はやぶさ2のサンプル調査最新報告
今回ははやぶさ2のサンプルリターンのその後の続報である。リュウグウからはやぶさ2が持ち帰ったサンプルの調査結果について報告。
リュウグウから持ち帰られたサンプルは地球の大気などに汚染されないように、完全に密封された状態で分析されている。注目されているのは水と有機物で、これらは地球の生命の起源の謎に迫る研究でもある。
まずはリュウグウに水が存在するかの分析であるが、サンプル中に含まれる様々な種類の岩石について放射光によるX線分析を行ったところ、サポナイト、サーペンティンという含水鉱物特有のスペクトルが見られたという。これらの鉱物は水が存在しないと生成しないので、リュウグウには水があったことを示すデータとなる。さらに内部には水の中で成長した結晶まで見られたという。これらからリュウグウはかつてかなりの量の水が存在したのは確実であるという。
水に続いて生命の元となる有機物も発見
次に有機物の分析であるが、これは宇宙から小惑星によって生命の材料が運ばれたのではないかという説の検証になる。まずはアミノ酸の分析が行われたが、その結果、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などに加えて地球上の生物は使用していない2-アミノ酪酸なども含む10種類ほどが見つかったという。これで生命外来説が補強されることになる。
さらには黒い有機物と呼ばれる高分子も検出されたという。これらは細胞膜のような構造までが存在したりするという。これらも生命の材料となるのではないかと推測できるという。
ここから考えられるリュウグウの生い立ちだが、46億年前に太陽が生まれた時に、周囲に惑星が誕生する。リュウグウは45億6600万年前に氷や岩石が集まって生成する。火星と木星の間に氷を含むかどうかのスノーラインがあるので、リュウグウは最初はその外側で生成したと考えられる。その後に放射性元素の崩壊で温まったリュウグウでは氷が溶けた水が生成、この時に有機物も生成した。そして惑星大移動によって弾き飛ばされて内部に移動したのではという。この時に他の小惑星も地球に飛来して、それが地球に水や有機物をもたらしたと推測できるという。
以上、リュウグウのサンプル分析についての最新情報について。水や有機物が発見されたとなるとかなりのビッグニュースの気がするのだが、一般にあまり発表されていないのはなぜなんだろう?
これで生命起源が地球外からという可能性が高まったわけだが、そうなるといよいよもって地球のような環境をもつ惑星は意外と多いのではないかという説も浮上してくることになる。
ところで私が前々から気になっているのは、生命と言えばタンパク質を中心とした我々地球生命体に類似したものばかりを想定しているが、本当にそれが生命のあり得る唯一の形だろうかというところである。硅素を中心とした鉱物的な生命とかはあり得ないんだろうか? 正直なところそういうところが気になっている。もっともそういう生命体が存在できたとして、我々とは基本が違いすぎて互いに生命と認識できるかという問題はあるかもしれないが。
忙しい方のための今回の要点
・はやぶさ2から持ち帰ったサンプルについて調査したところ、含水鉱物が発見され、内部には結晶の析出も見られたことから、リュウグウにはかつて大量の水が存在したことが判明した。
・また10種類ほどのアミノ酸も検出され、生命の起源が宇宙からもたらされたという可能性が高まっている。
・また黒い有機物も検出されており、これも生命を発症する可能性がある。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・はやぶさ2って、サンプルが帰ってきた時には一般ニュースなんかでも大騒ぎでしたが、その後の話となるとこういう専門番組でないと出てこない。内容が一般人には難しいという判断なんだろうか?
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