黄金の国ジパングはどこか
今回はマルコポーロの東方見聞録に記されていた「黄金の国ジパング」というのがどこなのかという話・・・ですが、それはほぼ間違いなく日本のことですと言ってしまったらそこで終わるので、それをもう少し細かく突っ込んでいる。
東方見聞録はフビライに仕えていたマルコポーロが伝聞したアジアに関する情報などを記した書物であり、マルコポーロは実際には日本には来たことがない。つまりあくまで「黄金の国ジパング」は伝聞なのである。
黄金の国だった東北
では当時の日本はどういう状況だったかと言えば、当時の日本の状況を端的に示すのが平泉の中尊寺の金色堂。まさにキンキラキンの世界であるが、あれを作れたのは当時の日本の東北が金の一大産地だったと言うことがあるという。実際にこの番組では触れていなかったが、当時東北で奥州藤原氏が独立勢力として存在できたのも、その金を朝廷に献上することでパイプを作っていたためだとされている。
東北の金の特徴は粒が大きいことだという。実際に明治になってナゲットモンスターと呼ばれる巨大金塊(重さ2.25キロで純度83％だそうな)が掘り出されて話題になったこともあるという。ちなみに今日、その1/6がつくばの地質標本館に展示されているそうだが、元々の鉱石はセントルイス万博に出展されたが、その後に経路が不明で今日残っているのが標本館の分だけらしい。何やら不透明なところがあるが、何らかの支払のために売却されたか、それとも関係者の誰かが着服したか。
東北でこのような巨大な金が取れるのは、ここが元々深い地層が地表に現れた地域だからだという。金の粒は深いところほど大きくなるのだそうな。とにかくそういうわけで当時の東北は黄金地帯だったのだという。
東南アジア説が登場するが・・・
と言うわけで「やっぱり日本で決まりじゃん」というところだが、一応番組はもっと引っ張る。金と言えば東南アジアのタイも信仰的にかなり金を重視しており、実際に今でも金ピカの仏像が多数存在し、人々は願いをかけて仏像に金箔を貼るという習慣もあるのだという。またジパングが東南アジアだったと言うことを主張している研究者もいるのだとか。
とのことだが、実はこの時代は東南アジアでは金は産出しておらず、タイの金は中国から輸入したもので、その中国の金は日本の東北から輸出されたものだったとのことでバッサリである。当時の東北からは数百キロという金が毎年中国に輸出されており、これは当時の世界の金の流通量の15％にも及んだとか。やっぱり黄金の国である。
最後はコロンブスは東方見聞録を読んで、黄金の国ジパングを探そうとしていたという話。まあそれはあり得るだろう。一般的にコロンブスは香辛料を求めてインドを探していたと言われているが(だからアメリカに西インド諸島がある)。
というわけで、黄金の国ジパングはやはり日本らしいという何の意外性もない結論であった。うーん、新年早々何をやりたかったんだろう。単にお目出度いキンキラキンの話を持ってきたかっただけのような気もする。それだったら志賀島の金印の真贋論争でも扱った方がネタとしては良かったのでは。まあ昨年の11月に「にっぽん!歴史鑑定」で扱われたばかりのテーマになるが。
それにしても戦国から江戸時代にかけては銀の流通で世界の中心を占めていたという話もあり、日本ってどんだけ豊かな国だったんだと思えるのだが、結局はこれらの金銀は富裕層のための絹や戦争のための硝石や鉛に化けてしまってことごとく国外流出してるんだな。日本って国の富を海外にばらまいて無駄に費消してしまうってのは、この時代からずっと伝統なのか。
忙しい方のための今回の要点
・マルコポーロは日本に来たことがなく、いろいろな噂を元に「黄金の国ジパング」を東方見聞録に記した。
・しかし当時の日本の東北地方は大粒の金が大量に採掘されており、黄金の国ジパングにまさに相応しい状況だった。
・なおタイに金を重視する文化があることなどから、東南アジアにジパングがあるのではという説もあるが、当時の東南アジアでは金は産出せず、中国から輸入している状態だったという。
・さらに中国から輸出されていた金は東北産の金であり、当時の日本は世界の金の流通量の15％を産出していたという。
・コロンブスも東方見聞録を愛読しており、ジパングを探していたと考えられるという。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・正直なところネタとしてはあまり面白くないですね。なお東北には金山ゆかりの地は多くあり、私も宮城県涌谷の黄金山神社を参拝して金運の向上を祈ってきました。これで私もボロ儲け・・・できたら苦労せんわな。
次回の歴史探偵
前回の歴史探偵
