教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/20 TBS系 世界遺産「イギリス横断!古代ローマの長城」

ローマ帝国の防衛線

 外敵からの防禦のための城壁と言えば万里の長城が有名だが、イギリスにもそれに相当する施設が古代ローマ帝国によって築かれている。全長120キロ、イギリスを横断するこの壁は1900年前に作られた。


www.youtube.com

 2世紀に領土を最大にしたローマ帝国。帝国がイギリスとドイツに築いた3つの壁が世界遺産になっているという。今回はその中のハドリアヌスの長城を紹介。これはローマ帝国の北限の防御線として築かれた。大地の起伏に合わせて築かれた壁の厚さは3メートル、高さは5メートル近かったという。この規模の壁がイギリスを横断していたのである。今では多くの石が後に建材に使われたので、今では一番高い部分でも1.5メートルほどだという。

 約1.5キロごとに見張塔が建てられ、これはマイル・キャッスルと呼ばれている。占領地にもローマ本国と変わらない都市を築いたローマ人であるが、ここでも大土木建築を行っている。作業に動員されたのはローマ兵。ローマの各地から送られてきたローマ兵が作業に従事し、さらには監視業務に携わったという。

 

 

都市ごと建設したローマ人

 兵士が住むのは壁沿いに築かれた要塞。全部で17あり、一箇所に500~1000人の兵士がいたという。墓石にはあちこちの出身地が記されている。この壁の建築を命じたのはローマ帝国最盛期の皇帝であるハドリアヌスである。彼は自分の目で各地の前線を視察し、ここに壁の建設を命じたのだという。

 要塞の一つであるイングランド要塞は広さ2.8ヘクタール。壁の中に多くの建物が配置され、司令官の住居や兵士の詰め所に倉庫などがあったという。ここの土は酸素を含まないために当時の靴などが腐らずに大量に見つかったという。特に大発見は木の札に書かれた文書が見つかったこと。これで当時の生活の様子も分かったという。穀物は6ヶ月分備蓄され、オリーブオイルやワインも送られていたという。また大量の靴が見つかっており、機能的なものであったという。また司令官の子供の靴や玩具もみつかったという。司令官だけが要塞内で家族と暮らすことが許されていたのだとか。

 では一般兵はどうしていたかだが、実は要塞のすぐ隣に町が建造されていたという。兵士の妻子はそこで暮らしていた。街には居酒屋などもあり、さらにはローマ人には不可欠な公衆浴場も建設されていたという。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・イギリスには1900年前にローマ帝国によって築かれた全長120キロの長城が存在する。
・厚さは3メートル、高さは5メートルはあったと考えられ、かなり大規模な建築である。
・これの建築を命じたのはローマ帝国最盛期の皇帝ハドリアヌス。各地の前線を自ら視察して回った彼は、この地をローマ帝国の北限と定めて長城の建設を命じた。
・建設には帝国全土のローマ兵が動員され、彼らはここで監視も行った。見張塔は1.5キロおきに建造され、兵士の詰める要塞は17存在する。
・要塞内で妻子と共に生活することが許されているのは司令官だけだが、他の兵士たちは隣接して建設された街に妻子を住まわせていた。これらの街には居酒屋などもあり、ローマ人に不可欠の公衆浴場もあり、都市と変わらぬ生活をおくれるようになっていた。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・ローマ兵で驚くのは、彼らって優れた土木工事技術者集団でもあるんですよね。それが端的に現れているのはこういう辺境要塞の建設ですね。彼らはとにかく戦争する前に兵站線を完全に整備してから臨むので。
・ローマ人は日本人と似ているなんていう評もありますが、風呂が好きなところは似ているかもしれませんが、兵站を重視するところは全く似てませんね。日本は兵站を軽視しまくった挙げ句に先の大戦でほとんどの兵士を餓死と病死で失った国なので。

次回の世界遺産

tv.ksagi.work

前回の世界遺産

tv.ksagi.work