという。日本のジョギング人口は1000万人を越えたという。

 そのようによく走るヒトだが、これは自然界では特殊なことだという。生きるために走る動物はいるが、ヒトのように楽しむために走るというのは不自然であるという。山中伸弥氏がランニング好きなのは有名だが、同じ研究者のランナー仲間も多いとのことで、アメリカでは学士号以上の取得者は運動頻度がおよそ2倍という報告もあるという。

 走ることで脳が鍛えられるという最新研究の報告がある。ラットで実験したところ、6週間で海馬の細胞が増えるという結果が見られたという。さらに走ることで脳の認知機能にかかわる領域が活性化するという実験結果もあるという。さらにその効果はゆっくり走る時に高まるという(そもそも全力疾走したら頭が真っ白になるだろう)。さらにインターバル運動の場合は4分で効果が出たという。また運動時に筋肉から分泌されるマイオカインの中にも脳に働くものもあるという。ちなみに運動は楽しくするのが重要だという。

 

 

走るために進化した足の構造

 人間が走れるようになったのには足の進化が関係しているという。樹上生活をしていた我々の祖先は走らなかったのだが、木から降りるようになってから走るようになったのだという(180万年前のホモ・エレクトスの時代だという)。猿を使って二本足で走れるかどうかを見てみたら、猿はどこまで行っても「速く歩く」だけで走れない。ヒトが走れるのは足の分厚いかかとの骨のおかげだという。着地の瞬間の衝撃を支えるために頑丈なかかとの骨が必要なのだという。またこの骨が発達することで足にアーチ構造が出来、それがバネとして推進力につながったのだという。

 またかかとの骨が大きくなることは移動のエネルギー消費を減らすことにもつながったという。これによって浮いたエネルギーを頭を使うことに回し、それによって狩りが上手くなり、肉食のエネルギーを確保できるようなったことで脳が巨大化できたのだという。実際にホモ・エレクトス以降の脳の巨大化は著しいのだという。実際に脳は体全体のエネルギーの2割も消費しているという。

 

 

走ることが長寿につながる

 さらには走ることが長寿につながるという話もある。鍵はミトコンドリアだという。ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを生み出しているが、古くなって機能が低下したミトコンドリアは分解する必要があるが、走ることによってこの分解が促され、新しいミトコンドリアが生成するのだという。運動では大量にエネルギーを出す必要があるので、それに対応できないミトコンドリアは分解されるのだという。そういう新陳代謝が促されることで長寿につながるのだという。

 なお最強のミトコンドリアを持っているとされるのがハダカデバネズミで、寿命は30年ぐらい。同じぐらいの大きさのネズミと比較すると、人間で言えば1000年の寿命を持っていることになるという。

 

 

 以上、走るということがいかに体に良いかというお話でした。しかし私は既に走ろうとしたらひざを痛めてしまう体型になってしまってるんですよね。だからせいぜいがウォーキングが関の山。ウォーキングでまずは走れるところまで体を絞り込めと言うことだろうか。先が長い話であり、その前に寿命が来そう。

 走ることによって頭が良くなるというような話も出ていたが、脳が成長すると言うよりも血の巡りが良くなるのではという気もしないでもない。またよく走っているヒトは頭が良いかと言えば、スポーツ選手なんかを見ていると正直なところそれは疑問。いわゆる脳筋系がかなり多いので。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・走ることが海馬の成長を促すなど、脳の進化に影響するという研究報告がある。
・人間が走れるのは、大きく進化したかかとの骨の存在がある。実際に猿は速く歩くことは出来ても走ることは出来ない。人間は巨大なかかとの骨で着地の衝撃を支え、さらにかかとが巨大化することで足にアーチが出来、これをバネにして推進力を増すことで走れるようになったのだという。
・さらに巨大化したかかとは移動のエネルギー効率を上げるので、ヒトはそこで浮いたエネルギーを脳に回すことが出来た。
・また走ることで機能が低下した古いミトコンドリアの分解が促され、新陳代謝が活性化することで長寿につながるという研究もある。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・こうなると明日から目の色を変えて走る人が出そうな気もするが、「楽しまないとダメ」というのと「ゆっくり走る方が効果がある」ということはお忘れなく。

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