教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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6/12 サイエンスZERO「軽石漂着の謎に迫れ 最新報告!海底火山"福徳岡ノ場"」

海底調査から分かった事実

 沖縄に大量の軽石が漂着して社会問題となったのが福徳岡ノ場の海底火山噴火。実はこの火山は遠く離れた小笠原沖にある。一体何が起こったかを最新情報を交えて紹介。

 まず福徳岡ノ場の場所だが、東京から南へ1300キロ、近くの無人島である父島、母島からも300キロも離れた位置にある。ここはプレート境界で海底火山が連なっている場所でもある。

 海底火山の噴火は捕らえにくいのだが、今回は空気の振動をさらえる空振計で噴火の様子を捕らえることに成功したという。噴煙が収まった後も3日ほど噴火が続いていたことがそれによって分かったという。

 そして噴出物の回収のために調査船が派遣された。しかし台風の接近で調査機関が大幅に短縮されることになってしまったという。海底にサンプル採取用の機械を送り込んで、それで海底の噴出物を収集する。海底の地層をそのまま観察できるのだという。中には貴重な黒曜石(黒曜石はガスなどの物質を含んだまま固まるのでそれらの成分が分かる)などのサンプルも見つかって火山のさらなる情報が得られることが期待されているという。さらには珍しい生物のサンプルも得られ、海底の生態系の復活の過程も観察できるのではとしている。

 

 

軽石に纏わる研究結果

 また軽石の分析によって分かったこともある。白っぽい軽石と黒っぽい軽石が混合していたことから、深いところにあるマグマが上がってきて浅いところのマグマと混合するマグマ混合が起こったと推測していたのだが、実は成分を分析したところほとんど違いが無いことを判明したのだという。では大噴火の原因だが、さらに徹底的に分析した結果、黒いところには磁鉄鉱がナノサイズで含まれていることが分かり、これによってマグマの粘性が上がったことで爆発的な噴火が起こったのだという。深いマグマが上がってきてその熱などによって浅いマグマの中に磁鉄鉱のナノ粒子が析出したのだという。

 今回は軽石の漂着で大きな被害が出たが、この神出鬼没の軽石の動きを予測しようとしたのが海流シュミレーションの専門家である美山透氏。黒潮の南側の黒潮反流という流れによって軽石が西に押し寄せたというのである。さらに実際の軽石の位置情報のデータを加えるためにJAXAの気候変動観測衛星しきさいのデータを使用したという。観測波長を選ぶことで軽石の位置が明確に見えたという。このデータから、今後同様なことが発生した時にはいち早く軽石の予測が可能になるという。

 また海面を浮遊する軽石が固まって流れているものは軽石いかだと呼ばれるが、この軽石いかだには様々な生物が付着して繁殖していることも確認されたという。それによって生物が遠くに運ばれて生物多様性を保っていることも考えられる。

 

 

 そう言えば一時期大騒ぎになっていたのだが、喉元過ぎればというか、もう沖縄の海は回復したんだろうか? 

 大規模災害でもあるわけだが、やはり研究者はこういう未知の現象が起こるとどうしてもワクワクするのは抑えられない模様。番組にゲストで登場していた研究者も、かなりテンションが上がり気味なのが感じられた。火山の研究って結構進んでいるという風に私は思っていたのだが、やっぱり専門家からするとまだまだ未知の現象が多いらしい。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・沖縄に大量の軽石が漂着して社会問題となった福徳岡ノ場の海底火山噴火。その後の調査でその詳細が分かってきた。
・まず調査船が海底の堆積物を採取して分析を行っており、これらは火山活動の解明につながると期待されている。
・また軽石の調査から、当初に予測してたマグマ混合による噴火ではなく、下から上がってきたマグマによって浅い位置のマグマ中で磁鉄鉱のナノ粒子が析出、マグマの粘度が上がることで爆発的噴火になったというメカニズムが推測されている。
・今後の軽石被害の防止のために、海流のシミュレーションによって軽石の漂着先を予測する研究もなされている。
・また軽石が集まった軽石いかだには多くの生物が付着していることが分かっており、これが世界中に生物が拡散する原動力にもなっているという。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・噴火はともかくとして軽石いかだってのは初めて聞いたな。確かにイソギンチャクとかは何かに付着しないと生きていけないんだが、漂流する軽石にも付着すると言うわけか。イソギンチャクが付着するということはサンゴ虫もだろうから、確かにサンゴ礁の維持に関係していそうだ。

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