教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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番組リスト

5/29 TBS系 世界遺産「海底から山まで奇岩だらけ!フランスの秘境・コルシカ島」

奇岩の島・コルシカ島

 今回の舞台はフランスのコルシカ島。この島の北西部のジロラッタ湾やポルト湾の沿岸が世界遺産となっている。コルシカ島はナポレオンの出身地として知られるが、この島は地中海の奇岩の島である。


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 コルシカ島は地中海にそそり立つ山といわれている山がちの島である。太古の地殻変動で生まれたこの島には2000メートル級の山が存在し、人間が住みにくいためにフランスの秘境と呼ばれてきた。ポルト湾にはまるで積み木を重ねたような奇岩がそびえる。そして入り組んだ海岸の赤い断崖は花崗岩で出来ている。赤い色は酸化した鉄分によるものである。コルシカ島はかつて大陸の一部で、2億年以上前に地底の花崗岩が隆起し、それが地殻変動で大陸から切り離されて島となった。

 この赤い断崖には蜂の巣のような小さな穴が無数にある。これらの穴はタフォニと呼ばれているが、これはコルシカの言葉で穴という意味である。固い花崗岩にこんな穴が開いたメカニズムは海にある。塩分を含んだ波しぶきが岩に吹き付けると、岩場の小さな穴の中で乾燥して塩分が結晶化し、その際に膨張して少しずつ岩を削るのだという。

 

 

天国への階段

 ポルト湾の南岸には世界遺産のピアナのカランケが存在する。これは奇岩の岬という意味である。ここには様々なユニークな形のタフォニが存在する。この島は海岸から山まで奇岩だらけなのである。また南端のポニファシオには白い断崖が存在する。町はこの60メートルの絶壁の上である。この断崖は石灰質の地層であり、海底から隆起したものである。

 スカンドラ保護区は貴重な海鳥などを守るために上陸が禁止されている。ここの海岸には柱のような形の岩が積み重なって存在する。これらは天国への階段のように見えるが、溶岩が冷えて固まる時に出来た柱状節理である。粘度の低い溶岩が地表でゆっくりと冷え固まって生じたものである。

 さらにこの奇岩は海中にも続いている。海中にも天国への石段は続いており、またタフォニが存在している。これらは本来陸上で出来るものである。これらが海中にあるわけは、2万年前の氷河期に生成した奇岩が、その後に海面上昇で海面下に沈んだのである。

 またコルシカ島では貴重な赤い宝石が産出する。本来は深い海に棲息するものだが、ここでは浅い海で見つけることが出来るという。それが地中海紅サンゴ。古くから海の宝石として知られている。光合成をしないので太陽の光を必要としないので、窪みの多い岩場の太陽の光が遮られたところで棲息している。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・フランスのコルシカ島は、地中から隆起した花崗岩が分離した島で、山がちで人が暮らしにくいことからフランスの秘境と言われた。
・ポルト湾には花崗岩による赤い断崖があるが、そこにはタフォニと呼ばれる無数の穴がある。これは吹き付けた波しぶきが乾燥する際に生じた塩の結晶によって岩が削られて開いた穴である。
・また天国への階段とも言われる岩の柱が多数存在するが、これらは溶岩がゆっくり冷え固まって生じた柱状節理である。
・これらの柱状節理やタフォニは海中にも存在する。2万年前の氷河期の海面低下で生成したものが、その後に海中に沈んだのである。
・窪みの多い岩場には、太陽の光を必要とせずに本来は深海で棲息する地中海紅サンゴの姿を見ることも出来る。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・コルシカ島ってもっと普通の島かと思ってましたが、これはかなり険しい島ですね。よくまあこんな島に町を作れたもんだと思うところ。

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