教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

12/4 サイエンスZERO「睡眠・持久力・肥満まで!腸内細菌がもたらす驚異のパワー」

腸内細菌と健康の関係

 今日のテーマは腸内細菌。この腸内細菌が様々な身体の健康につながるパワーを持っているというのである。

 腸内細菌は我々の腸内に1000種以上いると言われている。最近は解析技術の進歩で様々な細菌が見つけられるようになったという。マラソンランナーの便を調べたところ、バクテロイデス・ユニフォルミスという腸内細菌が発見され、これが記録の向上に役立っているのではと推測された。そこでその細菌をマウスに投与したところ、投与しないマウスでは15分泳ぐのが限界だったのに対し、投与したマウスは30分以上泳ぎ続けたという。そのメカニズムはバクテロイデス・ユニフォルミスが酢酸とプロピオン酸を生み出し、これらが肝臓でグルコースに変換され、これがエネルギーになっていると推測されている。腸内細菌をデザインできると、人の能力もコントロール出来るのではという。

 またブラウティア菌は肥満に関わっているという。この菌が少ないと同じ食事をしても肥満になりやすい可能性があるのだという。またラクトバチルス・プランタラムという細菌は脳に作用して睡眠に良い影響を与えるという。脳と腸は神経でつながっているので、腸が脳をコントロールする可能性が見えてきているという。

 大腸内の細菌の数は100兆個あるとのこと。ここで細菌は食物繊維などを餌にして増殖する。腸内の環境は細菌にとっては格好の住処だという。細菌は様々な物質を合成して、それをやりとりして生活しており、人はそのおこぼれに預かっているのだという。

 

 

悪化する現代人の腸内環境と、長寿地域から学ぶ腸内環境整備

 しかし現代人の腸環境は悪化しているという話がある。ラグビー部員の腸内について調べたところ、腸内環境が悪化している部員が多かったという。その原因は食生活にあり、身体を大きくしたいとタンパク質や糖質を多く摂って野菜を減らしていたことから、大腸内で炎症が増え、善玉菌の餌となる食物繊維が不足していたのだという。また腸内環境の悪化で排便が増えると腸内の酸素濃度が増えることで、より善玉菌が生息しにくくなっていたという。食生活を意識しないと腸内環境の多様性を保てないという。ちなみに古代人の便を調べたところ、現代人よりも圧倒的に腸内細菌の多様性があったという。

 長寿地域の京丹後の疫学的調査の結果、ロゼブリアやラクノスピラという酪酸産生菌が多いという結果が出たという。これらの菌は免疫や筋力との関わりが報告されているという。特にこの菌が多かった人の日常生活を見ると、自家栽培の野菜を摂ってそれを食事にしていた。様々な野菜の豊富な食生活となっていたという。酪酸産生菌が生み出した酪酸は、エネルギーとして使用される時に腸内の酸素を消費するので、酸素が少ない環境を好む菌を増やす効果があると推測されている。

 

 

 最近になって注目されることが増えた腸内細菌ですが、とにかくカオスな世界だけにまだ全てが分かっているわけではないというところです。ただここでも登場したキーワードは「多様性」。結局は腸内環境が多様性を保っているということが健康維持のためには重要ということです。ちなみに多様性の確保は社会の健康を維持するためにも重要なことであるのですが、どうもことさらに多様性を敵視して偏食を勧める輩がいるのが困ったものではあります。

 さて私の腸内環境を考えた時、私は慢性的に下痢が多いということからも、腸内環境はかなり劣悪ということが想像できます。そう言えば持久力もなければ睡眠も質が悪く、肥満に悩まされているな。

 最近は腸内環境の悪化から来る腸の障害に対して、健康な人の腸内細菌を移植する(具体的には便を腸内に吹き付けるらしい)という方法で改善する治療があるそうだが、この手法は精神的にやや抵抗があるところではあるが、今後さらに増えるかもしれないなどと思ったりもする。ちなみに今回の番組内も暈かしはかかっていたが便がそのまま登場するというかなりキツいものであった。まあ先日のヒューマニエンスでは「排泄をタブー視するな」という主旨のことを言ってはいたが。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・腸内細菌は1000種以上存在するとされているが、その中には人の健康を維持するのに有効な細菌が見つかっている。
・マラソンランナーの腸内から多数発見されたバクテロイデス・ユニフォルミスは、酢酸とプロピオン酸を生成することで肝臓内でのグルコースの生産を促すので、持久力の向上につながると考えられている。
・ブラウティア菌は肥満抑制に働いており、ラクトバチルス・プランタラムは脳に働くことで睡眠の質を向上させるという。
・しかし現代人では腸内環境は悪化している場合が多いという。それは偏った食生活などが原因となっており、食物繊維は善玉菌の餌になるので、野菜の少ない食生活は腸内環境を悪化させる。
・さらに長寿地域である京丹後の疫学調査の結果、酪酸産生菌が多いという結果が得られている。これらの菌は免疫や筋力と関わるとされており、腸内環境を改善する効果があるという。
・京丹後では自家栽培の野菜を多数摂取する食生活であり、これが腸内環境と関係していてると推測できる。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・結局は「様々な食品をバランス良く摂取する」という基本が「多様な菌のある腸内環境」の維持に重要ということで、極々当たり前の健康的な生活がやっぱり一番ですという結論になるんだよな。
・なお先週は「575でカガク」とかいうくだらない無意味な内容でしたので完全無視です。年に数回あれがありますが、何を考えてあんなもの作ってるのやら。

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