教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

11/6 サイエンスZERO「人類の"宇宙観"を変える!ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」

新宇宙望遠鏡で宇宙の創世時の姿を観測する

 天文学の新しい時代を作ると言われているのがジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。長さ21メートル、幅14メートル、高さ8メートルという巨体で、今までの常識を越える鮮明な宇宙画像を集めている。これまでのハッブル宇宙望遠鏡と比較すると鏡の大きさは面積で6倍となっており、精度は数十倍になるという。さらに可視光線を捕らえるハッブルに対して、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線を捕らえるために、より遠くの星を見ることが出来るという。

 東京大学の播金優一助教は最遠方銀河の候補を見つけた人物。遠くの銀河を観測するということは、それだけ古い宇宙の姿を観測できることになる。彼が見つけた銀河は135億年前のもので、これはビックバン後わずか3億年の銀河ということになる。そしてその播金氏がジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の写真を解析したところ、2.8マイクロメートルという波長に注目して、さらに遠方の銀河を見つけることに取り組んだという。その結果、136億年前の銀河を見つけることが出来た。

 

 

さらには赤外線の使用で地球外生命の探査も

 ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が赤外線を使用するのは、宇宙が膨張しているために遠い天体からの光は赤外線領域の光線になるからだという。しかし赤外線の観測装置を作るのは簡単ではなかったという。まず精度の高い赤外線測定装置を作り、それをメンテナンスが出来ない宇宙で運用し続ける信頼性を確保すること。さらに赤外線測定装置は太陽光に弱いのでその対策として、大きな日よけを付けることになった。その結果、望遠鏡部分はマイナス273度の超低温となっているという。観測装置の信頼性を確認するために、超低温で真空のテスト装置に入れての実験をしたという。

 さらにこの望遠鏡は地球外生命の探査も期待されている。系外惑星について、生物と関連が深い考えられるメタンや酸素などの有無を測定するのだという。方法は惑星が恒星の前を横切る時にどれだけの光が吸収されたかを見れば、大気の成分が推測できるという。実際に系外惑星の大気の二酸化炭素の存在が確認されたという。今後、さらにオゾンやメタンなど他の成分について測定すれば生命の可能性を確認できるのではという。

 

 

 以上、新型宇宙望遠鏡についての紹介。科学の世界は新しい装置が実用化されるごとに新しい発見が生まれ、それが過去の定説を書き換えていくものですが、宇宙に関してはそれがかなり顕著です。かつては少しでも遠くを見たいと、なるべく空気の薄い高地に巨大な望遠鏡を建設したが、それがとうとう宇宙に天文台を打ち上げる時代になったということ。ハッブル宇宙望遠鏡でも十分にインパクトがあったのだが、今度のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はそのインパクトは数十倍と言うところ。

 やはり最先端の科学は、人殺しの技術ではなくて、こういう分野にこそ投入して欲しいというものだとつくづく感じるところ。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は従来のハッブル宇宙望遠鏡に比べ、鏡の大きさが6倍となっており、精度は数十倍という画期的なもの。これを使った観測が大きな反響を呼んでいる。
・まず遠方の銀河を観測することによって、宇宙の創成期の情報を得ることができる。現在、136億年前のものと思われる銀河が観測されており、これはビッグバンのわずか2億年後のものである。
・ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡では膨張する銀河を測定するために赤外線を使用しているが、信頼性の高い赤外線観測装置を作るのは大変だし、さらには太陽の影響を防ぐために日よけを装備する必要があった。
・ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使って、系外惑星の大気の成分の測定が可能となったことから、生命の可能性を確認することが出来るのではないかと期待されている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・それにしても億年なんて単位が簡単に出てきて、しかも2億年が「わずか」という世界ですから、正直なところ頭が飛びそうになりますね。どうしても宇宙の話はスケールが壮大すぎて感覚がついていかない。宇宙を考えるほど、己の小ささが嫌になってくる。

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