教養ドキュメントファンクラブ

自称「教養番組評論家」、公称「謎のサラリーマン」の鷺がツッコミを混じえつつ教養番組の内容について解説。かつてのニフティでの伝説(?)のHPが10年の雌伏を経て新装開店。

このブログでの取り扱い番組のリストは以下です。

番組リスト

3/5 TBS系 世界遺産「アルプスが育む!ブドウ畑の絶景」

アルプス麓の急斜面のブドウの段々畑

 イタリアの勇壮なアルプスのドロミティの麓にもう一つ別の世界遺産がある。それがコネリアーノとヴァルドッビアーデネのプロセッコの丘(舌を噛みそうだな、実際にナレーションの杏も少しつかえている)。ここは急斜面に全長30キロに渡って続くブドウ畑である。何世紀もかけて農耕には不向きとされた土地をブドウ畑に変えたのだという。ここはイタリアが誇るスパークリングワインのプロセッコの産地である。


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 コネリアーノは小さな町で、古代ローマの頃からブドウ栽培が続けられてきた。アルプス山系の急斜面でブドウ栽培を行ったのである。畑は日当たりの良い南斜面に作られ、高低差は500メートル、一番の急斜面は72度とまさに断崖絶壁である。17世紀からこのブドウ栽培は行われてきたという。収穫は家族総出で一週間かけて手作業で行われる。急斜面の畑では平地の5倍の労力は必要だという。

 複雑な地形には規則性があり、東西30キロ続く丘がほとんど平行に並んでいる。この地形は6500万年前に浅い海だったこの地に堆積物が積もって礫岩の層と泥岩の層が交互に出来た。これが斜めに隆起した時に泥岩が浸食され、礫岩の層のみが残ったのだという。

 日当たりの良い斜面はブドウ栽培には好都合だった。また礫岩の土壌は水はけが良く、ミネラルも十分でブドウ栽培には向いていた(他の農業には不向き)のだという。南の海から吹き寄せた湿った空気をアルプスから吹き下ろす冷たい風が冷やすことで、朝には霧が発生する。

 

 

人々が守ってきたワイン造り

 他の地域の段々畑は石垣が作られているが、ここの畑は石垣が作られていないのが特徴である。これはチリオーニと呼ばれる畑のスタイルで、幅80センチほどの狭い道を作るのが急斜面に畑を作る唯一の方法だったという。礫岩の土台は強固で耐久性があるので石垣が不要だったのだという。

 この地域には小さな村が散在し、家族経営の小さなワイナリーがそれぞれ自分達の小規模な畑を維持している。畑がモザイク状になったことで開墾されなかった森は畑の湿度を保つのにも働き、良質なブドウを栽培するのに貢献したという。

 しかし第一次世界大戦の時、この地は戦場となる。壊されたワイン造りの町の一つがヴァルドッビアーデネだった。ワイン造り復活させるためにプロセッコ友愛会を設立した。ここで小さなワイナリーが腕を競ってレベルを上げ、年間生産量1億本を越える世界的スパークリングワインとなったのだという。今では畑は平らな土地にも広がり、様々な方法でブドウの栽培が行われている。

 

 

忙しい方のための今回の要点

・コネリアーノとヴァルドッビアーデネのプロセッコの丘は、アルプスの麓の急斜面に30キロに渡って作られたブドウ畑である。
・この地形は礫岩と砂岩の縞模様の地形が隆起した後、砂岩が浸食されることで出来上がった。地盤は礫岩で強固なため、ブドウ畑は石垣などを使わずに作られている。
・ヴァルドッビアーデネは第一次大戦で破壊されたが、プロセッコ友愛会を設立してワイン造りを復活、今では年間生産量1億本を越える大産地となっている。


忙しくない方のためのどうでもよい点

・段々畑ってのは各地にありますが、こういうタイプは珍しいですね。それにしてもブドウって、他の作物とはかなり異なる環境で栽培できるようです。

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