シジュウカラが言語を話すという衝撃的研究
鳥が言語を持っていた。それも文法があるということを証明した衝撃の研究が話題となっている。今回はその内容と経緯を紹介する。
その衝撃の研究を行ったのが京都大学の鈴木俊貴博士。彼はシジュウカラが複数の単語を駆使してコミュニケーションをとっているということを証明した。今まで言葉を駆使できるの人間だけで、動物の鳴き声は感情を表しているだけというのがこれまでの通説だったが、それを覆す大発見である。
鈴木氏が発見したシジュウカラの言葉は15種類、また確認されたパターンは200以上あるという。ただ鳴き声にパターンがあったとしても、それが言葉であると証明するには高いハードルがある。彼はどうやってそれをクリアしたか。
言語の意味を証明したサーチイメージという手法
まずはヘビを指す言葉について。ヘビのレプリカを巣箱の上に置くと、シジュウカラはけたたましく「ジャージャー」と鳴いてヘビを威嚇する。他の天敵を置いて見ても「ジャージャー」とは鳴かなかったという。これで「ジャージャー」がヘビを指す言葉である可能性が高い。次にこの鳴き声をスピーカーで流して聞かせると、シジュウカラは一斉に地面を警戒し始め、ヘビを探しているような様子を示したという。
ただこれだけだとまだ本当にシジュウカラがヘビを探しているかは分からない。そこでサーチイメージという手法を駆使したという。人が「ヘビだ」という言葉を聞いたら頭でヘビを思い浮かべる。そこにニョロニョロと動く物体が出現したら、咄嗟にヘビだと勘違いしてしまうという。これと同じことをシジュウカラで試したのだという。「ジャージャー」の鳴き声を聞かせてそこで紐で吊した木の棒を幹にそって動かしたのだという。「ジャージャー」がヘビを示す言葉なら、ヘビと勘違いして何らかの行動をするはずだというのである。するとテストした12羽の内、11羽が接近して確認するという行為を行ったという。
では次にどんな鳴き声を聞いても木の棒を確認するのではないかというツッコミに対しては、実際に他の鳴き声を聞かせて木の棒を動かしても12羽中で2羽しか接近してこなかったという。このような手法で「ジャージャー」がヘビを指す言葉だと証明したのだという。
文法を駆使していることを証明したルー語
さらに文法を駆使しているという証明も行っている。シジュウカラはモズなどの小さい敵の時は集団で集まって威嚇して追っ払うのだが、この時に「警戒しろ」の意味の「ピーツピ」と「集まれ」の意味の「ヂヂヂヂ」を続けて鳴くという。これは二つつながらないと意味をなさないという。と言うのは「集まれ」だけだと無防備に飛んできてやられるし、「警戒しろ」だけだとその場を動かないので威嚇できない。警戒しながら集まれというためには文章にする必要があるのだという。この時、「ピーツピ」「ヂヂヂヂ」の語順だと威嚇のために集まったが、逆の「ヂヂヂヂ」「ピーツピ」だとその行動をとらなかったという。つまり語順に意味があるのだという。
しかしこれが本当に文法かというのを証明するには、文法に則って初めて聞いた文章でも正しく理解できることを証明する必要があると言う。そこでヒントにしたのがルー大柴だという。「トゥギャザーしようぜ」の調子の日本語の文章の一部を英語に置き換えても、日本語の文法と英単語の意味を知っていたら理解できる。これと同じことをシジュウカラが出来れば文法を理解しているということになるという。
具体的にはシジュウカラはコガラやヤマガラと群れを作り、種類が違う鳥のお互いの鳴き声を理解し合っているのだという。シジュウカラの「ヂヂヂヂ」に対してコガラは「ディーディーディー」と鳴くのだが、これでシジュウカラも集まるのだという。そこで「ピーツピ」「ヂヂヂヂ」を「ピーツピ」「ディーディーディー」にしてルー語を作ったのだという。するとシジュウカラはそれをキチンと理解して集まってきて威嚇したという。そしてやはり語順をひっくり返すと反応しなかったという。
動物言語学というジャンルが登場することに
なぜこのような言語が発達したかだが、鈴木氏はシジュウカラは森の中で互いの姿が見えない状態でコミュニケーションをとる必要があるので、このような高度なコミュニケーションが進化したのではという。
というわけで、シジュウカラが言語を持っているということになると、他の動物も言語を持っているのではということになり、動物言語学という概念が登場したという。まさに画期的である。
以上、動物の言語について。こうなるとコジルリも言っていたが、動物と会話できるのではという夢も膨らむことになる。まさにリアルドリトル先生である。もっともいろいろな動物と会話できるようなったら、また別の問題もいろいろと生じそうである。例えばと殺処分される牛が「嫌だ、恐い」と喋っていたとしたら、果たして下等生物として殺すことが出来るかである。もしかしたらあらゆる動物は人間が思っているよりもずっと知能が高いかもしれないという気もする。
忙しい方のための今回の要点
・京都大学の鈴木俊貴博士がシジュウカラが言語を駆使しているということを証明して話題となっている。
・分かっているだけで15の単語が存在し、鳴き声のパターンは200種類以上あるという。また単語だけでなく、文法もあるということが証明された。
・鈴木氏はシジュウカラの鳴き声が言語であることを、様々な工夫を凝らした実験で証明したことで、他の動物も言語を有している可能性が浮上しており、動物言語学という概念が誕生することになった。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・シジュウカラが言語を話しているというのがなかなかに衝撃的でしたが、それを証明するために鈴木氏が考えた実験手法というのもすごいなと驚かされる。それにしてもルー大柴とは・・・。発想のヒントとは本当にどこにでも転がっているものである。
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