教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

4/10 TBS系 世界遺産「2000年前の傑作!古代ローマの水道橋」

古代ローマが築いた高さ世界一の水道橋

 南フランスの葡萄畑が広がる中の渓谷。ここに巨大な石造りの橋が存在する。これが古代ローマの水道橋ポン・デュ・ガールである。建造されたのは2000年前、人力だけで作られて今日まで立ち続けているのである。


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 橋があるのは南フランスのガルドン渓谷。現存する高さ世界一の水道橋で、その高さは49メートルもある。長さは275メートル。石灰岩の切石を積み重ねた三段構造になっていて、一番上が水路となっている。水路の深さは180センチあり、人が通れる規模。ここを2000万リットル/日の水が流れたという。決壊しないように水量は常にコントロールされていた。

 

 

都市に必要な水を確保するために投入された高度な技術

 この水道橋が建設されたのは古代ローマ都市ニームに水を運ぶためである。ローマ人は清潔な生活を送るために大量の水を必要とした。そのための大量の水が町の外から導入されたのである。水源は25キロ離れた森の中のウールの泉。ここの清浄な水を起伏を避けたりするための迂回ルート50キロで引いたのである。50キロで高低差は12メートルしかないので、自然に流れるようにするためには非常に精密な傾斜を保つ必要があった。

 そして水路建設最大の難所がガルドン渓谷だった。この渓谷を超えるのに水道橋が建設された。その強度の秘密はローマ人が得意としたアーチ工法である。これを三層重ねて荷重を分散したのだという。材料の石灰岩は近くの採石場から切り出されており、石は手作業で切り出されていた。近くで質の良い石灰岩が出ることから、ここに橋を架けることが決められたのだという。さらに土台をしっかりさせるために、渓谷の幅が狭くて岩が迫り出しているところが選ばれている。まさにローマ人の土木技術の結晶だった。

 1日半かけてここの水路を通ってニームに到着した水は配水所から各地に鉛の水道管で分配された。2万5千人の住民が1人1日800リットルもの水を使えたという。水路が完成するとニームは円形闘技場のあるローマさながらの大都市となり、そこには華やかなローマ文化が花咲いた。街道の要衝だったニームの周辺には街道や宿場町の遺跡が残っているという。ローマの文化がこの地に伝わり、さらには大規模な葡萄栽培によるワイン製造が始まったのだという。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・南仏のガルドン渓谷には、2000年前に古代ローマ帝国が築いた高さ49メートルの水道橋が立っている
・この水道橋は近くのニームにローマ帝国の都市が建設される際に、必要な水を運ぶために築かれた。
・水源はニームから25キロ離れたウールの泉であり、そこから全長50キロの水路で水を運んでいる。
・途中でガルドン渓谷を超えるために水道橋が建設された。石灰岩を積み上げた三層のアーチ構造からなっており、建材の石灰岩は近くの石切場から手で切り出された。
・この水路が完成すると、ニームの2万5千人の住民が1人1日800リットルも使える量の水が輸送された。
・ニームが発展することで周辺に街道なども整備され、さらには大規模な葡萄栽培によるワイン製造なども行われた。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・古代ローマの土木技術に関しては本当に圧巻です。何しろ当時のローマ兵団と言えば、土木工事軍団でもありましたから。とにかく街道と都市を造ってから侵攻するのがローマ帝国だったので。前線基地が今でも残る都市になっているぐらい。

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