日本が誇る和紙の特徴
今回のテーマは和紙。日本の伝統工芸であるが、洋紙と比べた時の特徴は線維が長いこと。線維が短い洋紙は厚さが均一で透けにくくて表面が滑らかという特徴があり大量生産向きである。しかし和紙は丈夫であるので、最近はマスキングテープなどで人気であるという。ちなみに海外ではマスキングテープは和紙テープと呼ばれているという。
実際に和紙と洋紙に重りをぶら下げて強度テストをすると洋紙が77グラムで千切れたのに和紙は830グラムまで持ったという。また和紙は線維が長いので折ったりしても強いという特徴がある。
世界で最も薄い和紙
高知県は越前和紙、美濃和紙と並ぶ日本三大和紙の土佐和紙の産地である。仁淀川の豊富で綺麗な水がその理由だという。高知には世界一薄い土佐典具帖紙という手漉き和紙が存在する。これは150年前に開発されたもので0.02ミリの厚さ(2枚重ねティッシュの1枚の半分)で、そもそもはタイプライター用紙として開発されたという。
製法での特徴は原料のコウゾにトロロアオイの根から取り出したネリという粘液を加えることだという。ネリを加えるのはコウゾの線維を水に均一に混ぜるのに必要なのだという。そして紙をすく時は通常の和紙と違ってかなりかき回して漉く。このことによって線維の方向をバラバラにすることで厚さを均一に丈夫にするのだという。なお紙の線維は水を介して互いにくっつくので決してネリで固めているのではないという。
文化財修復に活躍する土佐典具帖紙
なおこの土佐典具帖紙は文化財の保存修理に活用されているという。薄くて丈夫であるので損傷した文書の裏当てや、場合には表から当てても薄いので響かないのだという。また木製の仏像の塗料剥落防止に表面に貼ったりするという。和紙は丈夫で耐久性にも実績がある(洋紙は年月が経つとボロボロになったりするが、和紙はそもそも残存文書自身が和紙製)ので文化財修復には重要だという。
しかもさらに海外では壁画のクリーニングにも使用されているという。システィーナ礼拝堂の壁画の洗浄作業では、直接水拭きするとムラが出るので、土佐典具帖紙を壁画に貼り付けて水を含ませて、水に浮いた汚れを和紙に取り込ませてから剥がすということを繰り返してクリーニングしたのだという。
以上、和紙についての紹介。最後のシスティーナ礼拝堂に驚いたので唐突に扱いました(笑)。正直なところ科学の里は殊更に扱う内容がないので無視しているのですが、時折今回のように面白い内容が含まれるのがこの番組の特徴です。
忙しい方のための今回の要点
・和紙は洋紙に比べると線維が長いという特徴があり、量産には向かないが、強度が高くて折り曲げに強い。
・高知では土佐典具帖紙という厚さ0.02ミリの世界で最も薄い紙が開発された。
・土佐典具帖紙はその薄さから文化財の修復などに使われており、さらには海外でシスティーナ礼拝堂の壁画の洗浄にも使用された。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・文化財の修復作業や洗浄作業って、とにかく細かい神経使う作業なので、私にとっては一番向かない作業です。本当に、いろいろな仕事に従事する人がいるもんだと感心する。