教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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3/13 TBS系 世界遺産「ヴェネチアが築いた!6つの城塞都市」

ヴェネチアの海の交易路を守る海上要塞都市

 今回の世界遺産は、海洋国家ヴェネチアが防御のために築いた6つの城塞都市で、これらかイタリア、クロアチア、モンテネグロの3国にまたがっている。


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 ヴェネチアからアドリア海を南に300キロ進んだ先、狭い海峡の奥にある町がシベニク(クロアチア)である。ここは海の交易ルートの拠点で狭い海峡の入口には聖ニコラス要塞が設置され、砲台が行き交う船に睨みを効かせていた。16世紀頃からヴェネチアが各地に築いた防御都市の一つである。オスマン帝国の進出に備えて、クロアチアの海岸の複雑な地形を防御に利用したのである。

 防御が容易な半島に築かれた町がザダル(クロアチア)。町を丸ごと城塞で囲んで防御したヴェネチア最大最強の城塞都市である。城壁は高さ10メートルもある分厚い壁で、町への入口は数カ所のみである。3万人がこの都市で暮らしていて、内部には多くの交易商人が住んでいた。ヴェネチアから派遣された行政官がここを支配し、アドリア海全体の交易を管轄していた。税関では外国の商人はここで莫大な税を徴収された。

 さらにモンテネグロにあるコトルは15世紀にヴェネチアが領土にした都市である。背後には垂直な断崖があり、ここには何重もの壁がある。また海側には強大な城壁を備えた鉄壁の都市であった。

 

 

陸の防御のための都市も

 しかしヴェネチアの敵はオスマン帝国だけではなかった。ハプスブルク帝国やフランスなどの陸上勢力も力をつけていた。そのためにヴェネチアは陸も守る必要に迫られる。ヴェネチアの北方の大平原にある星型の城壁に囲まれた都市がパルマノーヴァである。ヴェネチアの穀倉地帯であるこの地を守るために築かれた。星型の出っ張りは9つあり、入口は3箇所のみ。これらの出っ張りは砲台を備えた陣地であり、死角をなくして入口に迫る敵などを砲撃できるようになっている。これはこの時代の最先端の構造であったという(五稜郭なんかもこれを参考にしたと思われるが)。

 さらにアルプス越えの交易路を守るための都市も築かれた。ベルガモはヴェネチアの西の玄関口だった。岩山の上に築かれた町は全長5キロの城壁で守られている。アルプスを越えた商人はこの街を通ってヴェネチアに運ばれた。さらにアルプスを望む湖岸に築かれたのがペスキエーラ・デル・ガルダ。ここは湖が川に流れ出す場所で水運の要であった。湖上の都市はまさに湖のヴェネチアであった。

 これらの都市は16~17世紀の要塞の姿を伝えるものとして世界遺産となった。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・海洋交易国家ヴェネチアが防衛のために築いた城塞都市6つが今回の世界遺産。
・クロアチアのシベニクとザダルは海の交易ルートの拠点として築かれた城塞都市である。
・ヴェネチアはオスマン帝国に対抗するためにクロアチアの複雑な海岸線を防御に活かしてこれらの城塞都市を建設した。
・同様の海洋城塞都市はモンテネグロのコトルにもある。
・一方で陸からの脅威に対抗する都市も築いた。北方の穀倉地帯を守るために築かれたパルマノーヴァは星のような出っ張りのある城壁を持つが、これらは防御のための砲台を備えた要塞であり、死角をなくして入口などを防御できるようにしていた。
・まあアルプス越えの交易路を守るために西の玄関口たるベルガモ、また湖岸の水上交通の要衝に湖上のヴェネチアとも言えるペスキエーラ・デル・ガルダを築いた。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・いかにもヴェネチアらしい城塞としてです。パルマノーヴァの城塞は当時最先端の大砲戦を想定した城塞であり、この設計は五稜郭にも用いられています。
・それにしても基本的には戦闘に備えた城塞なんだが、それにも関わらず美しさがあるのはなぜなんだろう。

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