教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

10/12 NHK 歴史探偵「3代将軍 源実朝」

またも大河宣伝企画です

 つい先日「英雄たちの選択」で源実朝をやった直後なのに、なんでまた実朝なんだと思ったら、どうやら大河の宣伝のようですね。この番組ってそれでなくても中身が薄いのにこういうのばかり。で、いかにもこの番組らしく、実朝を演じる柿沢勇人氏がゲストに登場という、どうでもいいいかにもこの番組らしい内容。

 

 

将軍の権威をかけた唐船建設は実は勝算があった

 まずは実朝といえばお飾りで何も出来ない将軍だとされていたが、そうではなかったという英雄たちの選択で登場した話で、実朝が建造しようとした唐船の話が登場する。で、実朝が建造しようとしていた唐船はどんなものかと推測しているのだが、約200人が乗船するという当時には前代未聞の大きさの船だったと考えられるという。実朝はこの船で唐と交易することで経済を発達させることを考えていたというわけである。

 しかしこの突貫作業で5ヶ月で完成させた巨船は海に浮かぶことが出来なかったわけであるが、なぜそんなことになったかを分析している。

 まずは由比ヶ浜の遠浅の地形が致命傷になったのだが、そんなことは誰もが分かっていたはずである。一応勝算はあったはずだという。ただこのサイズの船の喫水線は3メートルは必要なはず。しかし由比ヶ浜の水深は1メートルほど、ではそれをどうやって稼ぐか。文献によると進水式は由比ヶ浦で行われたとあるという。浦というのは海が内陸に入り込んで砂州などで仕切られたところで、外海よりも50センチ高かったという。ここをドックにしたらしい。さらに実朝が進水式をしたのは大潮の時で、この時になると150センチは潮位が高くなるという。すると合計3メートルでギリギリ可能・・・なはずだったのだという。しかし計算違いは由比ヶ浦の地形で、複雑すぎる海底地形のせいで3メートルを確保することが出来なかったということらしい。また建造を指揮した中国の僧が造船の専門家でなかった(仏像の鋳造なら長けていたらしいが)ということもあったという。

 

 

公暁による実朝暗殺の黒幕は?

 朝廷との関係を良好にすることを考えていた実朝だが、後継者に後鳥羽上皇の皇子を据えようとしたことで兄の息子である公暁に暗殺されることになる。しかしこの暗殺には黒幕がいるのではないかという説は以前よりある。ここで上げられるのは北条義時と三浦義村。で、これを元刑事と歴史学者が調べる・・・というのだが、これってまるっきり昔あった歴史科学捜査班。あの番組でも散々「聞き込みも物証調査も出来ない歴史事件に刑事を引っ張ってきて何になるんだ」と言ってきたのだが、この番組でも全く一緒。結局は義時の要人警護がなっていないなどの話は出るが、吾妻鏡では突然に義時が土壇場で実朝を1人で行かせたとなっているが、愚管抄では義時は実朝に中門で待機するように命じられていたとのことで、義時黒幕説は消えたとしている。次の三浦義村であるが、義村と実朝を葬ったところで、政子もいる状況でテロに走った公暁が将軍になれるなんてことはないとのことで終了。結局は公暁の単独犯説(劇場型犯罪)ということで決着がつく・・・なんちゅう無駄な展開。

 

 と言うわけで、内容的には上記の2点だけ。後はゲストと佐藤二朗のグダグダの無駄話。柿沢勇人氏は歴史のことはほとんど知らないようだし、佐藤二朗は元々喋りがグダグダなので中身のない話ばかりで水増しで番組がつまらんつまらん。いかにもこの番組らしいひどい内容である。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・実朝は自らの権威を示すと共に、唐との交易を考えて巨大な唐船の建造を行う。
・建造は由比ヶ浦で行われ、由比ヶ浜よりも水位が高い上に大潮の水位上昇を考えれば、ギリギリ進水は可能なはずであったが、由比ヶ浦の複雑な海底地形のせいで失敗した。
・公暁による実朝暗殺について、北条義時黒幕説、三浦義村黒幕説などがあるが、状況から考えると公暁の単独犯行が妥当である。

 

忙しくない方のためのどうでもよい点

・本当に毎度のことながらこの番組の無駄の多さと中身の薄さに嫌になる。佐藤二朗を外して抜本的に番組のあり方を変えて欲しいところ。

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