教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/1 NHK 歴史探偵「幻の東京大改造計画」

明治時代の東京大改造

 今回は明治時代の幻の東京大改造計画について。これは京の町並みを一気に西洋風のものに作り替えようという壮大なものだったという。

 最初に登場するのは、明治19年に描かれたという幻の東京大改造計画の図面。これによると放射状の道路や大通りなどを配し、西洋の宮殿のような国会や皇居などの公共建造物を建てるという大改造計画になっているという。

 なお当時の大改造計画の痕跡として残っているのが法務相旧本館だという。国の重要文化財であるが、第二次大戦で床と壁の一部を残して焼失し、現在のものは平成時代に元の形に復元したものだという。当時のヨーロッパで流行していたネオバロック形式の風格ある建物である。

 なおこの建物はレンガ造りであるが、当時の日本ではレンガ造りの建物を増やすことで西洋化しようという考えが強かったという。そしてわずか5年で作られたレンガ造りの町が銀座であった。道幅を江戸時代の倍に広げ、歩道と車道を分けた。日本初の歩車分離だという。そして町並みはアーケードとテラスを備えたものとなった。

 

 

レンガ大量生産用の窯まで建設したものの

 このレンガを調達するために建設された施設が栃木県に残っている。それはホフマン窯という円形の巨大な炉であり、この中でレンガを順番に焼いたのだという。こうして大量に製造されたレンガが銀座の町づくりに使用されたという。

 しかし結果としては銀座の町づくりは失敗したという。というのはレンガを使った建築に慣れていなかったことから技術的に未熟で、雨漏りの発生でテナントが大量に逃げ出すなんてことが起こったという。

 そして明治の中頃で再びレンガを用いた東京の大改造計画が浮上する。その時の図面がドイツのベルリン工科大学に残っているという。そこにあるのは宮殿のような国会議事堂の図面や皇居、裁判所などの6つの公共建築のものである。これらはドイツのベックマンとエンデが日本政府の依頼に応じて描いたものだという。明治政府がこのような町づくりを急いだのは、不平等条約改定を目指す井上馨の思惑があったという。日本は文明国であるというアピールして条約改定の足がかりにと考えたのだという。当時のドイツは新興国でベルリンの大改造中だったので、そのドイツに設計を依頼することになったのだという。しかし条約改定は頓挫、井上馨が引責辞任したことで東京大改造計画は幻と終わったのだという。

 

 

 というわけで明治の東京改造計画であるのだが・・・。まあ話は面白なくはないが、相も変わらず内容が薄い。前回同様、当時の図面をCGで再現なんてことをしているが、これも蛇足感が強い。

 そして例によっての佐藤二朗の無駄話の多さ。結局は内容の薄さを無駄話で補っている感があり、それがこの番組のもっとも感心しないところ。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・明治時代に東京の町並みをレンガ造りの西洋風のものに作り替える計画があった。
・そのために必要な大量のレンガを製造するための炉も建設された。まずは明治初期に銀座がレンガ造りの町並みに改造されたが、製造技術の未熟さなどから雨漏りが発生して町づくりは頓挫したという。
・次に明治中期に東京大改造計画が立案させる。これは不平等条約改定を目指す井上馨が、日本が文明国であることをアピールすることを目的としていた。
・建物の設計は、当時ベルリン改造に取り組んでいたドイツに依頼され、国会議事堂の図面などが製作された。
・しかし条約改正は頓挫、井上馨が引責辞任したことで東京改造計画も頓挫する。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・まあそれでも何だかんだで東京にレンガ造りの建物が増えるんだが、それらの建物の耐震性のなさが関東大震災で致命的な結果につながることになる。結局は欧米と日本の風土の違いを無視したのが失敗の元。当時は何でも欧米に倣えだったので、その辺りまで思考が行っていなかったわけである。

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