教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

4/27 NHK 歴史探偵「ヒーロー 源義経」

義経の肖像画をシブサワ・コウ氏に依頼

 今回のテーマは大河ドラマも関連して源義経。源義経を演じる菅田将暉・・・でなくて、なぜか範頼の迫田孝也をゲストに迎えての内容となっている。

 まずは義経のイメージと言うことで、何とシブサワ・コウに依頼して義経の肖像を描いてもらおうという贅沢なプロジェクトから始まっている。大河ドラマの関係で仕事の縁があるNHKだからできた無茶ではないかという気も。

 ゲームなんかによく登場する肖像であるが、やはりポイントとなるのは史実などに残る養子に纏わる情報、さらには人生におけるどういう場面を想定するかという背景が肖像にとって重要とのこと。で、やはり義経と言えば鵯越の逆落としの場面を想定した肖像画を依頼することに。

 歴史事実を監修するのは義経オタの歴史学者の前川佳代氏。彼女の話によると「義経は前歯が大きかった」という話が記載されているという(これは私も聞いたことがある)。このような情報に基づいて上がってきた原案(いかにも光栄のゲームに出て来そうな濃い男前原画である)を修正していく。さらに彼女の話によると奇襲のために密かに進んでいたわけだから、口はあまり大きく開かない。さらに髭が濃かったという話があるなどの修正を加え、最後は明らかに個人的要望で義経は若かったということと、やはりイケメンイメージということで出来上がった肖像は、当然のように明石家さんまにはならず、少々前歯が大きめだが凜々しいイケメン像となる。

 番組では悪ノリついでに範頼と比企能員の肖像も依頼しているが、彼らについては資料がほとんどないと言うことでほぼ自由創作。範頼は典型的な光栄的イケメンモブ顔(いくらか迫田孝也が入っている)に、比企能員は誰が見てもあからさまに分かる佐藤二朗の肖像であって大笑いというオチ。

 

 

後半は「放送素材の有効活用」です

 以上、前半はいかにもこの番組らしいバラエティ的などうでもいい話(笑)。で、後半は「実は義経は逆落としをしていない」という話になるのだが、これは明らかに4/9に放送された「決戦!源平の戦い」の流用。NHKで必ずある「放送素材の有効活用」というヤツで、一つのネタで最低三度は美味しいというパターンである。

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 内容の詳細はリンク先を読んでもらうとして、ポイントは 1.鵯越は一ノ谷とは全く別の位置にある。2.鵯越の坂は傾斜度はせいぜい40度までで当時の馬は何とか降りられる。3.ここから福原に奇襲をかけたのは現地に詳しい多田行綱。ということである。

 なお大功績を挙げた義経であるが、人間不信気味の頼朝は危険性のある人物を次々と粛正しており、義経も警戒された挙げ句に討伐対象とされ、挙兵はしたものの味方はなくついには奥州で滅ぼされる。で、中尊寺に伝わる義経の有名な肖像画は後に義経を悼んで描かれたものであるという。

中尊寺に残る有名な義経像

 以上、義経の話であるが、次週は壇ノ浦とのことだから、またも今回に続いての放送素材の有効活用となるのであろう。

 正直なところ新事実は全くなし。前半なんかはまあ面白くはあるんだが、完全に歴史バラエティで民放テイスト。ハッキリ言って完全に大河ドラマ提灯企画という以上の意味は全くない。まあいろいろな意味でこの番組らしくはある。正直、ヒストリアの頃が懐かしい・・・。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・歴史資料から源義経の肖像画作成をシブサワ・コウ氏に依頼した。
・一ノ谷と鵯越は全く別の場所であり、また逆落としをしたのも義経ではなくて多田行綱であった。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・この番組になってから内容が薄くなったのは感じてましたが、それが究極になった感があるのが今回ですね。こういう使い方をするんだったら、やっぱり佐藤二朗は不要だわ。

次回の歴史探偵

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前回の歴史探偵

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