教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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2/27 サイエンスZERO「"知られざる国民病"天気痛の正体に迫る!」

天気痛の原因が判明した

 天候によって頭痛の発生など体調が崩れる天気痛。実は自覚してない人も含めて患者は1000万人はいると推測できるという。この天気痛のメカニズムが初めて解明された。

 メカニズムを解明したのは愛知医科大学の佐藤純客員教授。現在は天気痛外来を立ち上げているという。内科医として痛みに直面する患者に向き合ってきたのだが、天気で不調になる患者が多かったことから、何とかそれを解明したいと立ち上がったという。

 天気が崩れるのは気圧が下がる時ということから、彼はどこかに気圧を感知する器官があるはずだと考えたという。当時はそんなものはないというのが通説だったが、彼は飛行機に乗った時に耳が変になるということから、耳は気圧を感じるのではないかと推測したという。そして彼の研究によると内耳の前庭器官(平衡感覚などを司る)が気圧の変化を感知し、前庭神経が興奮して信号を脳に伝えているのではと推測した。マウスを使った実験により、気圧が変化すると神経の興奮を示すC-Fosというタンパク質が脳内の前庭神経核ニューロンに現れるということを確認した。これで前庭器官が低気圧に反応していることが証明された。前庭神経が興奮することで、すぐそばの三叉神経が興奮し、神経伝達物質が放出されることで脳の血管が拡張して炎症物質が分泌されるのが頭痛の原因だと判明した。

 

 

第二の要因である微気圧変動、さらに第三の大気潮汐

 しかしさらに研究を続けるとこれだけではないということが分かってきたという。人によっては天気が崩れる時でなく、それ以前に不調が現れる事例があるのだという。そこで彼は気象的に何か原因があると推測したのだが、気象の専門家でないことから行き詰まったという。そこで協力してくれる専門家を探したところ、ウェザーニュースの森田清輝予報士がやはり同様の疑問を持っていたことから協力を申し出てきたという。こうしてタッグを組んでの調査の結果、台風がまだ離れている時に不調が現れてる人がおり、この時には気圧が大きくは変化してないことが確認された。そこでこのような時に何が起こっているかを調べると0.5hPa程度の極微少な気圧変化(微気圧変動)が起こっていることが判明したという。気象的にはノイズと扱われる現象であるが、感覚が鋭敏な内耳にとってはこれが刺激となったのだと分かったという。

 これで解決かと思っていたら、さらなる要因がまた浮上した。今度は決まった時間に度々頭痛が現れる事例が判明したという。佐藤氏と共に天気痛の研究をしている気象予報士の大塚靖子氏は決まった時間という言葉から大気潮汐を思いついたという。これは太陽の光で地球の大気が温まることによる気圧の変動で12時間周期を持っているという。これが原因ではと佐藤氏に伝えたが、佐藤氏はいつも決まって起こるリズムの変化の場合は身体が対応するはずだから、何か違いがあるはずだと指摘した。そこでさらに調べたところ、変動の幅が大きくなる時があることが分かったという。これは1日の気温差が大きい時に現れるもので、これが患者の訴えと符合したという。

 こうやって、大きな気圧の変化、微気圧変動、さらに大気潮汐のズレという3つの要因が判明したという。その患者によってこのどれに反応しているかがあるので、それが分かれば身体の不調が予測できるのではということである。

 

 

 天気痛は今まで「気のもの」といわれることが多かった不調なのであるが、それがハッキリと原因があると分かったことは非常に興味深いところである。実際に「何が原因か分からない不調」というのはストレスとなって症状が悪化しやすいが、原因がハッキリと分かってどんな時に現れるかが予測が付くだけでそもそもの症状が低減されるという話もある。これはなかなか患者には朗報。

 ところで私は昨日辺りから激しい頭痛で苦しんでいるのだが、これは天気と関係あるのだろうか? 最初はコロナを疑ったが、くしゃみはでるが咳は出ないし熱も全く出ないことから、花粉症が原因ではないかという気もしている。もう原因がいろいろと考えられて結局はわけが分からない。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・今までは気のせいなどといわれていた天気痛であるが、実は患者は1000万人ほどいるという。その天気痛の原因が明らかとなった。
・天気痛の原因は気圧の変動を内耳の前庭器官が感知し、前庭神経が興奮することで三叉神経の興奮が発生して頭痛につながっていたという。
・さらに大きな気圧変化だけでなく、その数日前に起こる微気圧変動と呼ばれる極小さく周期の短い気圧変動も天気痛の原因となることが分かった。
・また太陽で空気が暖められることで起こる大気潮汐のズレで発生する場合もあり、この場合は決まった時間に度々頭痛が発生するというような症状になるという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・とりあえず天気痛が気のせいでないということが分かったの大きなことです。ところで頭痛だけでなくて神経痛が悪くなるというのもメカニズムは同じなんでしょうか? 私はよくそれがあるんですが。

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