教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

5/1 サイエンスZERO「感情の科学 "体"とつながる心の世界」

感情はどうやって生まれるのか?

 人間とは感情に支配される生き物でもある。ではその感情とは度のようにして発生しているのか。その人間の根源に関わるような研究について紹介。

 運動神経などになるべく影響を与えないように、患者を意識のある状態の元でその反応を見ながら脳手術を進める覚醒下手術、そのような手術を繰り返す中で、名古屋大学の木村和也准教授は感情に大きな影響を与えるのではないかと思われる脳の部位が見えてきたという。それは島皮質と言われる場所である。この辺りを脳梗塞などで損傷した患者が、感情の平坦化や感情表現が上手く出来ないなどの問題が発生するケースが多いという。島皮質とは体の痛みや心臓の鼓動などの体内の状態をモニタリングする場所と言われてきたが、これが感情を生み出すことにも関わっているのではないかというのである。

 

 

体からのフィードバックが感情を生んでいた?!

 慶應技術大学の梅田聡教授の研究によると、fMRIによって脳の働きを観察したところによると、島皮質が活発に働くのは感情と体の状態に対する質問をした時だということが明らかになったのだという。島皮質が感情に関わるメカニズムだが、例えばストレスなどが自律神経に伝わると血圧上昇や心拍増加などの変化が現れる。これの情報が島皮質に伝わり、それが前頭前野が認識している周囲の状況などの情報と統合され、感情として認識されるのだという。そして「怒り」という感情が沸き上がることになる。つまりは自律神経を介して体に反応が現れることが感情の発生につながっているのだという。

 と聞いたところで、つまりは体に現れる反応が感情を支配するということであり、これだと確かにいわゆる「吊り橋効果」なども綺麗に説明がつくということに行き当たる。恐怖による心拍数の増加を脳が恋愛感情による心拍数の増加と勘違いし、その結果として「私はこの人を愛しているんだ」という感情が芽生えると言うことになる。

 

 

社会性とも関係する内受容感覚

 体の状態を認識する感覚を内受容感覚というらしいが、これは個人差がある。例えば自身の心拍数をハッキリと認識できる人もいれば、全く分からないという人もいる。実はこのような差がある能力と関係しているという。武蔵野大学の今福理博准教授の研究によると、内受容感覚が鋭敏な人は他人に対する共感性が高く、社会性が高いと言うことが分かったという。

 さらに感情によって体の各部分の温度がどう変わるかを調べたところ、怒りではお腹から頭にかけての温度が上がるなど特徴的な感覚があることが分かったという(怒りで頭がカッカするというのは本当にその通りだったということだ)。また子供の時にはこの分布は単純なんだが、成長と共に細やかになってくることも分かったという。なお大人になっても感情を読み取れないような人の場合は、内受容感覚自体が全く反応ないような状況になっていたことも分かったという(冷血なヤツは本当に冷血であるということか)。

 

 

内受容感覚と健康の関係

 感情と健康の関係も調査されている。900人の住民に対する調査の結果、自分の感情に気づきにくい人ほど慢性痛が多いことが分かったという。つまりは内受容感覚が鈍いので体の不調が早期に分からず重症化するのだという。そこで感情の方から脳を訓練して内受容感覚を鍛えるという試みもなされている。

 ちなみにこの感覚が強すぎても過敏性腸症候群などの病気につながるという。治療として、あえて刺激を与えることでこれらの刺激に慣れることで過剰な反応を抑えるという治療法も実施されているという。また不安を感じやすい人などは、実際に自分の心拍を測定士ながら心臓の動きに注目、そのズレを修正するという訓練があると言う。実は内受容感覚が鋭すぎても心拍を正しく認識できないので、それが修正されることで不安も治まってくるのだという。この時、島皮質が前頭前野とより強く結びつくようになることが分かったという(理性が本能を抑制するということだろうか)


 感情という分かりにくい分野を脳の働きから解明しようという研究。非常に興味深いところである。しかしこうして見ていると、やはり自分の痛みを感じられない人間は他人の痛みに極めて鈍感であるというような事実などもなるほどと理解できたりするから面白いところである。要は己の状態さえ把握できないヤツが、他人の状態に思い至るなど到底不可能であるということであり、確かに己が見えていないものほど他者に対して尊大だったら攻撃的だったりするななんてことも。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・感情に大きく関わる脳の部位として島皮質が浮上してきた。島皮質は本来は体の状態をモニターする部位と言われている。
・つまりは自律神経の働きなどで体に反応が現れると、その状態が島皮質にフィードバックされ、その情報が前頭前野が認識している周囲の状況などと組み合わされて感情が発生しているのではという。
・体の状態を認識するのは内受容感覚であるが、これが敏感な人ほど他人に対する共感力が高く、社会性が高いという研究結果がある。
・また感情と体の関係は成長するにつれて発達し、それが繊細な感情に結びつくという。
・内受容感覚が鈍いと病気の早期発見が難しいために悪化して慢性痛につながるという。しかしこれが敏感すぎても病気につながるために、適度にコントロールする訓練などもなされている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・禅などは己の内部を認識する訓練という側面もありますが、結局は己を知ることが他人をも思いやることにつながるということのようでもあります。これは興味深い。

前回のサイエンスZERO

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