教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/22 NHK ガッテン「手間激減!楽しさ倍!ポテトサラダ革命」

万能料理「ポテトサラダ」の秘密

 今日の主役は350もの料理と組み合わせることが可能という万能メニュー。それはポテトサラダだという。

 さてこの350との組み合わせだが、実行したのは北海道のトマムのリゾートホテルの料理長の森田完氏。彼が考案した組み合わせは塩辛などのまあ普通に思いつきそうなものから、苺などのポテトサラダというよりもアイスクリームのような組み合わせまである。2年前にこの企画を思いついて意外性を追求して様々試した結果、これだけの組み合わせに達したという。

 番組ゲストもコーラにママレード、果ては豆大福なんて組み合わせまで試しているが、一応それなりに馴染むらしい。このポテトサラダの親和性の高さはどこから来ているかというのが今回の肝の一つ。

 

 

ドイツから発祥し、日本流にアレンジされたポテトサラダ

 で、その秘密に迫る・・・といくべきが、なぜかここでポテトサラダの発祥の地はと遠回りするのが最近のガッテン流。で、その発祥の地だが、やはりジャガイモとソーセージの国のドイツらしい。そこでドイツの家庭料理を紹介しているのだが、そこに登場するポテトサラダは、芋を切ってそこに野菜から摂ったスープと炒めた玉ネギをあえるという、いわゆる日本のポテトサラダとはかなり別物。

 では日本式のポテトサラダはとなると、ポテトサラダに必須のマヨネーズからポイントがあるのだという。日本のマヨネーズは実業家の中島薫一郎氏に始まる。彼がアメリカでマヨネーズとあえたタイプのポテトサラダに感動し、このマヨネーズを日本人にあう形で製品にしたいと考えたそうな。なおこの先はさすがにNHKはボカしているが、要は彼はキューピーの創始者である。この時に彼が行ったアレンジが「マヨネーズに卵黄だけを使用する」というものだったという。だから日本のマヨネーズは外国のものに比べて色が黄色いし、味にコクもあるとのこと。

 

 

奇跡的なマヨネーズとの組み合わせ

 日本式ポテトサラダの特徴はこのコクのあるマヨネーズに崩れやすい男爵いもを組み合わせるというもの。ジャガイモにマヨネーズを組み合わせると味のバランスとしては甘味、旨味、塩味、酸味のバランスの取れた非常にコクのある味になるのだという。だから何を加えてもその特徴を取り込んでバランスが取れるのだという。また崩れやすいジャガイモのにマヨネーズを加えることで、口の中でバラバラにならずにまとまるので、味のバランスがさらに良くなるとの話(ここでミスター味っ子のパロを放り込んでいたようだが、今の若い奴でこれが分かる奴ってどのぐらいいるの? ちなみに私はジジイ過ぎてこのネタのオリジナルは実は知らない)。

 さらにマヨネーズの観点から言うと、ポテトサラダがもっとも美味しくなるのは40度の芋にマヨネーズをあえた時だという。この時がマヨの粒子のバランスがもっとも良くなるのだとか。なおこの取材先、「大手マヨネーズメーカーの工場」といういかにもNHK的な表現をとってはいるが、言うまでもなく工場の建物を映した時に「キューピー」という社名がしっかりと見えるように「配慮」してある。

 

 

ポテトサラダを作りやすくする画期的方法

 ただこのポテトサラダ、いざ自分で作ろうとすると、熱い芋の皮を剥くのが大変である。実際にこの点ではつい最近Twitterで騒動になったポテトサラダネタの件を私は思い出した。それはスーパーの総菜でポテトサラダを買おうとした母親が、爺さんに「ポテトサラダぐらいで家で作れ」と偉そうに説教されたという話。これについて「ポテトサラダがどれだけ手間がかかるかをこの爺さんは分かっていない」という声がネット上に溢れたのだが、確かにポテトサラダを自分で作ったことのある人間なら、大抵は思い当たるところであるから、この爺さんは自分で作ったことがないのがよく分かるのである(まあこのタイプの爺さんはまず間違いなく、嫁に偉そうに作らせてるんだろう)。

 ジャガイモの皮を熱いうちに剥かないと、芋が冷えてからだとつぶしにくい上にマヨがうまく絡まないという問題が起こる。ここでゲストから「皮を剥いてから茹でれば」という声が出たのだが、ジャガイモは表層部にデンプンの塊があり、ここが美味しいので皮を剥いて茹でたらこの部分が壊れてしまって味的には論外とのこと。

 で、ガッテンが編み出したこの苦労を解消する方法だが、茹で上がったジャガイモを氷水にきっかり15秒つけるのだという。こうすると表面は冷えて熱くなくなる上に、皮が縮んで浮いた形になり、薄く簡単に剥くことが出来ると言う。剥く皮が薄いので表層がほとんど残って風味もアップ。さらに中はまだ温かいのでつぶすのにも問題がないという。

 そしてこの方法を、ポテトサラダが人気だが、ポテトサラダは仕込みが手間なので実は嫌いという食堂のお上さんに紹介して目出度し目出度しというオチで終了である。

 

 

 最後に極めて実用的ないかにもこの番組らしいネタがありました。まあ今回の一番の肝は実はここで、後は45分枠に収めるための水増しって部分は多々ありましたが、まあ今回はよく出来ている方でしょう。

 ちなみにポテトサラダは各家庭ごとに個性もあり、各人ごとに好みもあるので、今回の内容が必ずしも正解とは限りません。私なんかはペースト食が苦手なので、男爵いものポテトサラダはあまり好きではありません。我が家のポテトサラダは崩れいにくいメークインを使用して、これをつぶしすぎない状態でマヨネーズは少なめに使用するというのが特徴となっています(私はマヨネーズもあまり好きでない)。なお我が家で芋を剥く時には、茹で上がった芋を水で冷やして行っていました。確かにこうすると皮が浮いてくるのは経験で分かっています。ガッテンはこれを氷水を使用することでさらに極端にしたということのようです。

 なお私は自分でポテトサラダを何度も作っているので、ポテトサラダを作るのは面倒なので総菜を購入するという母親の事情は非常に理解できる。というわけで件のTwitterは「あっ、このジジイ、絶対自分で作ったことないな」というのはピンときました。多分この手のジジイは「そんなもの母親が作るのが当たり前だろう」と答えるのがオチ。今時こんな化石もまだ存在するんだなと、自分も既に昭和ジジイに分類される私でも思います。私よりもさらに上の世代には、それこそ嫁がいなくなれば自分の靴下がどこにしまってあるかさえ分からないというのを、逆に「それこそ男としてのあり方」と勘違いしていた連中もいたりするのは知ってます。なおこのような時代錯誤の化石に憧れている若い男もいたりするが、こういう化石はその代わりに「嫁と子供を食わせるのは男としての必須の甲斐性」と考えている点だけは、なぜか華麗にスルーしてたりするんだよな。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ポテトサラダはあらゆる食材に合わせることが可能である。
・それを可能とするのはジャガイモとマヨネーズの組み合わせ。この両者を組み合わせることで甘味、旨味、塩味、酸味のバランスが取れることでコクが生まれるので、あらゆる食材を加えてもその風味を取り込むことが可能。
・日本のマヨネーズは卵黄のみを使用することで、外国のものよりもコクを強めてある。
・マヨネーズをイモと混ぜる場合の最適温度は40度である。
・芋の表面近くが大量のデンプンを含むので、この部分をなるべく損なわない方が良い。
・熱々の芋の皮を剥く方法は、氷水に15秒つけること。こうすることで皮が縮んで浮き上がるので薄く簡単に剥くことが出来、芋の内部はまだ温かいのでつぶすことにも問題がない。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ポテトサラダも結構好みが分かれたりするんですよね。これもあまり細かく追及したら、キノコvsタケノコ並の宗教戦争になりかねないので、深入りはしすぎない方が吉。

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