インカ帝国に先立つ古代文明の遺跡
アンデスと言えばインカ文明を連想するが、それに先立つこと1200年、インカ帝国につながる高度な文明が発達していた。それを伝えるティワナク遺跡が今日の世界遺産。
ボリビアのチチカカ湖の南東17キロの平原に点在するのがティワナクの遺跡である。中心都市には最盛期には5万人が暮らしていたという。今でも周囲には耕作地の名残が見えるという。ティワナクの歴史は900年に及ぶが、最盛期にはペルーにまで影響を与えた。
中心部には巨大な石造りの建物があり、巨大な半地下式神殿もある。ここの壁にはいくつも顔の像が埋められているのが特徴だが、その顔はすべて異なる。このような特徴は出土した土器にも見られるという。顔の違いは多民族を象徴しているともいう。
優れた石材加工技術
神殿の中央には巨大な石像が建っていたが、20トンもの巨大な一枚岩で作られている。しかしこの辺りにはこのような巨大な石は存在しない。また神殿の隣のカラササヤ神殿の周囲500メートルの壁はサイズの異なる石を精密に積み上げているが、この石も周辺のものではない。これらの石は実は遺跡から70キロのチチカカ湖畔の岩山から切り出されたものだという。この山には切り出し途中の石も存在しているという。
ティワナクの人々は高度な石の加工技術を持っていた。神殿には鋭利な刃物で刻まれたと思われる宗教的な文様がある。どうやって運んだのか分からない重さ180トンの一枚岩もあるのだが、最近の研究では内部に有機物が検出されており、小石や砂などを結合剤で固めた人工的な岩という可能性が浮上しているという。さらには巨石同士をつなぐためのジョイント金具なども発見されている。ティワナクは12世紀半ばに終わっているが、気候変動による乾燥が原因ではとされている。
15世紀に発生したインカ帝国はティワナクの歴史を汲んでおり、チチカカ湖を聖地としている。チチカカ湖の中の太陽の島が聖地とされており、これと隣の月の島には祭礼に携わる女性が暮らすための施設の跡が残っている。さらに北のコア島の周囲にはティワナクの人々の宗教行事のための捧げ物が発見されており、同じ場所でインカの捧げ物も見つかっている。
またティワナクの人々は高度な天文知識も持っていたという。カラササヤ神殿の中央には刺青のあるシャーマンの石像が建っており、神殿の傍らには太陽の門がある。この門には暦が記されており、建造物の門は東を向いており、この神殿自体がカレンダーであったという。この太陽に対する信仰もインカに引き継がれた。
忙しい方のための今回の要点
・ボリビアのティワナク遺跡は、インカ帝国に先だってこの地に栄えたティワナク文明の遺跡である。
・ティワナクには多くの巨石建造物があるが、これらの石は70キロ離れたチチカカ湖畔の岩山から切り出されている。
・ティワナクは高度な石材加工技術を持ち、最盛期にはペルーにまで勢力が及んだが、気候変動による乾燥化で放棄される。
・その後、ティワナクのチチカカ湖を聖地とする文化などもインカ帝国に引き継がれた。
・またティワナクの人々は高度な天文知識を有しており、神殿はカレンダーの役割を果たしている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・ティワナクは石の文化なんです。それが幸いして野蛮なスペイン人共に荒らされなかったようで、結構遺跡は残っていると聞きます。しかし世界各地にこの手の進化した古代文明が存在していたことが最近になって分かってきましたね。おかげで今はもう世界四大文明なんて言わなくなった。
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