教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

2/26 TBS系 世界遺産「カナダの聖地!絶景の奇岩地帯」

カナダの奇岩の聖地

 今回はカナダの河岸の15メートルの断崖の上に並ぶ奇岩の群れ、ライティング・オン・ストーン。先住民はアイシナイピと呼ぶ。


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 カナダアルバータ州、ロッキー山脈の東に広がるグレートプレーンズと呼ばれる真っ平らな大平原、ここを流れるミルク・リバーは曲がりくねっている。この川岸に断崖があるが、その断崖の上は奇岩の群れが埋め尽くしている。フードゥーと呼ばれるまるでキノコのように地面から生えた奇岩である。中には5メートルぐらいの巨大なものもあるという。笠を被ったマッシュルームロックが多い。彫刻のようだが、これは自然に生まれたもので、笠の部分は硬い砂岩で、下の層は脆く、笠の隙間から下の岩が浸食されて今日の姿になったのだという。いずれはすべての岩が砂に戻るはずだという。少し離れたところには黒々としたお椀を伏せたような奇岩がある。これは泥岩の丘である。

 

 

先住民族が聖なるフードゥーに描いた歴史

 この地を聖地としているのが先住民族のブラックフット。この泥の丘は彼らが儀式に使うドーム型の小屋に形が似ているのだという。これは母なる大地の子宮なのだという。また丘から見える雄大な景色、聖なる山であるスイート・グラス・ヒルズが見えることも聖地となった理由だという。

 そして彼らはこの聖地の断崖に2000年に渡って絵を描いた。彼らにとってはフードゥーも神聖なものである。今でも彼らの末裔はここに礼拝に来る。断崖には狩猟の絵などが描かれているが、時が下ると丸い盾をもった戦士の像などが描かれている。

 もう一箇所の世界遺産ハーフナークーリーの方に行くと、深く抉られた大地が広がっている。今は水は雨期にしか流れないが、2万年前には氷河が溶けて大量の水が流れ、それが深い谷を刻んだのだという。こちらも崖の上にはフードゥーが並んでおり、こちらもブラックフットの聖地だという。ここには300年前の彼らの姿が描かれているが、後にヨーロッパ人がやって来ると馬が持ち込まれ、馬の姿が壁画に現れる。1730年頃に最初の馬が持ち込まれ、彼らも狩りや移動に馬を使用するようになって、生活は劇的に変化した。それだけでなくて彼らは鉄砲を使って戦争をするようにもなったという。20世紀最後の長老が描いた壁画には自動車の姿も描かれている。この地は彼らの文化を伝える地として世界遺産に選ばれた。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・カナダのライティング・オン・ストーンは断崖の上にフードゥーと呼ばれる奇岩が並ぶ土地であり、先住民族ブラックフットの聖地である。
・これらのフードゥーは砂岩の隙間から下の脆い岩が浸食されることで生成した。
・フードゥーを聖なるものと考えるブラックフットはここに多くの壁画を残している。
・もう一箇所のハーフナークーリーにもフードゥーが多くあり、ここもブラックフットの聖地だが、こちらには白人によってもたらされた馬の姿なども書かれている。
・馬が持ち込まれたことで彼らの生活は激変し、やがては銃を使った戦争なども起こるようになったという。
・一番最近の壁画には自動車の姿も描かれている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・民族がずっと壁画を描き続けてきたと言うことですね。それって彼らにとっては歴史の記録みたいなものだったんでしょうか。まあ民族のアイデンティティーですね。

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