河川の浸食による大渓谷
アメリカのグランドキャニオンはコロラド川の大渓谷である。断崖の地層の古いものは20億年も前のものがある。標高2000メートルにもなるコロラド高原を切り裂く峡谷がグランドキャニオン。川や雨による浸食の結果が今日の姿となる。コロラド川はロッキー山脈中の湖から端を発して全長2300キロにもなる。
グランドキャニオンは全長445キロ、深さは1500メートルになる。地球最大規模の渓谷である。太古の地層が隆起したコロラド高原に600万年前に川が流れ込み、その浸食で大渓谷が出来て20億年分の地層が露わとなった。
断崖の地層に潜む謎
冬になるとグランドキャニオンの上部に雪が積もる。しかし渓谷の底では気候が全く異なるという。上部は氷点下5度だが、ここから谷底までジグザグの険しい道で何時間もかけて降りていくと、雪はなくなり気温も約20度になる。乾燥したサボテンが群生する風景となる。
断崖には様々な地層が見えるが、一番下の地層は20億年前~17億年前で、元々は海の底に堆積したどす黒い泥だった。この頃は酸素濃度が低くて海の底にも微生物がいる程度だった。5億年前になると生き物が爆発、死骸が堆積して出来た石灰岩の層になる。その上にある赤い岩は両生類が誕生した3億6千万前の地層になる。そのさらに上の3億年前の地層から、初期のは虫類の足跡が見つかるという大発見があった。その発見でこの手の生き物の発生が800万年早まり、定説が覆ることとなった。そして最も新しい地層は2億7千万年前の石灰岩で、この中からは貝の化石やサンゴの化石などが見つかっている。この大地は何度も海に沈んだり隆起したりを繰り返して来たのである。
グランドキャニオンの謎として、10億年分の地層が消えたということがある。17億年前の地層のすぐ上に7億年前の地層が乗っかっており、その間に10億年の空白があるのである。これのような空白は地球上の様々な地層から見つかっているが、全球凍結が影響しているという仮説がある。7億年前に地球表面は完全に凍結し、隆起していたグランドキャニオンの大地を氷河が削って、10億年分の地層を消し去ったのだという。
忙しい方のための今回の要点
・アメリカのグランドキャニオンはコロラド高原が川で浸食されて出来た地形で、深さは1500メートルもある。
・断崖の上部では雪が積もる時があるが、その時でも谷底は気温20度と別世界である。
・グランドキャニオンの一番古い地層は20億年前、そこから様々な地層を観察でき、地層の博物館でもある。
・ただし17億年前の地層のすぐ上に7億年前の地層が乗っており、その間は10億年分が失われているという謎がある。
・これは7億年前に地球が全球凍結し、その際に氷河によって地層が削られたという説が唱えられている。
忙しくない方のためのどうでもよい点
・谷底にどうやって降りるんだろうと思っていたんだが、降りるための道があるのか。まあ高所恐怖症の私としては、たとえ道があってもとても降りたくはないが。
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