教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

6/14 BSプレミアム プロジェクトX 挑戦者たち(リストア版)「ツッパリ生徒と泣き虫先生~伏見工業ラグビー部・日本一への挑戦~」(2000年11月21日放送)

教育界の伝説の物語登場

 ドラマ「スクールウォーズ」の元ネタにもなった熱い実話で、さらには一躍この番組が脚光を浴びる1つの切っ掛けにもなった教育界の伝説の話が登場です。正直なところ血と汗と涙のかなり暑苦しい話なので、今時の世の中にはどうなんだろうってところもありますが、昭和人間の魂にはビンビンと来る話です。では私のかつてのアーカイブから。

 

 

プロジェクトX 挑戦者たち(リストア版)「ツッパリ生徒と泣き虫先生~伏見工業ラグビー部・日本一への挑戦~」

 元日本代表のラグビー選手だった教師が、荒廃していた学校をラグビーで立て直し、ついには日本一にまでなるという教育界での伝説的エピソードが今回のテーマである。なおこれは、往年の大映ドラマ「スクールウォーズ」の原作でもある。

 新任教師として伏見工業高校に就任した山口良治(「スクールウォーズ」では山下真二が演じてましたね)。彼は学生達にラグビーを教えようと意欲に燃えていた。しかし彼が赴任した伏見工業高校は京都一荒れていると言われている学校だった。校庭をバイクが走り回り、ガラスは割られ、授業を聞く生徒は全くいない。それはとても学校と言えるものではなかった。しかも彼が率いることになったラグビー部はツッパリ生徒の集まりであった。

 彼はこの学校を立て直すべく奮闘し、その彼に触発されて他の教師の中からも協力者が現れる。そして彼はラグビーで日本一になることで生徒達に誇りを持たせようとする。

 しかし彼の思いにもかかわらず、ツッパリばかりのラグビー部員達は全くついてこなかった。部員達は彼に対して強烈な敵対心を抱いていたのだった。

 そんな彼等が変わるきっかけになったのは名門花園高校との試合だった。この試合で伏見工業は一方的にトライを決められ続け、112対0という記録的惨敗をする。そしてこの試合後の山口の「お疲れさん、けがはなかったか。悔しかったやろうな・・・」の言葉に、ツッパリの小畑が「俺は悔しい!」と地面に泣き崩れる。そして部員全員が泣き崩れる。これがきっかけになって彼等は一体となって猛練習を始めることになる。この後、いろいろと問題もありながらも、山口は生徒達を信頼し続け、生徒達もラグビーに打ち込んでいく。

 こうして一端落ち着いた伏見工業だが、翌年の春に衝撃が走る。京都一のワルと言われ、「八坂の清悟」と恐れられた山本清悟(ドラマでは松村雄基が演じてました)が入学して来ることになったのだ。しかし山口は「ラグビーはケンカと同じだ」と言って、彼をラグビー部に引き込む。練習についていけず一度はラグビー部をやめようとする清悟も山口の心遣いに踏みとどまり、ラグビー部の一員として練習に励む。

 そしてその年、伏見工業は花園高校を破り京都一となる。そしてその後、ついに日本一になる。

 

 

 スクールウォーズが結構好きだった私としては、この番組を見ながらも「おっ、これが松村雄基か。これは岩崎良美だな」などと言いながら見ていた。さすがに梅宮辰夫のラーメン屋は出てこなかったようだ(笑)。今回に限ってはOPは「地上の星」よりも「ヒーロー」の方が良かったのではとも思われた(笑)。

 しかし事実の方がフィクションよりも感動的な部分も多かった。もっとも感動的だったのは、その後のツッパリ生徒達が今はみんな立派に活躍している(建設会社の社長だったり、海外の企業で技術者になっていたり、あの清悟に至っては教師になっている)ことだ。みんなこれは山口先生のおかげだと言っていた。彼が生徒と真っ正面から向かい合ったからこそ奇跡が可能となったのだろう。

 またタイトルでも「泣き虫先生」と書いてあるが、山口氏が本当に涙もろかったのは印象的だった。この番組のインタビュー中でも一体何回泣いていただろうか。実に熱い人物である。

 

 

 以上、アーカイブから。この番組も冒頭の廊下をバイクで突っ走るシーンなど、多分に「スクールウォーズ」を意識していたのは匂わせていたが、あくまでドキュメントとしてドラマとは違う本当のエピソードを淡々と放送してたのが印象的です。なおこのエピソードは未だに教育界の伝説として何かの場面で出てくることがあります。

 既に時代は過ぎて、今やこの伝説の伝承者は山口氏から「弥栄の清悟」こと山本清悟氏に移っていて、今度は彼が生徒達を指導する立場になっているとか。彼は山口氏の指導の下でラグビーの才能を開花させて、選手として大成してから自ら教師になったということなので、余程山口氏をリスペクトしてるだなということが伝わってきました。なおこの山本清悟氏も既に定年退職したというのだから、もう昔の話だよなという気持ちがビンビン。今時の不良はこの時代よりもある種屈折しているので、より扱いは難しくなっているのではって気もしたりする。