教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

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11/7 BS-TBS にっぽん!歴史鑑定「源氏物語から見る平安貴族の世界」

源氏物語と貴族の生活

 この番組は今まで平安貴族の生活を紹介するという内容を何度か放送しているが、今回は源氏物語から平安貴族の生活を見てみようという内容。何だかんだで源氏物語のあらすじ紹介でもある。

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貴族に落とされた皇子の光源氏

 源氏物語の主人公は麗しの貴公子・光源氏であるが、彼の人生のスタートは悲劇から始まるという。彼の父は天皇である桐壺帝で、母は桐壺帝の寵愛を得た桐壺更衣である。しかし桐壺更衣は桐壺帝の寵愛を独占したことで、外の后から嫉妬されてイジメを受けることになる。そしてその心労から光源氏が3才の時に亡くなってしまう。結局は光源氏のその後の女性遍歴は母の面影を求めてのマザコン行為でもあることになる。

 光源氏は桐壺更衣の死後に皇子であるにも関わらず臣下の身分に落とされてしまう。その理由については占いの結果が悪かったからということになっているが、実際は皇子が天皇になるには母の身分が高く、さらに外戚として貢献になる有力者の祖父が健在であることが重要であるという。しかし桐壺更衣は帝の后の中では身分が最も低い更衣であり、さらに父は既に亡くなっていたことから、光源氏が天皇になれる可能性は全くなかったという。だから天皇になれないのに宮中で飼い殺しになるぐらいなら、貴族に落として自由の身にする方が良いだろうという桐壺帝の親心とも考えられるという。

 

 

夕顔と当時の貴族の食生活

 光源氏の女性遍歴の最初の頃に登場するのが夕顔。当時の光源氏は葵の上という奥方と六条御息所という年上の愛人がいたという。しかし共に身分が高いので気疲れしていたのではという。これに対して夕顔は庶民に近い生活をしている人物であったという。朝顔は貴族の観賞用に対し、瓜科の夕顔は庶民の食用の植物で、彼女が夕顔と言われていることでその境遇を示しているという。彼女は元々は貴族であるが、父の死後に頭中将に見初められたものの、その妻に疎んじられたことから庶民の町である五条に身を隠していたのだという。

 なおこの頃の貴族の食べ物については鮎やいしぶしを食べていたことなどの記述が源氏物語にあるという。鮎は桂川のもので上級貴族しか食べられないものだという。これを生のまま膾で食べたという(寄生虫が怖いな)。また野菜や肉類、魚介に海藻など貴族の食生活は比較的豊富で、調理法は炙り物、煮物、蒸し物、干物、漬物などがあり、調味料は酒、酢、塩、醤(味噌のようなもの)であり自由に味付けて食べていたという。また干した強飯に氷水をかけた水飯などがあったという。ちなみに冬の氷を氷室で保管して夏に使用するということも行われていて、その氷室を管理するまで役職まで存在したという。

 夕顔との恋愛は和歌のやりとりから始まるのだが、これは当時の平安貴族の普通の恋愛模様であり、成人した女性は男性に顔を見せないことになっていたから、和歌の技倆は恋愛のための重要素養であったという。そのために顔を見てビックリと言うこともあったとか。光源氏は夕顔に夢中になるのだが、その夕顔は物の怪に取り憑かれて亡くなってしまう。この時代は医学も発達しておらず、衛生状態も悪いので、若くして突然に亡くなるというのは日常茶飯事で、そのような凶事はすべて物の怪のせいとされた。

 

 

プリセスメーカーを開始する光源氏

 その後の光源氏は若紫という10才の少女を見つけ、自分の屋敷に連れ帰ると好みの女性として育てるプリンセスメーカーを始める。なお若紫は桐壺帝の新しい后である藤壺の宮に彼女が似ていたからとのことで、藤壺の宮は光源氏の母の桐壺更衣に似ており、マザコン光源氏は藤壺の宮に道ならぬ恋をしていた。なお若紫は藤壺の宮の姪だという。

 なお光源氏が若紫を見つけるシーンには雀が描かれているが、雀は雛から育てると人に懐くために、この時代にはペットとしてよく飼われていたという。またこの時代のペットには猫もいるという。昔は猫は中国から導入されたとされていたが、最近の研究では古くから日本にいたことが判明している。

 この後、光源氏はついに藤壺の宮と密通して、彼女が懐妊するという超昼メロ展開をする。生まれた御子は桐壺帝の皇子として育てられるという(とんでもないな)。そして葵の上が物の怪に取り憑かれて亡くなると、光源氏は喪が明けた後に若紫と結婚して、彼女は紫の上と呼ばれるようになる。

 光源氏の父の桐壺帝が崩御して光源氏の母違いの兄が朱雀帝となると、光源氏は須磨に身を隠すことになる。これは光源氏が朱雀帝の寵愛する朧月夜と光源氏が密会していたからだという。これが発覚すると当時は死罪はなかったらしいが、それに匹敵する重罪である流罪に処される可能性がある。そこで光源氏は遠方に流罪になる前に先手を打って須磨に身を隠したのだという。このまま二度と今日に復帰することはないかと思われた光源氏であるが、朱雀帝が桐壺帝の夢を見た後に眼病を患い、その原因が光源氏に対する不遇の扱いに対する桐壺帝の呪いだとして光源氏が呼び戻されたのだという。後に朱雀帝が退位すると、次の冷泉帝となったのは実は光源氏と藤壺の宮の間の子であった。ここから光源氏は出世をし、内大臣にまでなる。

 

 

当時の貴族遊びと終活

 なお当時の貴族の遊びとして絵合の場面が登場するが、これは左右の組でどちらの絵が上手いかを競うのだという。この時代には物合わせという様々な物(草花の美しさを競ったり、歌を競ったりなど)を競うということが流行っていたという。光源氏は冷泉帝の后を競う絵合わせで勝利し、養女を冷泉帝の后としたことで光源氏は栄華を極めることになる。光源氏はその恋愛経験を活かして、養女玉鬘(夕顔の娘)に対して恋愛のテクニックを伝授したという。夜に訪ねてきた男性のために蛍の光で玉鬘の姿を浮かび上がらせるなんてテクニックも駆使してその恋愛を盛り上げたという。

 紫の上に先立たれた光源氏は、悲しみの中で出家に向けた準備を始める。この時の光源氏は彼が自分の父親だと知った冷泉帝によって上皇に準じた地位を与えられていた。光源氏は紫の上からの手紙を燃やし、他の女性の手紙を燃やすという終活に入るという。そして出家した光源氏は間もなく亡くなる。


 以上、源氏物語のあらすじと共に、そこに描かれた当時の平安貴族の生活について。しかしこうして見てみると、光源氏って本当に恋愛しかしていないよな・・・。当時の貴族の仕事ってこれしかなかったんだろうか?

 

 

忙しい方のための今回の要点

・源氏物語のあらすじ紹介をしながら当時の平安貴族の生活を紹介。
・光源氏は母親が更衣と后の中で位が低かった上に、後見となる祖父は既に以下なったことから皇子でありながら皇位継承権はほぼなかったことから、貴族の身分に落とされたが、これは自由を与えるというむしろ父の桐壺帝の親心であった。
・光源氏は夕顔と恋に落ちるが、夕顔は当時は食用に栽培されており、彼女が庶民に近い生活をしていたことを示しているという。
・当時の貴族は結構あらゆる食材を食べており、調味料は酒、塩、酢、醤の4種を好みで使っていた。
・夕顔は物の怪に取り憑かれて死んだとなっているが、当時は医学も発達していなかったことからこのような凶事はすべて物の怪のせいとされていた。
・その後、光源氏は恋い焦がれる藤壺の宮の姪である若紫を引き取って自分好みの女性に育てようとする。
・ついに光源氏は藤壺の宮と密通、彼女は懐妊するがその皇子は桐壺帝の子として育てられる。
・桐壺帝の死後、朱雀帝の時代になると、朱雀帝の寵愛した朧月夜と密通しいた光源氏は流罪を避けるために自ら須磨に隠れる。
・しかし朱雀帝の眼病が光源氏を冷遇したことに対する桐壺帝の呪いとされ、光源氏は許されて京に帰ってくる。
・朱雀帝の退位後は彼の子である冷泉帝の時代となり、光源氏は内大臣にまで出世する。
・この時代の娯楽は物合わせといって、左右二組で植物の美しさや歌などを競うのが流行っていたという。この勝負で光源氏の養女が冷泉帝の后となり、光源氏は栄華を極めることに。
・しかし光源氏の妻となっていた紫の上が亡くなり、光源氏は出家するための終活に入る。そして出家の後に間もなく亡くなる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・どうもとりとめの無いような内容でしたね。まあ源氏物語のあらすじについては今回初めて知った部分もありましたが。それにしてもやっぱりあの作品は超昼メロだな。

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